「光源環境にカラーマッピング画像をもちいた自動車ボディサイド曲面評価VRシステムの開発」の版間の差分
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2023年10月10日 (火) 21:16時点における版
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- 中本葉奈 / 和歌山大学大学院 システム工学研究科
- NAKAMOTO,Hana / Graduate School of Wakayama University
- 原田利宣 / 和歌山大学 システム工学部
- HARADA,Toshinobu / Wakayama University
Keywords: Virtual Reality, Specular Reflection Position, Viewpoint Position, Surface Evaluation, Curvature Profile
- Abstract
- Industrial designers evaluate curved surfaces using the shape of images reflected from the surrounding lighting environment. Traditionally, they used identical fluorescent lamps, but assessing the impact of changes in viewpoint height on the reflections was subjective. In this study, a quantitative evaluation of changes in reflection positions due to variations in viewpoint was achieved by proposing a reflection transition diagram and developing an automotive body side surface evaluation VR system using color-mapped images. Additionally, an analysis of the relationship between curvature profiles and reflection positions was conducted using CG models of 50 car types.
目次
はじめに
工業デザイナは,周囲の光源環境が製品の曲面に映り込む複数の像の形状を手掛かりとして,曲率と捩率の変化・曲線面の折れの有無など曲面の性質評価を行う.曲面の性質について,ハイライト線[1]を用いた曲面のフェアリングの研究が多くなされている.具体的には,東らによりハイライト線を用いた,歪みのない縮閉線による曲率変化が滑らかな曲面創成手法が提案されている[2].しかし,曲面の性質についてのみ着目しているため,現実の光源環境において視点位置の高さが変化することによる映り込み位置の変化は考慮されていない.また,視点位置の高さの変化による映り込み位置の変化を定量的に模式図化した研究は未だない.そのため,デザイナは感覚的に視点位置の高さと映り込み位置を考慮し,曲面を少しずつ調整しながら探索的に意図する曲面を得ている.そこで,本研究では,視点位置の変化による映り込み位置の変化を直感的に,かつ定量的に理解可能とする表示方法の開発を目的として,映り込み遷移図の提案と光源環境にカラーマッピング画像をもちいた自動車ボディサイド曲面評価VRシステムの開発を行う.次に,曲率プロファイルと映り込み位置の関係性,また50車種のCGモデルを用いて視点位置の変化が映り込み位置に与える影響を明確にする.
映り込み遷移図と曲面評価VRシステムの開発
視点位置ごとの映り込み位置取得のためのサンプル車抽出
既存車におけるボディサイド曲面形状のデータを収集し,50車種を抽出した(表1).また,本研究はあくまで映り込み遷移図の開発を目的としてるため,実車を測定して利用するのではなく3Dモデルを使用した.
映り込み遷移図の概要と作成
映り込み遷移図とは,映り込み位置を焦点位置が高い順に直線で結んで作成した模式図である(図1). 具体的な作成手順を以下に示す(図2,図3).
- 視点位置を130cm~170cmのうちのいずれかの高さに設定
- 視点位置と自動車ボディサイド曲面上の焦点位置を結ぶRayをVR空間上で放射
- 焦点位置の間隔がおよそ1cmになるように設定し,ボディサイド上部から下部に向かってRayを曲面に衝突させる.
- Rayが衝突した曲面の反射ベクトルとVR空間上に設定した地面,または天井との交点座標を映り込み位置としてCSV形式にエクスポートする.
- 視点位置ごとに色分けを行いマッピングする.ただし,各色に関しては,特に意味はない.映り込み位置を縦軸,地面もしくは天井のどちらが映りこんでいるのかを横軸で表わす.映り込み位置は常用対数に変換しているものを用いた.
- マッピングした映り込み位置に対して,焦点位置がボディサイド上部から下部の順番になるように直線で結ぶ.
曲面評価VRシステムの概要
本研究で開発したシステムは,映り込み遷移図を実際に確認できるシステムである(図4).開発にあたりHMDにはアイトラッカーが内蔵されたViveProEye(HTC社製)を用いた(図5).開発環境として,VR空間の構築,システムの実装においてUnity(Unity Technologies社)を用いて行った.システムのフローを図6に示す. また,自動車に映り込ませるカラーマッピング画像は,地面と天井に配置する2種類を作成した.(図7).
映り込み遷移図の分類結果とVRシステムでの見え方との比較
ショルダー部分,ボディサイド部分の2つの部分に分けて映り込み遷移図の分類を行った.(図8,図9)
ボディサイド曲面形状の分析
ボディサイド曲面における断面曲線を用いた特徴分析
分類した映り込み遷移図の特徴をもとに,ボディサイド曲面の特徴分析を行う. ボディサイドの断面画像を用いたボディサイド曲面形状の特徴分析方法の流れを以下に示す(図10).なお,分析においては,河野らによって開発された曲率プロファイルの分析システム[3]を用いた.本研究では,近似曲線から曲率プロファイルを作成し,曲率半径の変化の仕方を直感的に視覚化することによる特徴分析や分類を行う.また,映り込み遷移図の特徴と照らし合わせた考察を行う.曲率プロファイルは,曲線上の各構成点において,その点から曲率円の中心を結ぶ直線分として,曲率円の半径を連続的に描画した図である(図11).
曲率プロファイルによるボディサイド曲面形状の分類
先述した手順に従って分析した結果,ショルダー部分は9タ イプ,ボディサイド部分は 8 タイプに分類できた(図12,図13). 50 車種のうち約 30% が B 凸型であり,ショルダー部分は曲線 的な車種が多いことがわかる.ボディサイド部分は 70%が c1 ~ d2 タイプであり,変曲点をもつタイプが多いことがわかる.
曲率プロファイルと映り込み遷移図の関係性の考察
ほとんどの視点位置において映り込み遷移図の変化が緩やかで曲面の映り込みの見え方も緩やかに変化する場合,凹型や直線のような比較的単純な形に近い曲面形状になる車種が多かった.これは,凹面鏡の光の反射と同様に,曲面に対して平行に近い角度で光が当たる場合は1点に集まるように反射するためと考えられる.映り込み遷移図においてより幅広い範囲が映り込む場合,凸型に近い曲面形状になる車種が多かった.これは,凸面鏡の光の反射のように平行に近い角度で入射する光は発散するように反射するためと考えられる.
まとめ
本研究では以下に示す成果が得られた.
- 映り込み位置の変化を直感的に,かつ定量的に理解可能とする表示方法の開発を目的として,映り込み遷移図の提案と,カラーマッピング画像をもちいた自動車ボディサイド曲面評価VRシステムの開発を行った.
- 50車種のCGモデルを用いて各視点位置ごとの映り込み位置の計測を行い,その性質分析を行った.その結果,視点位置の変化が映り込み位置に与える影響を明確にした.
- 50車種のCGモデルから曲率プロファイルを作成し,映り込み位置の関係性について分析を行った.その結果,曲率プロファイルが各視点位置ごとの映り込み位置に影響を与えることが推察され,意図した印象を与える曲面を得る上での1つの指標になると考えられた.
- 本研究では,映り込み位置の変化が与える曲面から受ける印象の影響についての評価が不十分であった.今後は,各視点位置での曲面から受ける印象について実験を行い,映り込み位置の変化が曲面の印象に与える影響を明らかにする必要がある.
脚注
参考文献・参考サイト
- Beier, K-P: Highlight-line Algorithm for Realtime Surface-qualityAssesment,Computer-AidedDesign,26,4,268-277,1994
- 東正毅,原田博仁:縮閉線に基づく曲率変化の滑らかな曲線,曲面の生成(第5報),精密工学会誌,Vol.66,No.4,p.556-561,2000
- 平野亮,原田利宣,井上治郎:映り込み曲線の分析に基づく不具合映り込み曲面の形成要因の解明, デザイン学研究, Vol.61, No.4, p.4_85-4_94, 2014
- 外池竜大, 青山英樹:ハイライト曲線に基づく意匠曲面の高品位化, 精密工学会学術講演会講演論文集2015S(0), pp.461-462, 2015
- 河野正之,原田利宣:図面化への適用を考慮した視覚言語を用いたラフスケッチの清書化, デザイン学研究,Vol.55,No.1,2008
- 原田利宣,中嶋信幸,栗原祐介,吉本富士市:視覚言語を用いた曲線の自動フェアリング システム,デザイン学研究,Vol.47,No.5,2001
- 原田利宣,佐藤瑛,山田朗:形成外科手術への適用を考慮した日本人の外鼻形状における 曲線の性質分析とテンプレート化,日本感性工学会論文誌,Vol.12,No.4,pp.471-480,2013