福岡市の屋台の研究

提供: JSSD5th2020
Jump to navigation Jump to search


松枝 勇希 / 近畿大学大学院 産業理工学研究科 
金子 哲大/ 近畿大学 産業理工学部 


Keywords: Product Design, Visual Design,Design


背景・目的

 福岡市は屋台が市民や地域、観光客によって親しまれ福岡のまちと共存する存在となるために平成25年に「福岡市屋台基本条例」を定めた。
『福岡市屋台基本条例』の概略を以下に記載する。
・屋台の大きさは間口3m ×奥行2.5m 以下

・調理道具やその他の必要な道具などの機材を置くことのできる範囲は5m × 3m まで
・屋台を設置した後の歩道の有効幅員が2m 以上
屋台の課題を以下に記載する。
・屋台一台の費用は約250 ~400 万円以上
・重量は200 ~300kg
・屋台の設置の際、曳屋と呼ばれる業者が運ぶところもあるが、ほとんどの新規参入の屋台は自分で運ぶ。また、そのときに自動車でけん引しているために交通渋滞の要因となっている。
・屋台を製作する人や屋台を運ぶ曳家の高齢化
以上の課題に対して軽量でかつ、ローコストで始めることができる屋台のデザインを考える。


求められる屋台のデザイン

屋台を製作する大工職の減少により、現在製作を請け負うのはある職人のご夫婦のみであり、現在開店しているほとんどの屋台はのご夫婦の手によるものである。そのためか、屋台には図1のような基本となるパターンが存在する。しかし、店主やお客さんに実施したインタビュー調査では、屋台の独自性を求めている回答が多かった。福岡の屋台は通りに対して密集し、屋台が連続しているように見える。しかし屋台一つ一つの明確な差別化がされているわけではない。屋台一軒一軒が個性を持ちつつも全体として見たときも連続性を感じるデザインが求められている。


屋台の形状による連続性

 屋台が連続して見えることの一つに屋根が与える影響が大きいと考える。調査した全ての屋台に屋根がある。屋台の屋根は、屋根を折り畳んだり、取り付けたり、引き出したりするパターンがあることが分かっている。この屋台の屋根により店主やお客さんが一体感が生まれている(図1)。屋根があることにより、他のお客さんや店主との間に同じ時間の流れを共有でき、歩道というパブリックな場所で同居できる空間ができている。この屋根が「同居できる空間」と外部に示すツールとして上部に境界を示している。

図1.屋根による一体感