コンテナ建築におけるパターンランゲージの表現の可能性に関する研究

提供: JSSD5th2023
2023年10月18日 (水) 15:02時点における譚建良 (トーク | 投稿記録)による版 (研究の方法)
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- 新建築データとArchdailyに掲載された建築を事例として -



譚建良 / 九州大学 芸術工学府 
Tan Jianliang / Kyushu University 


Keywords: Pattren Language, Container Architecture 


Abstract
In this research, through the research of pattern language, draw out the non-descriptive vocabulary related to container architecture. By researching the compositional forms, details, etc. of 95 container architecture projects collected from the famous architectural weibsite Archidaily and Shikenchiku Data, summarised the possibilities for the expression of the drawn out pattern language in container buildings. By Comparing and analysing these expression possibilities' characteristics, propose a new suitable design process for future container architecture design.


背景と目的

  コンテナ建築とはコンテナを主要な構成要素として使用した建築形式である。低コスト、環境フレンドリー、モジュール性などの利点により、コンテナ建築は世界中で、住宅、商業施設などに幅広く利用されている。日本でも、国土交通省の「コンテナを利用した建築物の取扱いについて」で、コンテナハウスは建築基準法が規定する建築物とみなされている[1]。つまり、コンテナ建築は建築のひとつのタイプとして認められている。コンテナ建築のデザインは、ベースから発想する伝統的な建築デザインプロセスとは異なり、既存のコンテナの組み合わせに基づいて、機能を満たす空間を生み出すプロセスで生み出される。このようなデザインプロセスは建築家クリストファー・アレグサンダーが提唱するパターンランゲージとの共通点が見出せる。パターンランゲージのデザインプロセスは、人々が心地よいと感じる建築や環境要素をランゲージとして使用し、それらを組み合わせて街から建築細部までのデザインを構築する。コンテナ建築とアレグザンダーのパターンランゲージの両者とも、デザイン手法を通して、モジュー単位を組み合わせ、 建築全体を構築するところが共通している。修士論文の研究は、パターンランゲージの理論を踏まえ、コンテナ建築の構成形式とパターンランゲージの表現を照合し、コンテナ建築のパターンランゲージの表現可能性を明らかにし、コンテナ建築デザインの新たなプロセスを提出することとする。そのため、修士研究の前提として、パターンランゲージとコンテナ建築の関係性を明らかにするのは重要だと考えられる。今回の学会発表はパターンランゲージとコンテナ建築の関係性を明らかにした上に、コンテナ建築のデザインに応用できるパターンランゲージ体系の構成を目的とする。

研究の方法

 まず、アレクサンダーの著書「パターンランゲージ」の概要と含まれるデザイン理念をまとめ、マクロの視点でパターンランゲージとコンテナ建築の関係性を分析する。次に、「パターンランゲージ」における253種のパターンランゲージを分析し、コンテナ建築に応用できるパターンランゲージを抽出し、新たなパターンランゲージ体系を構築する。



パターンランゲージについての調査

図2.新たなパターンランゲージ

 パターンランゲージ体系には、範囲の大きさによって地域や町、近隣、建築群体、単体建築、建築の細部の253種のパターンランゲージが含まれている。パターンランゲージごとに、従うべきルールや解決すべき問題が提出され、それに対してルールの説明や問題に対する答えが提出される。そして、敷地や人間のニーズに応じて、異なるパターンランゲージを組み合わせることで、快適な住環境を作り出すことができる。このプログラミングのような体系に核となるのは人間生活を中心としてとフレキシビリティーである。つまり、異なる環境、建築機能、ライフスタイルに直面しても、特有の単語を追加したり変更したりすることができると考えられる。そのため、コンテナ建築のデザインでは、単語の修飾語を変更したり、新しい単語を作成したりする必要がある。従って、まずパターンランゲージを抽出する際には、これらの設計ルールや問題解決方法など修飾語句を省略し、純粋にランゲージパターンを名詞単語として抽出する。抽出された単語が繰り返されたり、論理的に順序が逆転したりすることがあるため、抽出された単語は、パターンランゲージのデザインプロセスに従って、再度構築する。



 

コンテナについての調査

 コンテナの起源は、18世紀後半に始まったイギリスの初期の炭鉱地域にある[2]。1956年、アメリカン・パン・アトランティック汽船会社(Pan-Atlantic Steamship Company)の石油タンカーから改造されたIdeal X号船が58個のアルミ製のコンテナを積み、ニューヨークからヒューストンへ輸送した。[3]。これから、陸上輸送に限定されるコンテナを海上輸送と組み合わせることで、輸送コストを削減する。コンテナの国際的な輸送と普及を促進するために、国際標準化機構(ISO)によって1968年から1970年にかけてコンテナに関するISO規格が発行された[4]。コンテナには大きさや機能によって多くの種類がある。その中で最も一般的に使用されているのが、20フィート、40フィートのドライコンテナと40フィート ハイ・キューブ・コンテナである。これらも建築で最もよく使われるコンテナである。これらのコンテナが建築物と構造的に類似することが、建築素材として使われる主な理由であると考えられる。

コンテナ建築の構成形式についての調査

図3.コンテナの個数

 Archidailyは世界で最も訪問者の多い建築ウェブサイトである。新建築データは、日本有名な建築雑誌「新建築」の電子版である。したがって、これらに掲載されている建築プロジェクトは、建築家や建築評論家など専門家に認められた優れた建築プロジェクトと考えられる。コンテナ建築におけるパターンランゲージの表現に合理性かつ創造性が必要のため、上記2つのウェブサイトに掲載されたコンテナ建築プロジェクトを本研究の事例として選択した。その結果、95例のコンテナ建築プロジェクトを収集した。
 垂直構成ユニットついては、95例の研究対象のうち、34例の垂直構成ユニットを収集し、図3のようにコンテナ個数により、分類した。その中に、2と3個のコンテナで構成される垂直構成ユニットは一番よく使われているパターンである。つまり、多数ののコンテナ建築は3階以下の低層建築である。



今後の展望

 今後の研究では、建築機能によって、垂直構成ユニットのパターンランゲージや、水平方向の組み合わせによるパターンランゲージを考察し、表現の可能性を検討する。その上で、建築の開口部など細部のパターンランゲージの表現についても検討する。以上研究を踏まえ、コンテナ建築におけるパターンランゲージ表現の可能性を論理的に整理し、コンテナ建築デザインの新たなプロセスを提案する。

脚注

  1. 「コンテナを利用した建築物の取扱いについて」 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/jutakukentiku_house_tk_000058.html(2023年10月07日 閲覧)
  2. Katsikavelis Kostantinos&Bourazanis Evangelos(2017)Analysis of Inland Container Terminal pp13
  3. Mac Lecinson(2006).The Box. princeton University Press(アルク・レビンソン 村井章子(訳)(2007).コンテナ物語 日経BP社)pp.20
  4. Katsikavelis Kostantinos&Bourazanis Evangelos(2017)Analysis of Inland Container Terminal pp15


参考文献・参考サイト

  • A Pattern Language(1977)Christopher Alexander 建築模式語言(2002)Wang Tingdu&Zhou Xuhong(訳) 知識産権出版社
  • Katsikavelis Kostantinos&Bourazanis Evangelos(2017)Analysis of Inland Container Terminal
  • Mac Lecinson(2006).The Box. princeton University Press アルク・レビンソン 村井章子(訳) コンテナ物語(2007) 日経BP社
  • Lao Kaituo(2013).The application and development of the container architecture in China
  • コンテナを利用した建築物の取扱いについて https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/jutakukentiku_house_tk_000058.html(2023年10月07日 閲覧)
  • 船舶用コンテナの構造システムを用いた積層建物の動的応答評価 森 雄矢 高木次郎 遠藤俊貴 日本建築学会技術報告集 第 20 巻 第 46 号,891-894,2014 年 10 月