現代中国におけるお茶パッケージデザインのバランスに関する研究

提供: JSSD5th2021
Jump to navigation Jump to search

- Study on the Balance of Tea Package Design in Modern China -


王鋭奇/ 岡山大学 ヘルスシステム統合科学研究科
RuiQi Wang/OKAYAMA UNIVERSITY Graduate school Interdisciplinary Science and Engineering in Health Systems
楊 家家 /岡山大学 ヘルスシステム統合科学研究科
Jiajia Yang/ OKAYAMA UNIVERSITY Graduate school Interdisciplinary Science and Engineering in Health Systems
江島 義道 /岡山大学 ヘルスシステム統合科学研究科
Yosimichi Ejima/ OKAYAMA UNIVERSITY Graduate school Interdisciplinary Science and Engineering in Health Systems
高橋 智 /岡山大学 ヘルスシステム統合科学研究科
Satoshi Takahashi / OKAYAMA UNIVERSITY Graduate school Interdisciplinary Science and Engineering in Health Systems
呉 景龍 /岡山大学 ヘルスシステム統合科学研究科
Jinglong Wu / OKAYAMA UNIVERSITY Graduate school Interdisciplinary Science and Engineering in Health Systems

Keywords: Tea Package Design, Graphic Design, Balance


Abstract
In graphic design, the Balance of Design is a very important design concept. In this paper, we mainly focus on the packaging of modern Chinese Tea to investigate the balance of gravity and symmetry. The gravity of the image is studied through the relationship between the center of gravity of different graphics and text with different aspect ratios, to prove the balance of tea packaging design. Symmetry is determined by the number of symmetry axes of different graphics to determine whether symmetry has an impact on the balance of tea packaging design.


背景と目的

 バランスはグラフィックデザインの重要な要素であり、大きく画面重心と対称性の二つの側面から考察することができる。一つ目の画面重心は、グラフィックデザインの中には主に図形と文字という両要素の重心位置の解析を通じてパッケージのバランスへの影響を調査できる。二つ目の対称性は、対称軸の数などの側面からパッケージのバランスへの影響を検討できる。
 画面のバランスに関する先行研究では、まず画面の審美観点から解析項目と解析方法を提案して、画面の縦横比を定数とした矩形のサイズを解析対象としてバランスを解析した「1」。さらに、画面の縦横比を定数とした矩形のサイズを変えた解析対象について画面のバランスを検討した「2」。一方、パッケージデザインに関する従来研究では、帯紙のプロポーションの好みに関する研究報告があり「3」、食品パッケージデザインにおける意味化機能に着目した表現手法の日中比較研究事例もあった「4」。
 お茶パッケージデザインの従来研究では、デザインのオリジナリティに関する論点と方法が議論され「5」、カルチャー要素をデザインへの応用についても研究され「6」、和文書体フォントがペットボトルお茶飲料の美的印象に与える影響も検討された「7」。さらに、社会記号論的と視覚解析的アプローチを用いたお茶パッケージデザインに関する研究が報告されている「8」。
 上述のように、お茶パッケージデザインに関する研究はいろいろな側面から進行されている。しかし、お茶パッケージデザインの縦横比の変化がバランスへの影響はまだ明らかにされていない点が多く残されている。そこで、本研究では現代中国における販売されている100点のお茶パッケージデザインを対象として、異なる縦横比のパッケージデザインの図形と文字の重心および対称性について解析し、お茶パッケージデザインのバランスを定量的に検討することを目的とする。



研究の方法

解析対象の選択と分類

図1 異なる縦横比のお茶パッケージの実例 (a) 縦横比1:3 (b) 縦横比1:1 (c) 縦横比4:3 (d) 縦横比2:1 (c) 縦横比3:4

 解析対象は1970年代―2000年代のお茶パッケージのデータは中国国家知識財産局公式サイトにより中国市場で過去に存在または販売中のお茶パッケージ100点を引用した。なお、一部のお茶パッケージデザインにおいては商品情報を守るため、黒線で文字を隠している。さらに、お茶パッケージデザイン実例の縦横比によって、1:1(11点)、1:3(13点)、2:1(25点)、3:4(30点)と4:3(21点)の5つのグループに分類した。それらの代表例は図1に示されている。



画面重心の解析手順

 お茶パッケージデザイン画面の図形または文字の重心の解析は、従来研究「9」「10」の計算方法を参考して、デザイン画面の中に図形または文字を占める面積をそれぞれ重み付けで重心を計算した。具体的な計算手順は下記のとおりである。

1つのお茶パッケージデザインの重心解析手順

図2 本研究に運用した式

1.お茶パッケージデザイン画面の実サイズに基づいて横縦をXY軸として、平面座標系をとり、図形または文字を占める面積を範囲座標で表記する。

2. 図形または文字の各要素の面積と総面積の割合(pi)を計算する。
  式1がsiが各要素の面積である。stが各要素の総面積である。記号nが要素の数である。

3.分散分析法(式2)で、各要素の重心 (xi,yi)を計算する.
  式2の中に、xiが各要素の横座標であり、yiが各要素の縦座標である。記号nが要素の数である。

4.各要素の重心により、お茶パッケージデザイン画面の図形と文字の重心を計算する。ここで、(式3)で計算した割合(pi)を代入し、式3を用いて計算すると重み付け要素の重心(Gx, Gy)を得る.
  式3に、xiが各要素におけるキーポイントの横座標である。yiが各要素におけるキーポイントの縦座標である。記号nが要素の数である。



異なる縦横比のグループ別のお茶パッケージデザインの重心範囲の解析手順

 お茶パッケージデザインの縦横比のグループ別に重心の位置の平均値(xとyで表示する)を下記の式4を用いて計算し、標準誤差(SDXとSDYで表示する)(式5)を求める。平均値を範囲の中心点(x,y)として、2倍した標準誤差をx軸の半径(rx)とy軸の半径(ry)にすると、異なる縦横比のグループごとの重心の範囲を楕円形に描くことができる。

 式5において、xiが各パッケージデザインの重心点の横座標であり、yiが各パッケージデザインの重心点の縦座標である。記号nがパッケージデザインの数である。

対称性解析 

図3 異なる縦横比のお茶のパッケージデザインの図形の対称軸の実例

1.異なる縦横比のグループ別に各お茶パッケージデザインの画面に2.2節で定義されている座標を用いて図形を表し、図形の対称軸を標記する。対称軸が縦中心軸、横中心軸、斜軸、他(対称軸不明と対称性なしを含む)の4つに分類する。それらの代表例を図2に示す。

2.異なる縦横比のグループ別に図形の対称軸の数を求める。



結果

 図形の重心解析の結果

図4 異なる縦横比のグループ別のお茶パッケージデザイン重心範囲解析の結果
図5 異なる縦横比のグループ別のお茶パッケージデザイン重心範囲解析の結果のまとめ
表1 異なる縦横比のグループ別のお茶パッケージデザイン重心範囲の縦X軸と横Y軸の比

1.お茶パッケージデザインの重心解析結果
 お茶のパッケージデザインの重心の解析結果を図4の赤点で示す。以上の結果により、ほとんどのパッケージの重心が画面の中心に集中していた。


2.異なる縦横比のグループ別のお茶パッケージデザイン重心範囲の中心点の解析結果
 異なる縦横比のグループ別のお茶パッケージデザイン重心範囲の中心点の解析結果を図4の青い四角形で示す。どの縦横比においてもお茶パッケージの重心の範囲の中心点と画面の中心点がほぼ同じであった。特に4:3の比率のお茶パッケージにおいては重心範囲の中心点と画面中心点がほぼ一致しており、図4(3)のようになった。


3.異なる縦横比のグループ別のお茶パッケージデザイン重心範囲の解析結果
 縦横比の分類別におけるお茶パッケージデザインの図形の重心範囲の解析結果を図4の緑色の楕円形で示す。これより、平均値と2倍の標準誤差で描いた楕円形の長軸がお茶パッケージの長軸に従っていることがわかる。そして、表1からx軸とy軸の比が1より近いの場合は円形になっていくので、3:4の比率のお茶パッケージの重心範囲が一番円形に近いことがわかる。
 全体的な解析結果を見ると、図5を示すように、図形の重心範囲がほぼ画面の中心点を囲んでいることがわかる。



 文字の重心解析の結果

図6 異なる縦横比のパッケージの文字の重心解析の結果
図7 異なる縦横比のお茶パッケージの文字の重心範囲の縦X軸と横Y軸の比
表2 異なる縦横比のパッケージの文字の重心解析の結果

1.お茶のパッケージデザインの文字重心の解析結果
 お茶のパッケージデザインの文字重心の解析結果を図6の赤点で示す。以上の結果により、ほとんどのパッケージの重心が画面の中心に集中していることがわかる。


2.異なる縦横比のグループ別のお茶パッケージデザインの文字の重心範囲の解析結果
 異なる縦横比のグループ別のお茶パッケージデザインの文字の重心範囲の中心点の解析結果を図6に青い四角形で示す。お茶パッケージデザインにおける文字の重心範囲と図形の重心範囲と比べると似ている結果が得られたが、1:1の比率においては文字の重心範囲と図形の重心範囲が著しく違うことが図6(1)と図4(1)からわかる。


3.異なる縦横比のグループ別のお茶パッケージデザインの文字の重心範囲の解析結果
 縦横比のグループ別におけるお茶パッケージデザインの文字の重心範囲の解析結果を図6の緑色の楕円形で示す。これより、平均値と2倍の標準誤差で描いた楕円形の長軸が、図形の解析のときと同様に、お茶パッケージの長軸に従っていることがわかる。そして表2から、x軸とy軸の比から見ると一番円形に近づいたのは、4:3の比率のときである。
 全体的な解析結果を見ると、図7を示すように、図形の解析のときと同様に、文字の重心範囲がほぼ画面の中心点を囲んでいることがわかる。



 図形の重心範囲と文字の重心範囲の解析結果の比較

図8 図形の重心範囲と文字の重心範囲の解析結果の比較

 3.1.1と3.1.2は図形と文字の重心範囲を別に論じた。ここで、両方の結果を踏まえて、比較する。異なる縦横比のグループ別における図形の重心と文字の重心を示して考えてみる。例として図8(2)の赤い三角形でそれぞれの重心を示したお茶パッケージデザインでは、単に図形と文字だけ見るとバランスが取れてないように見えるが、重心を含めてお茶パッケージデザインを見るとバランスが取れているように見える。比較研究の結果、一部のお茶パッケージデザインでは図形と文字が別々になっており、バランスがないように見えるが、図形と文字の重心を統合的に考えるとバランスが取れていることが図7からわかる。



 対称性解析の結果

表3  異なる縦横比のグループ別のお茶パッケージの図形の対称軸の数

 対称性の解析結果は表3に示されているように、縦横比1:1、縦横比2:1、縦横比4:3のとき縦中心軸の数が一番多くなることがわかる。縦横比が3:4のとき、対称性が不明のパッケージが一番多いが、その中で縦中心軸の数が二番目に多いという結果になった。以上から、縦中心軸を対称軸としたお茶パッケージの図形が多いことがわかる。



考察

重心の解析結果の考察

 パッケージの縦と横の比率に関わらず、ほとんどのパッケージの重心が画面の中心に集中していた。平均値と2倍の標準誤差で描いた楕円形の長軸が、パッケージの長軸に従っていることがわかる。これより、中国のデザイナーはパッケージの中心を囲むようなデザインにしていると考えられる。一方、異なる縦横比のグループ間の図形と文字の重心範囲は縦横比に依存し、図形と文字の間の重心特性にも差異があり、なぜこのような特徴がみられるのは今後、視認性、審美性などの観点から検討する必要があると思われる。

対称性の解析結果の考察

 対称性の解析結果から、多くのパッケージが縦中心軸を対称軸として対称性を作ることがわかる。これは、人間の脳は左右に分布しているので、人がものを見るとき右目が見たものを左脳に反応し、左目が見たものを右脳に反応するため、デザイナーがある程度、脳の反応に対する適切なデザインをしているからと考えられる。

まとめ

 研究は図形と文字の重心、対称性という二つの要素から、現代中国におけるお茶パッケージデザインのバランスを考察した。今度は本研究の手法で、ほかの国におけるお茶パッケージデザインのバランスが中国と同じかどうかに関して研究を進めていく。

参考文献

1. David Chek Ling Ngo,“Evaluating Interface Esthetics”, Knowledge and Information Systems,Vol.4,2002,pp.46-79
2. David Chek Ling Ngo,“Aesthetic Measures for Assessing Graphic Screens”, Journal of Information Science and Engineering,Vol.16,2000,pp.97-116
3. 满柏, “画面均衡の原理と数値化方法の関する研究”,Information Processing Society of Japan,Vol.2,2018,pp.29-30
4. 桑原京子, “文字図形の重心とひろがり量との計算法”, 日本情報処理,Vol.13 No.5,1972,pp.276-281
5. 孔 鎮烈, “パッケージデザインにおける帯紙のプロポーションの好みに関する研究”, Bulletin of JSSD,Vol.66 No3,2020,pp.1-10
6. 王 彦丹, “食品パッケージデザインにおける意味化機能に着目した表現手法の日中比較”, Bulletin of JSSD ,2020,pp.132-133
7. Yi Chen, “平面设计图案在茶叶包装设计中的创新”, China Academic Journal Electronic Publishing House,Vol.12,2021,pp.174-175(本文は中国語)
8. Song Gao, “地域文化元素在茶叶包装设计中的价值体现”, China Academic Journal Electronic Publishing House,Vol.11,2020,pp.111(本文は中国語)
9. 向井志緒子, “和文書体フォントがペットボトルお茶飲料の美的印象に与える影響”, 日本認知心第13回大会,Poster 2-25,2015, pp.156
10. Bin Hu, “A Social Semiotic Approach and a Visual Analysis Approach for Chinese Traditional Visual Language :A Case of Tea Packaging Design”, Theory and Practice in Language Studies Vol.9,No.2,2019,pp.168-177