桃園・亀山地区と学生が協働して取り組むまちづくり
目次
- 「コミュニティ・レジャーとNPO組織」の教育実践研究 -
黄淑芬/銘傳大学 レジャー・レクリエーション・マネジメント学科
Huang shufen/Department of Leisure and Recreation Management/Ming Chuan University
Keywords:コミュニティ、課題解決、地域
Abstract In this study, students taking the "Community Leisure and NPO Organization" course at Ming Chuan University were the target of the teaching practice research. The PBL teaching guided the students to enter the community and discuss with the community to judge, analyze, and sort out the problems through small groups, brainstorming to be sustainable, innovative, and tolerant, and then re-examining to put forward specific proposals to give feedbacks on the small and beautiful community practices. There are three types of final results: 1. Leisure: the combination of university students' leisure practice community welfare program for the youth of Nankan, the design and practice of the program of the Military Police Festival, and the Fuk Yuen Trail; 2. Care: the community care of Datong, Leng Ding and Xin Lu; 3. Industry: the tea industry of the Feng Cha Rice Leisure Agricultural Area literature and design and packaging of the seven areas of teaching practice research results in the process of experiential teaching and learning. In the process of experiential teaching and learning, we have initially achieved the goal of PBL (Project Based Learning), which is to allow students to have a certain degree of emotional attachment to the community.
1.背景と目的
パンデミックと地域観光
パンデミックやアフターコロナにおいて台湾の国内旅行業界は、需要喚起と地域創生に着目し、地域に根差したマイクロツーリズムが促進される傾向にあった。外部との接点や行動範囲が制限され、狭い生活の範囲での生活を余儀なくされた時代において、台湾のマイクロツーリズムはその近場で安全かつ、充実した経験を楽しみたいといった旅行ニーズを吸収したと同時に、地域のNPOがマイクロツーリズムと地域文化を結びつける重要な役割を担うことを我々は認識させられた。これらを通じ、地域観光や地域でのレジャー活動はよりローカライゼーションを加速させ、洗練されたコンテンツへと変貌を遂げた。台湾の鎮、区、里といった地方自治体の各単位は、その土地が持つ独自の自然生態、農村景観、農村文化、郷土料理などを提供することで、スローな体験を求めその地を訪れる人々を魅了している。この傾向は、地方や過疎地域に関わらず都市でも見受けられ、銘伝大学桃園キャンパスが位置し、台北の衛星都市ともいえる桃園市亀山地区もその限りではない。
地域社会と学校の協働
銘伝大学観光学部レクリエーション学科3年生の選択科目では「コミュニティ・レジャーとNPO組織」という授業を展開しており、今回、その理論と実践の統合を強化するため、地域社会との協働による学生主体の反転授業をデザインすることとした。 学生の意欲を刺激し、主体意識を明確化するために、課題解決型の事前学とそれを基にした地域レクリエーションの計画、さらに更に発展させていくための応用する実践力を養うといった3つの目標を体系化、観光学科の学生が理論的基礎を実践の場で応用できる能力を養うことを最終目標に設定した。また、学校近隣の地域社会との連携を通して、学生の資源の好循環を促進し、レジャーサービス専門知識で具体的な提案を行い、小さいけれども美しい実践的なフィードバックを行い、地域を住みやすく、訪れやすい場所にするといった社会的責任の推進も同時に目指した。
2.研究の方法
授業設計の概要
本研究では、銘伝大学の「地域レジャーとNPO組織」を履修する学生38名を教育実践研究の対象とした。PBL(Project Based Learning)学習および体験型学習を採用し、4Sフレームワークを取り入れた。意義のあるテーマ設定(Significant)を行い、学生には各グループともに同一の課題(Same)を提示するとともに、学校周辺の複数のコミュニティーとトピックを選択 (Specofoc Choise)させ、討論を各グループでプロジェクトを進めた後に同時報告(Simultaneous Reporting)を行う設計とした。トピックは、学生それぞれの馴染んだ指向に合わせ、地域レジャー、地域包括ケア、地場産業の3種類のトピックを設定し、現地の下見とインタビューを組み込んだフィールドワークを実施することとした。
学生が実際に地域社会へ事前調査として、フィールドワークに出向いた後、グループディスカッションを通じて持続可能性、革新性、包括性の観点からブレインストーミングを行うことで、具体的な問題の洗い出しと解決策の検討と提案を行った。フィールドワークでは実際に、地域コミュニティのキーパーソンへのインタビューとそこから得られたフィードバックなどを通して、問題の根底や隠れた課題を見つけ出すころで、提案がより意味を持つものとなるよう設計した。指導面では、外に広くアンテナを張ることと、専門的な理論を組み合わせることを強調し、問題の明確な判断・分析・整理が出来るよう指導した。
学校周辺でのフィールドワーク
フィールドワークにおいては、学生たちはグループに分かれ、銘伝大学が位置するコミュニティを知り、お互いに触発された考察を通して、学習の動機付けを強化させた。インタビューは、付近の大同里、新路里、福源里、楓樹里の里長と役員、大同、新路、福源、嶺頂、南崁の各コミュニティ発展協会(町会に値する)と楓茶米レジャー農園発展協会の理事長と役員、憲光二村、眷村故事館、桃園神社の近くの住民を対象に実施。 また、観光資源でもある寿山巖観音寺、人材育成の場かつ地域の拠点でもある寿山小学校、寿山高校を組み合わせることで、銘伝桃園キャンパスのある亀山を多面的に理解し、コロナ後の「移動・交流・体験」の真価を改めて考えることができた。 事前調査では、フィールドワークが行われた地域社会における以下の5つの共通課題が明らかになった。
課題は以下の通り:
- 異質性:農村、都市、自然景観、社会構造の背景...。
- 自治性:地域社会の運営や幹部の意見によって、意思決定の基準が異なる。
- 経済性:政府資金への依存度が高い。
- 参加年齢:地域社会のリーダーやボランティアの年齢が総じて高い。
- 後継育成:コミュニティ内の人材育成が不十分で、若い世代の参加が少ない。
3.結果
この授業のカリキュラムは、PBL学習のレクリエーションの視点から地域社会に踏み込むことで、地域の住民やキーパーソンに深くインタビューをし、地域と学校が連動した授業を実現させた。理論的な知識と主体的に得られた知識を交えた構造的なカリキュラム設計を行うことで、学生はそれぞれの知識を組み合わせ、自らが選択した地域レジャー、地域包括ケア、地場産業のトピックの中からそれを解決するためのアイデアを提案した。一部グループは実際に実行のフレーズまで取り組んだ。
具体的な内容は以下の通り:
地域レジャー
- 大学の特徴を活かした地域貢献(南崁公民館):銘傳大学の一大行事であるチアダンス大会は多くの学生が参加し、夜遅くまで練習を繰り返す。そこからヒントを得て、自己表現を融合させた台湾のパフォーマンスグループ・優人神鼓とのコラボを導入し、専門的な技術や精神を学生が習得するとともに、地域と共に「優人南崁青少年トレーニングチーム」を組織し、練習を行うことで、地域の福祉活動と大学生の現地実習を組み合わせるユニークなアイデアを提案した。また、南崁社区の中秋節におけるイベントで成果を発表することとし、その実現に向け協力した。
- 眷村跡地の活用(憲光二村):かつて軍人家族の集合住宅であった眷村の跡地で憲兵についての行事における活動を企画。懐かしの遊びといったコンテンツの提案を行い、実際に参加した。
- 遊歩道を用いた活性化(福源地区):大学の奥に広がる山間部に位置する福源地区のウォーキングコースである福源歩道の活性化を提案。具体的に付近の生態を記した解説ボードの設置と健康的かつ交流的なイベントを実施するアイデアを提言した。
地域包括ケア
- 多世代が共有できる空間づくり(嶺頂公民館):亀山区の郊外部であり、近隣の寿山小学校、寿山高校、寿山巖観音寺を訪問し、青少年の参加を促し、農村教育と地域コミュニティへの理解を深めるためのアイデアを出した。
- 学生が参加しやすいまちづくり(大同公民館):亀山区の中心部であり、歴史ある商店が軒をつらねる商圏を形成しているこのエリアにおいては、銘伝大学の多くの学生がアパートを借りている大同地区の土日やオフタイムの様子を観察し、学生も参加しやすいコミュニティ・レクリエーションの提案を行った。
- 地域資源の発掘(新路公民館):中心部から幹線道路を隔て河川一帯に広がり閑静な住宅地が並ぶこのエリアでは、緑地・公園・商店など周辺のポテンシャルを持つ資源の調査を行い、それらを組み合わせることで隠れた魅力を伝えていく提案をした。
地場産業
- 農村の魅力向上(楓茶米レジャー農園):現地で栽培される茶葉の生産加工業者とタイアップし、コピーライティングとパッケージデザインを提案した。実際の実物を夏休みにインターンシップを行った北海道の5つのホテルにプレゼントしたところ、大変好評だった。また、小学生を対象とした茶畑について理解を深める知育プログラムを開発し、実際に桃園私立東門小学校の生徒を率いて茶畑や茶料理を見学する課外学習を実施した。
上記の3種類のグループ教育実践研究の成果は、体験型の教育・学習の過程で、当初はPBL(Project Based Learning)が設定した目標を達成した。これのみならず、生徒が卒業後にも、地域社会に根差した、志のある人材・市民となるような人材育成の観点からも効果となることを期待する。
4.考察
筆者は、学期末に、学生に学期全体のフィードバックを個人およびグループ全体で書くように求め、そのフィードバックによって、この体験型学習とPB学習の統合における学期全体の授業やグループワークのプロセスについて、学生自身が経験や提案を振り返ることができるようにした。学生のフィードバックの一部を見ると、これは、教室での授業やディスカッションだけを行うこれまでの授業とは異なり、コミュニティとの相互作用によって複数の学習成果を生み出すような授業であることがわかる。 これは、教室での授業と議論だけを伴うこれまでの授業とは異なる種類の授業であり、複数の学習成果を生み出すために地域社会と相互作用する種類の授業である。大学の社会的責任とSDGsを前提に、近隣の地域社会とより緊密な関係を築くことができると考える。
今回の教育実践研究で達成北と考えるSDGsは以下の通り:
- SDGs4「質の高い教育」:差別のない公平で質の高い教育を保障し、生涯学習を推進する:学生をグループに分けて地域を訪問し、同じグループの学生同士で学び合い、チームワークで目標達成を目指した。また、教員もインタビュー質問の設計やインタビュー内容の検討、そしてインタビュー結果の発表に関わることで、学生が「地域が最高の教室であること」「高齢者が地域の先生であること」をより深く実感することができた。 その過程で、生徒たちは、SDGs4の目標である「質の高い教育」を実現するために、「地域が最高の教室であり、年長者が地域の先生である」ということを深く実感した。
- SDGs11「包摂的、安全、強靭で持続可能な都市と居住の実現」:都市部、郊外部、農村部間の積極的な社会経済的・環境的連携を促進するため、国や地域の開発計画を強化する。
- SDGs17「複数のパートナーシップ」:持続可能性のための複数のパートナーシップの構築:応用カリキュラムは、台湾の桃園亀山と提携し、生徒のグループプレゼンテーションの成果を通じて学校と地域社会の距離を縮め、学校と地域社会の複数のパートナーシップを強化した。
5.まとめ
学習の過程で、生徒たちは問題を理解し、探求し、彼らが地域とともに考え出した提案は、土地やコミュニティーの特性を理解したうえで、多様的かつユニークなものであった。これは学生が探究活動を通じて、それぞれの地域が独自の文化、歴史、社会を持っていることを理解した証明であると言える。それとともに、地域づくりの手法も地域によってそれぞれであり、そこに学生の学びを反映させたアイデアを組み合わせることで、地域はより魅力的なものとなり、学校と周辺地域は協働によって相互発展できることを強く示した。
このカリキュラムの教育成果として以下が挙げられる:
- 社会や人間関係の回帰:3つの異なるテーマを持つ7つのコミュニティで重要な問題について一緒に考えることで、内部面ではオンライン授業で手薄になっていた「学び合える」空間を創出したとともに、外部面では、学校周辺のコミュニティに対する主体者意識と市民としての責任感を養った。
- デジタル・コミュニケーション:現地で学んだ知識と、インターネットの情報や、流行の事柄、Z世代のデバイス活用といった若者ならではのツールを組み合わせ、大学のある人文的・歴史的空間を理解できる知的なテクノロジーの使い方を身に付け、応用する。
- 地域社会への愛着形成:地域を深く理解、革新的なアイデアを吸収し、コミュニケーションやコラボレーションを行うことで、学生は卒業後、学校を母校とするだけでなく周辺地域に対する愛着も形成でき、交流人口の増加が見込まれる。
- 特性の異なるプレイヤー同士による触発的な気づき:出身地や他学科など背景の異なる学生がカリキュラムを受講し、地域社会と接していく過程で、学生や地域同士、地域と学校或いは学生と教師の双方間に気付きが産まれるとともに、それを共有できる。
その結果、近隣地域との協力を通じて人材が定着し、地域が住みやすく、訪れやすい場所になるという好循環が生まれる。 今後も、この教育実践をもとに、地域とのつながりを強め、近隣地域との連携による学生人材の好循環を促進し、地区を越えた交流の展開を図り、学生の国際的視野と実践力の育成に努めていきたい。
参考文献・参考サイト
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