子ども自身が身近だと感じる居場所の研究

提供: JSSD5th2021
2021年10月23日 (土) 04:37時点における富永由佳 (トーク | 投稿記録)による版 (フィールド調査)
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富永由佳 / 九州大学大学院 芸術工学府 ← 氏名 / 所属(筆頭者)
Yuka TOMINAGA / Kyushu University ← 氏名 / 所属 の英語表記(筆頭者)
◯◯◯◯ / ◯◯大学 ◯◯学部 ← 氏名 / 所属(共同研究者)
◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯ / ◯◯◯◯◯◯ University ← 氏名 / 所属 の英語表記(共同研究者)

Keywords: Product Design, Visual Design ← キーワード(斜体)


Abstract
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背景と目的

 近年、少子化や核家族化、都市化といった社会構造の変化により、子どもを取り巻く環境が大きく変化している。地域社会においては、地縁的な繋がりの弱まりや人間関係の希薄化が進み、それに伴い地域の教育力が低下している。
 子ども時代の様々な年齢層の人々との触れ合いは、異なる価値観や考え方との出会いであり、それらのやりとりの中で、他者への説明、自分と他人との比較、感情のコントロールなどの社会的なスキルの向上に繋がっている。しかし、このような機会が少なくなた現代の子ども達に対し、人間関係を構築する力や、社会性の減少といった問題が指摘されるようになった。これらのことから、子ども達と地域の大人や異世代の子ども等との、多様な交流の場が望まれるようになり、地域コミュニティの役割が見直され始めた。
 子どもの居場所に関しても子ども達が地域の大人、異世代の子どもと触れ合う機会を提供できる環境が求められるようになった。そして、そのような場の提供が近年、増加傾向にある。
 一方で、現代の子ども達は、興味や関心、世代の違いを超えてコミュニケーションをとることを苦手と感じ、相互に理解する能力が低下している[1]との指摘がある。また、インターネットを通じたコミュニケーションが子ども達に普及しており、子どもが他者と直接的な関わりを持つ機会が減少している。そのため、子どもの中には、子どものために作られた、地域に住む多世代の人々との交流の機会を併せ持つ居場所に対して、とっつきにくさや、抵抗感を抱いている子もいるのではないかと考える。しかし、多世代交流できたり、思いを受け止めてくれるような大人がいる地域の場が、強制的ではなく、自然に子ども達の生活の一つの場として選択され活用されることが、子どにとって良い影響が与えられることも事実である。
 そこで、本研究では、地域に住む多世代の人々との交流の機会を併せ持つ子どもの居場所に焦点を当てる。そして、このような居場所に来る子どもの特性、子ども達がどのようにしてこのような居場所の存在を知り、訪れ、居場所感を高めていくのかについて考察すること、それによって今後の子どもの居場所づくりにおいて、子どもにとって身近な存在となるような場にするための条件を得ることを目的とする。



研究方法

 まず、文献等により、既往の研究を整理し、子どもの居場所に関する考え方の変遷や子どもの居場所としてどんな居場所が必要とされているのかを調査し、整理を行う。次に、実際に子どもの居場所として場所の提供を行っているものにどのようなものがあるかをWebサイト等により調査し、実際に運営されている子どもの居場所事例を整理し、その特徴や傾向等について分析する。また、子ども達に活用されている居場所事例のフィールド調査を行い、居場所での子ども達の過ごし方等を観察すると同時に、ユーザーである子ども達と居場所運営者との関係、居場所運営者の考えや居場所の周知方法、運営面での課題等についてヒアリング調査を行う。以上の調査から得られる情報をもとに分析を行い、子ども達にとって身近と感じられる居場所の条件を抽出する。
 



研究対象

図1.子どもの発達段階
図2.子どもの発達段階ごとの特徴と課題
図3.対象とする子どもの居場所の条件

 人の生涯をいくつかの段階に分け、その段階の発達の特徴を整理したものを「発達段階」という。その中で、アメリカの社会学者であるハヴィガースト(Havighurst)とアメリカの発達心理学者のエリクソン(Erikson)は、生涯発達という視点を含めた発達理論を展開した。ハヴィガーストとエリクソン、文部科学省それぞれが定義している子どもの発達段階を図1に示す。どれも小学生頃の時期を学童期、中高生頃の時期を青年期と定義してある。子どもの発達の道筋やその順序においては、共通してみられる特徴がある。一方、子どもは一人一人異なる資質や特性を有し、成長には個人差がある上、社会構造の変化に伴い、子どもの成長にも大きな変容が生じてきている。発達段階ごとの特徴をまとめたものを図2に示す。一般的には、小学校低学年は、善悪の判断の際に、教師や保護者の影響を受けやすいが、小学校高学年になると、行為の結果と動機を十分考慮できるようになる。中学生では、思春期に入り、様々な葛藤の中で自らの生き方を模索し始め、高校生になると、自立した大人になるための模索が始まる。   また、居場所については、2000年代以前に発行だれた辞典には「いどころ」「座る場所」等の物理的な側面だけしか記載されていなかったが、2000年代以降の辞典では、「身を落ち着ける場所」等の心理的な側面も盛り込まれるようになり、物理的・心理的両方の側面から「居場所」は定義されている。また、中島ら(2007)は、「居場所」は他者から認められたり、他者から自由になって自分を取り戻したりして得られるような「自分の存在を確認できる場所」と定義している。また、人間がもつ重要な要素である「他者との関わり」の視点から、他者との関わりをもつことで自分を確認できる場所を「社会的居場所」、他者との関わりから離れて自分を取り戻せる場所を「個人的居場所」と分類している。本研究においては、「社会的居場所」に注目し、図1に示す条件を満たす場所を研究対象とする。
 以上を踏まえ、本研究で対象とする子どもは、自分の意志で地域内にある自分にとっての居場所を見つけられる子どもとし、主体的な行動・判断ができるようになる小学校高学年から、親の保護から離れ行動範囲が一気に拡大する前の中学生までとする。また、小学校高学年の時期の課題として、メディアを通じた疑似体験・間接体験が多くを占め、人・モノ・実社会に直に触れる直接体験の機会が減少していることが指摘されている。中学生の時期の課題としては、思春期に入り、不登校の子どもの割合が大幅に増加する傾向や青年期全てに共通する引きこもりの増加といった傾向が見られることが指摘されている。一方で、Benesse教育研究開発センターの調査によると、子ども(小・中学生)時代に、親子関係はもちろん、親や学校の先生以外の大人や友達との交流体験が、成人後の仕事における態度・能力に繋がっている可能性があることが分かった。以上から、この年代に対しての実社会への興味・関心を持つきっかけづくりの必要性が高いことが分かる。これらのことも、この年代を対象とした理由の1つである。



子どもの居場所に関する文献調査

子どもの居場所に関する考え方の変遷

 「居場所」という言葉が登場するのは1980年代であり、学校に行けない子どもに対して設けられた、民営の「フリースペース」、「フリースクール」と称する学校以外の場所を「居場所」として捉えていた。しかし、「学校拒否」の子ども達の数は増加し続け、文部省は1992年、「学校拒否(不登校)問題について-児童生徒の『心の居場所』づくりを目指して-」という報告書において、学校が「心の居場所」である必要性を提唱した。文部省の報告書以前は、居場所と言えば心理的な意味を帯びつつも物理的な空間を伴う場所であった。しかし、報告書以降、居場所が必ずしも物理的空間を伴わない形で捉えられるよになった。居場所という言葉は小中学生の不登校児童生徒の問題に関連して用いられることが多かったが、不登校児童生徒の問題としてではなく、学校全体、子ども全体の問題として居場所が論じられるようになった。
 近年は、都市化、自然環境の喪失、子どもを狙った犯罪の増加による子どもの安全・安心できる遊び場の不足や、子どもを取り巻く貧困の格差等の社会的課題も相まって、今を生きる子ども達の「居場所のなさ」を指摘する声があがっている。また、他者との直接的な交流を必要としないポータブルゲームやインターネットの占める割合が高くなっている。こういったことから、「異年齢・異世代間での交流や、自由で創造的な遊びを通じて、子どもの心を成長・発達させることができる場」や「家庭や学校以外の多様な他者との交流が可能な地域社会との関わりが持てる場」、「安心できる放課後の居場所」、「子どもが信頼できる大人がいる場」等が求められている。また、1つの「居場所」のみで、「居場所」から得られる心理的機能を全て充足することは困難であり、子どもにとっては、多様な居場所を持つことが望ましいと考えられている。近年の取り組みでは、「学童保育」への民間企業の参入や、障がい児も対象とした「放課後デイサービス」、子どもが一人でも安心して過ごせる場所として食事を提供する「子ども食堂」等も地域で広がりを見せている。  



事例調査

子どもの居場所として現在運営されている場

図4.子どもの居場所の特徴

 実際に子どもの居場所として運営されているものを、Webサイトと文献で調査し、図2にまとめた。子どもの居場所の特徴としては、「子どもの性質」、「子どもの年齢」、「活動内容」の大きく3つに分けて運営されていることが分かった。本研究で対象となる場としては、特別な子どもだけでなく全ての子どもが来ることができ、地域交流ができる場として運営されている、子ども食堂や地域子ども教室等が該当した。

対象とする子どもの居場所

 「子ども」「居場所」とそれぞれ「地域」「NPO法人」「集まる」をキーワードに用いて、googleで検索を行い、本研究で条件づけした場に適する子どもの居場所を調査した。

周知方法について

 周知方法としては、主にHPとFacebookで周知している団体が多く、他には、LINEやInstagram、note、学校配布用のチラシを活用して周知している。日々の活動記録や次回開催の報告についてはFacebookで行っている団体が多く、Facebook上での運営者と参加者とのやり取りも多く見受けられた。中には、参加した子どもや家族からの口コミで認知度があがった団体もあった。

開催日について

 開催日は、平日と休日どちらも運営している場所が最も多く、次いで、平日のみ運営している場所、休日のみ運営している場所の順にであった。平日に開催される曜日としては水曜日が最も多く大半を占めた。また、子ども食堂に関しては月に1・2回の開催や不定期開催の団体も見うけられた。
 時間帯は、子ども食堂では平日は夕方の16時から20時の間、土日はお昼の10時から14時の間に開催されている。また、居場所としての場所の提供としては、平日は13時から20時の間、休日は10時から20時の間に開催されている。 

スタッフについて

 スタッフの人数は、10名程度で活動を行っている団体が多かった。また、ボランティアの募集を募っている団体が多く見受けられ、中には、3年以上を目安に長期的に継続して活動できる人等のような条件を提示している団体もあった。

子どもとの関わり方について

 

外観・内観について

 居場所として、公民館、古民家または一軒家、を活用している団体が多く、中には教会で居場所づくりを行っている団体もあった。外観に関しては、。内観に関しては、。子ども達が思い思いに過ごせる空間づくりがなされている。

運営方法について

 NPO法人として運営している団体は、寄付や行政・民間の助成金・補助金を活用して活動している。また、他の団体と連携して事業を行っている団体や、自主事業で収益を得て、事業を継続している団体もあった。



フィールド調査

 事例調査で得られた、対象となる子どもの居場所の中から、実際に足を運び調査可能な場所をフィールド調査の対象とした。調査対象である「子どもの絵本専門店エルマー」と「毛髪改善専門美容室ROSSO hair design」、「さわら子ども食堂」、「山王学舎」で子ども達の過ごす様子を観察すると同時に、子ども達の特徴や様子、運営をする上での考えや課題について、ヒアリング調査を行った。「子どもの絵本専門店エルマー」と「毛髪改善専門美容室ROSSO hair design」は子どもの居場所として運営しているわけではなく、自然と子ども達が集う場になっている場で、「特定非営利活動法人 さわら子ども食堂」と「特定非営利活動法人 山王学舎」、「特定非営利活動法人 地域コミュニティセンターこころん」は子どもの居場所として運営を行っている場である。各々の居場所の概要を表1に示す。

活動名 場所 開催日 スタッフ 周知方法 概要
ROSSO hair design 福岡市長丘 営業時間:9:00∼18:00

定休日:毎週月曜日、第3日曜日 

2人

(ご夫婦)

特にしていることはない 美容室。子ども達のために駄菓子を売っている。小学生が駄菓子を買いに来たり、子ども達の待ち合わせ場所になったりしている。
子どもの絵本専門店 エルマー 春日市 営業時間:10:00-19:00

定休日:第2火曜

2人 特にしていることはない 絵本屋さん。絵本を買いに来る子もいれば、遊んだり、宿題したり、習い事の行き帰りに寄ったりする場になっている。
さわら子ども食堂 福岡市早良区 第2・4日曜

子ども食堂:10:30-13:30
配布:10:00∼11:00

15名程度 学校に配布しているチラシ 地域の中で「つながりの貧困」をなくすため、安心、安全な子どもたちの居場所をめざしている。
山王学舎 (子ども食堂) 福岡市博多区 月2回、日曜日:17:00∼20:00 2名 学校に配布しているチラシ 食事だけでなく、山王学舎のスペースを開放し、地域の交流や子ども達の遊びも行う。
地域コミュニティセンターこころん

(おひさま食堂)

糟屋郡篠栗町 第2・4金曜日:16:00∼18:00 15名程度 - 地域の皆さんと共にいろんな居場所づくりを目指している。

訪れる子ども達の特徴


子ども達が居場所を知る方法

 美容室とさわら子ども食堂、山王学舎子ども食堂は、子ども達の間での口コミで居場所の情報が広まっていることが分かった。エルマーは、絵本を買いに来たことがきっかけでその後継続して子どもが訪れるようになっていた。

子ども達と大人の関係性


居場所で過ごす子ども達の様子


居場所の外観・内観について



結果と考察

 事例調査によると、
 フィールド調査により、



まとめ

 本研究では、
 今後は、事例調査を引き続き行い、実際に運営されている子どもの居場所を整理し、その特徴や傾向等について分析を深めていく。それと同時に、現在行っているフィールド調査についても、引き続き追加調査を行い、考察を深めていく。

脚注

  1. 文部科学省 コミュニケーション教育推進会議 「子どもたちのコミュニケーション能力を育むために∼『話し合う・創る・表現する』ワークショップへの取り組み∼」(2011.8.29)


参考文献・参考サイト

  • ◯◯◯◯◯(20XX) ◯◯◯◯ ◯◯学会誌 Vol.◯◯
  • ◯◯◯◯◯(19xx) ◯◯◯◯ ◯◯図書
  • ◯◯◯◯◯(1955) ◯◯◯◯ ◯◯書院