「危険表示のデザイン」の版間の差分
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2019年11月8日 (金) 14:48時点における版
- 小学校教育における化学薬品瓶のラベル表記を対象として -
- 奥田健士郎 / 九州大学大学院芸術工学府
- OkudaKenshirou / Kyushu University
- Keywords: Product Design, Visual Design ← キーワード(斜体)
- Abstract
- In today‘s school education, instruction for safety and symbols for dangerous indication became to be important. Nevertheless in the class for science experiment of the elementary school, there are no symbols for dangerous indication attached to the container treating by students. Papers ask students questions how well they understand labels what teachers have used. After symbols that is difficult to understand and read are remade from this result, papers again ask students questions how well they read remade symbols.
目的と背景
現在、教育の場において、安全についての認識が高まり、安全教育と危険表示の明示が重視されるようになっているが、環境省の調査によれば、薬品の危険表示について正しく認識されない問題があることが分かっている [1]。この問題をデザインの観点から検討した場合、学校教育の環境において用いられる薬品の危険表示が分かりにくく、教育に適していない問題として捉えることができる。小学校で指導要領に従って理科実験を行った場合、児童が扱う薬品の容器には名称しか記載されていないため、危険性を読み取ることができない可能性がある。そこで、本研究は、小学生向けの危険表示を対象に理解度調査を行い、危険表示の分かりやすさを検討し、デザインの提案を行う。それによって小学生のための安全教育に寄与することが本研究の目的である。
研究の方法
まず現状の課題を把握するために、化学薬品のラベル表記についての文献を収集し、さらに各都道府県の教育委員会が記している指導要領を調査し、小学校の理科の指導教員から聞き取りをおこなった。次に、実際に小学生の意見を聞くために小学校でアンケート調査を行った。調査対象は小学5年生31人、アンケートの制限時間は5分間で、問題数は8問であり、それぞれ7つの選択肢のなかから回答する方式であった。 正解の数はそれぞれの問題に記載していた。
理解度アンケートの結果と考察
現在使用されている化学薬品瓶のピクトグラムの理解度についてのアンケートの結果を、表1に示す。カイ二乗法で解析した結果として、オレンジ色の濃い部分は有意性が強く、薄い部分は有意性があることを示す。また、色の付いていない数字だけの枠は有意性がないことを示す。中の数字は回答率を表し、枠左の丸は正解を示す。ここで、回答率とは、単一回答の場合と複数回答の場合ともに、1つの選択肢につく回答数を合計の人数に対しての割合となる。ここでは、左から4つのマークと右から1つのマークは選択肢を3つ選び、それ以外は選択肢を1つ選ぶものとしている。また、ここに数字を表示している枠は回答率が上位のものである。
この解析結果の表から、《どくろ》のシンボルは正解であり「目に入れてはいけない」よりも「環境に悪い影響を与える」のほうが、多く回答されていることが分かる。この結果は、負傷ではなく、死を意味するような骸骨を使った過剰な表現や抽象的な表現では、危険性の対象が判断しづらくなるためだと考えられる。 同様に、その右隣の《刺激性》のシンボルも「目に入れてはいけない」の回答率が低くく、直接目が図示されないと、意図する意味を汲み取ることが困難となっている。また、右端の《ガスボンベ》シンボルについては、正解が少なく、有意でなかった。おそらく、ボンベの表現に特徴が乏しいため、ボンベとして特定するのが難しかったと推定される。
識別アンケートの制作
アンケートの解析結果を踏まえて、ピクトグラムを制作した。対象としては、小学生が理解すべき指示項目に対して分かりにくいものや回答率が低いものを中心に選定した。手や頭、水滴、火等をシルエット、薬品を四角形として表現し組み合わせた。また、「目に入れてはいけない」「口に入れてはいけない」、「吸い込んではいけない」、「手で触ってはいけない」、「顔を近づけていけない」の指示について、従来のピクトグラムでは、特定した指示を出せるものがなかったため、ピクトグラムを分けて制作した。また、従来のピクトグラムには禁止を表す表現が用いられていなかった。そこでそれぞれの指示内容に対して、シルエットを映し出す方向やオブジェクトの配置を変えながら禁止を表すエヌ形態を組み合わせて制作した。また、「火を近づけてはいけない」の回答率が半分だったため、より回答率を向上させるために、「近づける」という意味を持たせるために、手のシルエットを加えたピクトグラムも制作した。「環境に悪い影響を与える」については回答率が高かったが、小さくて見辛いと指摘もあったため、オブジェクトの数を調整した。
識別アンケートの結果と考察
小学校 年生 人を対象に5分間のアンケートを行った。
まとめ
理解度に関するアンケート結果から以下のことが分かった。 過度な表現だと指示内容が抽象的になり、伝わりにくい。また、直接図示されていない意味、内包された意味は伝わりにくい。シンボルに特徴が少ないものだと、何の図像が分からなくなり、伝わらない。そのため、シンボルは、特定の形を持たせる必要がある。
脚注
- ↑ 環境省環境安全課, 2004, 化学品の有害性表示等に関するアンケート調査の結果 pp.17-21
参考文献・参考サイト
- 津幡 道夫(20XX) 新版 たのしい理科 5年 大日本図書
- 津幡 道夫(19xx) 新版 たのしい理科 6年 大日本図書
- 津幡 道夫(1955) 新版 たのしい理科 5年 教師用指導書 大日本図書
- 津幡 道夫(1955) 新版 たのしい理科 6年 教師用指導書 大日本図書
- 環境省 http://www.env.go.jp/chemi/ghs/ (2019年11月8日 閲覧)