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鈴木貴久/情報デザイン研究II/小説 の変更点


#author("2021-12-08T00:00:09+09:00","default:member","member")
*Daydream Worlds|小説
3Dモデリングで空想世界の建築パースを表現 
#image(鈴木貴久/情報デザイン研究II/メイン_ビジュアル.jpg)
-[[鈴木貴久/情報デザイン研究II]]
-''Suzuki Takahisa''
-'''Keywords:3Dモデリング, 3DCG, 建築,小説'''
//-https://www.example.com

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**概要
***はじめに
これは情報デザイン研究Ⅱでの制作物のモデルとした小説です
↪︎[[鈴木貴久/情報デザイン研究II]]
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***登場人物
・姉:桐々原 双葉 (きりはら ふたば)
 勉強も運動もでき、男女ともに好かれる素直で真面目な女の子。テニス部に所属していて、今年から生徒会にも加入したらしい。
・弟:桐々原 柊二 (きりはら しゅうじ)
姉が優秀すぎるが故、勉強も運動もそこそこで特に取り柄もないイメージ。部活にも所属せず、捻くれたところが多いが、ちゃんと姉のことを気配ることができ、優しい一面も持つ。

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***あらすじ
 春とは、周りの環境が激しく変化する始まりの季節。そんな春の象徴のような桜が美しく咲く桵区(たらのきく)。今年から朝桵(ちょうずい)大学附属第一高校二年生に進級する桐々原双葉と柊二は、お互いに支え合い、それぞれ友達とどんな青春を過ごすのか。先輩となる入学式から始まるこの物語。部活や生徒会、勉強も全力で両立しようと真面目に頑張る双葉は……。入学式の日にお気に入りの桜の木の下で同じクラスの転校生、桜子と出会う柊二は……。
優秀と平凡、対照的な双子の物語。
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本編は、双葉と柊二が高校二年生に進級した日から物語がスタート。
今回は本編から少し遡り、進級を来週へと控えた春休みの、とある一日の双子の夕飯の一シーン。
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**本編
双葉side

*

「頂きます」
時刻は十九時、私は、いつもなら部活が終わって、今ぐらいの時間に家に帰ってきてるだろう。しかし、今日は春休みも終盤に差し掛かった月曜日。来週からは二年生に上がるため学校が始まるのを控えている頃だ。そのため、部活は午前中まで、午後は自由。今日は特に用事もなかったため、ピッタリ十九時に食事を食べ始めることができていた。
「いただきまーす!」
正面に座る弟の柊二も両手を合わせて二人で食べ始めた。
二十畳ほどの居間に、私と弟の二人で過ごすのは、いまだに慣れず、広すぎると
感じる。父親の意向でゆったりと開放的のある空間をと作られた我が家は、居間に吹き抜けも採用されていて、そこも広いと感じる原因の一つなのだろう。
「ねぇ、来週から学校だけど、課題とかちゃんと終わってるの?」
柊二は、私から話題を振らない限り、自分からはあまり話さないため、いつも通り話かける。
「あー、ま、ぼちぼちだな」
「何、その言い方。心配になるじゃん。」
気が抜けたようなその返事のせいで、さらに心配になる私をよそ目に、一人呑気に黙々と食べ進めている。私も負けじと、コロッケを一口頬張り、言葉を続けた。
「去年と同じように、学校始まったらすぐにテストがあるんだから、ちゃんと準備しなとね?」
「…へいへい」
何よその言い方と小言を言いたかったが、あまりうるさくするのも気が引けたためコロッケと一緒に飲み込み、会話を中断した。しばらく無言が続き、テレビでも付けようかとリモコンに手を伸ばすと、今度は柊二から話をした。
「…双葉はどうなんだ? 大丈夫か?」
「私はちゃんと終わってるよ。テスト勉強も自分なりにやってるし。」
「真面目だなー」
「え? なに? 柊二、まさかやってないの?」
「へ?……」
顔をあげ、正面に目をやると、何事もなかったかのような、すかした顔の柊二見て全てを察知する。
「ねぇ〜。 ちゃんとやってくれる? また私のノート写すの?」
「まあまあ、いいじゃねーか」
やはり、課題は終わっていないようで、先程の気が抜けた様子とは打って変わり、隠す様子もなくヘラヘラし始めた。
「よくなーい。柊二、言ったよね? 春休みは真面目にするって。私との約束破るつもりなの?」
「そりゃ、春休みが始まる前は、俺もそのつもりだったよ? けどさ〜、身についた習慣ってそんな簡単に消えないだろーよ」
「それを改善するように、言ったの!」
「いや〜、俺も忙しいんだよな〜」
「毎日、家でダラダラしてるのが、忙しいと?」
「お前なぁ、俺がただダラダラしてるだけかと思ったのか?」
「あら、何か社会貢献でもやってるの?」
「誰もいない日中、お前の部屋の留守を誰が守ってると思ってんだ」
「いっつも、同じ漫画ばっか読んでる人が守ってるって言える?」
「え、あ、まあ、椿が来た時とかさ、あぶねーだろ?」
「まず椿くんは、そんなことしないし、もし、何かあっても大丈夫。ちゃんと鍵かけてるから。」
「は? 鍵なんか掛けてんのか? おっ」
「それは、冗談よ。ま、誰か勝手に入ったら、わかるようにはなってるから安心して」
「……あら、そうですか…」
一通り、意味のわからない言い訳は終わったようで、最後はキョトンとした顔で目をパチパチさせ、言葉を終えた。
「はぁ〜。あと、どのくらい残ってるの?」
軽いため息をつき、課題の進行状況を確認する。
「けどあとは、数学全部と国語半分ぐらいだな」
けどの意味がよくわからないが、いつもは私のノートを全て写していたため、珍しく半分以上はできていて、驚き、感心しかけた。しかし、ハッと思いとどまり、正気に戻る。
「双葉が真面目すぎるんだよ。どうせ、いつも学年トップなんだから、そんな頑張るなって、少しは休めよ。」
「別に普通よ! 現に高校に入学した時、一番最初のテストは二位だったんだから」
「大丈夫だって、それ以降はずっとトップキープしてんじゃん」
「わからないでしょ! 油断は禁物。」
呑気なことを言うため、少し強めの口調で答える。
「…わかるよ。双葉が頑張ってんのは弟の俺が一番知ってるから。……ごちそうさま」
そうこうしてるうちに食事を終えたようで、席を立つと、食器を下げながらつぶやいた。珍しく弟から褒められたようで少し嬉しくなり、小さな声で、ぎこちない返事をする。
「…それはどうも…。って! まだ話は終わってない。来週までにちゃんと課題はできるの?」
食器を下げると、すぐにテーブルの側の階段を昇り、自分の部屋に戻ろうとしていたため、すぐ課題の話を引き戻した。
「ああ、写し間違いをしなきゃな。あと本を取りに行くだけだ。すぐ降りてくるさ。」
背中を向けて、左手を軽く上げ返事をしながら、階段を昇る。
「あ、片付けは俺がするから、食べ終わったら、食器だけ下げといてくれ」
柊二が階段を昇り、数秒間静かな居間になる。すると、ちょうど頭上の辺りから、吹き抜けの天井を挟み、声が届くと、すぐに二階の自室へ入っていった。
「わかった〜って返事も聞かずに…。…もう〜参考書でも読むんならまだしも、漫画ばっか読むんだから…。」
ぷっくりと頬を膨らませ、ボソッと呟くと、一人夕飯を再開した。
~
~
柊二side

*

「いただきまーす!」
今日のゆうめしは俺の好物のコロッケだったので、いつもより少しテンションが上がってしまった。二人で生活するには、十分なぐらいのリビングでいつも通り姉と二人でゆうめしを食べている。この家は父さんの好みでできるだけ部屋数を少なくして、一つの部屋をできるだけ広くしようということだったので、一階の半分ぐらいはキッチンとリビングで占めている。
一人黙々と食べていると、双葉がチラチラこっちを気にしているので、何か喋り出すのだろう。
「ねぇ…」
内容は、春休みの宿題はちゃんとやってるのか?テスト勉強はやってるのか?ということだった。正直、俺は会話より、おかずが冷める前に食べ進めたいというスタンスなので、先に食べて、その後、ゆっくりと話したかった。なので、一旦適当に返事する。
「……へいへい」
返事が適当すぎて、怒ったのかしばらく無言になる。双葉はどうも会話しないと落ち着かないようだった。確かに、ちょうど去年の今頃、この家に引っ越してきた時は、二人には広いなという印象が強かったが、一年も生活すると、広くてゆったりとしたこのリビングの方が父さんと一緒で俺も好みだと感じた。
最初は、父さんのその考えが災いして、俺と双葉の部屋まで、一つにしようということだったが、俺も双葉も高校生になり、年頃なので、流石にプライベートな空間は欲しいと、その提案は蹴り、それぞれの部屋は貰えることができた。
玄関も標準のサイズだと玄関ホールまで含め、大体、三畳ほどらしいが、我が家は「玄関はその家の入り口なんだから。開放的にいこう」と言う父さんの言い分で九畳近くの広さがあり、確かに随分と開放的だ。玄関ホールにはその広さを活かして、百五十センチほどのスタンドを置き、誰かの作品かは知らないが、絵画が飾ってあった。そんな広々と感じる空間が双葉には、まだ慣れないようで、しばらくすると、テレビをつけようとリモコンに手を伸ばしていた。ちょうど俺は、半分ぐらい食べたので、そろそろ会話をしよう思い、話題を振った。
「最近、双葉はどうなんだ? 大丈夫か?」
「私はちゃんと終わってるよ。テスト勉強も自分なりにやってるし。」
最近、双葉は生徒会にも加入して忙しくなり、部活、勉強といろんな活動を掛け持ちしているので、全体的に疲れてないか心配して聞いたつもりだったが、さっきの会話の続きと思ったのだろう、宿題やテストについて答えた。
「真面目だなー」
「え? なに? 柊二、まさかやってないの?」
ちゃんと両立できていることに流石だと感じ反応したが、どうやら裏目に出たようだ。予想もしなかった、鋭い指摘に思わず反応が鈍る。
「へ?……」
「ねぇ〜。 ちゃんとやってくれる?……」
慌てて、平常心を保とうと何もなかったかのようにしていたが、流石は血を分けた双子だ。全て見透かされた。その後も詰将棋のように、ことごとく詰められ、逃げ道がなくなったので、早々にギブアップした。双葉もめんどくさくなったのか、頭を抱え軽くため息をつくと、あとどれくらい残ってるのかと、聞いてきた。しかし、今回はいつもダル絡みしてくる友達の椿 友一郎が、毎日のように俺の部屋に押し掛け、宿題を手伝わされていたので、夏休みに比べると、数学と国語以外の科目は意外と処理できていた。素直に宿題の処理状況を伝えると、急に黙って何か考えているようだったので、続けて話した。
「双葉が真面目すぎるんだよ。どうせ、いつも学年トップなんだから、そんな頑張るなって、少しは休めよ。」
真面目すぎる双葉が、あまり無理しすぎて、体調を崩さないか心配だったので、軽く休むことも大事だと伝えていると、少し怒ったかのように急に激しい口調になり、びっくりした。
「わからないでしょ! 油断は禁物。」
双葉のことを思い、ただ心配したつもりだったのだが、言い方が癇に障ったのか、一旦そっとしようと、最後の一口をたいらげて、食器を下げる。すぐにいつも読んでいる本を部屋に取りに行こうと、リビングの真ん中にある階段へ向かった。
「って! まだ話は終わってない。来週までにちゃんと課題はできるの?」
折角、話の論点がズレ、逃げ切れると思っていたのに、すぐに宿題の話に戻された。高校一年で、一番力を入れたことはなんだと問われると、「課題を写すことです。」と言えるぐらい、書き写すという作業には定評があったので、その能力を発揮できれば、課題は終わりますよと断言する。
「ああ、写し間違いをしなきゃな。あと本を取りに行くだけだ。すぐ降りてくるさ。」
さらに、本を読む暇があるなら、宿題をしろと言われそうだったので、目を合わせないように急いで階段を上がった。
「ふう、あぶね…」
上りきった所で、一息つき、家の東側、キッチンの丁度上ぐらいに位置する自分の部屋へ足を進める。階段からは一番、距離がある部屋だが、吹き抜けのリビングを見下ろすことができる俺の部屋へと続く廊下も気に入っている所だ。家事は基本的に家にいる俺が引き受けていたので、その吹き抜けを利用して、丁度、真下にいるであろう双葉に片付けは自分が引き受けると伝え、すぐに部屋に入った。ドアを開くと、六畳ほどの空間に、ベッドと机、本棚が収まっている。中はある程度、綺麗に整頓されていて、ほぼ、引きこもり状態の男子高校生が籠っているとは思えないレベルではあった。すぐに机の上に置かれた一冊の本を手に取ると、微妙にサイズの合わないカバーが、剥がれ、床に落ちた。適当に選んで付けた、その日本の漫画作品のカバーはもうボロボロで端が破れそうだった。しおりを挟んでいた、ページが落とした衝撃で、床で開き、横書きでページいっぱいに羅列された英語の文章が露わになる。
「あ〜、もうボロボロだな。なんか他にねーかなー。う〜ん。まー、やっとここまで読み進めたからなー。あともう少しだし、さっさと読み終えるか」
カバーを変えようかと一瞬考えたが、めんどくさかったので、すぐに、本を拾い上げ、しおりを挟み直した。「Daydream Worlds ~3D mystery~」と書かれた表紙を隠すかのように、もう一度、同じボロボロのカバーを付け直し、そのまま、リビングへ降りていった。




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