使用プロセスから見たシルバーカーの検証と提案
- 身体的支援機能・知的支援機能・精神的支援機能・技術的支援機能の観点から -
- 濱田 哲史 / 九州大学 芸術工学部
- 蒋 愷文 / 九州大学 芸術工学部
- 森山 真歩 / 九州大学 芸術工学部
Keywords: Walking trolleys, User Journey, Elderly People, Product Design, Industrial Design
目次
背景と目的
サービスは、レシーバー(サービスの需要者)の「状態変化」を引き起こすことであり、コンテンツ(内容)およびチャネル(方法)はその実現手段といえる[1]。また、実現手段の方向性として、身体的支援・知的支援・精神的支援・技術的支援の4つの支援機能に分けて考えることができる[2]。そこで本研究では、4つの支援機能の観点から既存の製品が提供する機能のありようについて整理することで課題を発見し、「新たな価値を持つ製品やサービス」を提案することを目的とする。
なお、本発表は、九州大学芸術工学工業設計学科4年前期に開設される「工業設計プロジェクト研究」のプロセスおよび成果の一端を報告するものである。
現状の把握とテーマの選定
現状の把握
身の回りの製品やサービスを収集し、4種類の支援機能の観点から現状の整理を行った。
分類の中から、本研究では精神的支援機能に着目し、ロック機構について取り上げる。ロック機構においては様々な製品に使用されており、その歴史も長い。しかし、同一の支援機能の強化の可能性を検討することで既存製品の改善や新たな付加価値を持つものが提案できるのではないかと思い、着目した。
テーマの選定
次に、既存のロック機構を有する製品について収集し、使用の目的別に分類を行った。この分類から、固定をするためにロック機構を使用している製品において、ロックすること自体に重きを置いていて、ロック機構の持つ本来の「安心」という精神的支援機能に強化が必要であると考えた。そこでそれがより顕著に現れている「シルバーカー 」について取り上げ、検討を行った。
また、シルバーカーについて現状把握を行った中での先行調査[3]によると、2004年度以降2008年度までの5年間に歩行補助車に関する事故事例は30件寄せられており、その中の27件が転倒し怪我をした事故事例であった。
アイデアの検討と提案
アイデアの検討
コンパクトタイプ(折り畳み式)シルバーカーの使用シーンとそのシーンごとに起こりうる問題点について検討した。最もよく見られるシルバーカーの展開、坂道等の傾斜での使用、停止して着座する使用の3つのシーンに着目すると、主な事故原因がタイヤのロックがされてるかどうかの確認の分かりにくさであることが共通している。そこで、視覚的に確認しやすいロック機構と物理的に必然的にロックされる機構の2つの視点でアイデアを展開してみた。
アイデア展開
提案1
座る時の力と方向が違う斜めの力をかけると駐車ブレーキが解除される仕組み。参考商品画像:図4[4]
提案2
視覚上認識されやすい杖を抜くと駐車ブレーキがかかる仕組み。参考商品画像:図5[5]
提案3
ハンドルを前進方向に倒すとタイヤがロックされ、同時に車体が椅子に近い形になる仕組み。
最終提案
脚注
- ↑ 下村芳樹,原辰徳,渡辺健太郎,坂尾知彦,新井民夫,富山哲男:サービス工学の提案(第 1 報,サービス工学のためのサービスのモデル化技法),日本機械学會論文集C編,Vol.71,No.702,pp.669-676, 2005
- ↑ 亀岡秋男:サービス・製品・技術イノベーションを融合・創出・俯瞰する統合型戦略ロードマッピング,オペレーション・リサーチ経営の科学,Vol.51,No.9,pp.573-578,2006
- ↑ 全老健共済会 第76回 歩行補助車(シルバーカー)の安全性
- ↑ パインウォーカー PS-169
- ↑ パインウォーカー PS-169
プレゼンテーション動画