家庭料理における手順の省略によるコミュニケーションの変化の研究
- 木尾優馬 / 九州大学 統合新領域学府 ユーザー感性学専攻 感性価値クリエーションコース ← 氏名 / 所属 (筆頭者)
- Yuma Kio / Kyushu University ← 氏名 / 所属 の英語表記(筆頭者)
Keywords: Communication Design ← キーワード(斜体)
- Abstract
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背景と目的
近年食品産業の成長は著しく、日本冷凍食品協会の令和3年“冷凍食品の利用状況”実態調査によると女性の87.7%、男性の84.4%が月に1回以上冷凍食品を使用しており、調理済み食品は世の中に浸透していると言える。
しかし、2020年の4月SNS上で「冷凍餃子を使うことは手抜きか、手間抜きか」という論争が話題となった。福島(2020)は、高度経済成長期に「食事作りは主婦の役割である」という意識とともに「スーパーで買ってきた素材と調味料を組み合わせて料理を完成させることが『手作り』である」という家庭料理のイメージが形成されたとしており、女性の社会進出が進みつつある現代でも「手作り=愛情」という考えが内面化しているとしていると述べている。
また、石毛(2009)は、 工場で作った食品には作った人と食べる人のあいだの個別的なコミュニケーションが欠けている。そこでコマーシャルを通じて経済性や美味さの他に、機械で製造される商品に人間味のあるメッセージを付加しようとしていると述べている。
家庭料理を食べるシーンでのコミュニケーションの研究は多く存在するが、「愛情」や「人間味」といった現代の家庭料理の作り手と食べ手のコミュニケーションの実態についての事例はなく、まだ明らかにされていない。本研究では調理済み食品、半調理済み食品が省略する家庭料理の手順に焦点を当て、作り手と食べ手のコミュニケーションの実態を調査し、現代における食品会社のCMが作り手と食べ手の関係にどのように訴求しているのか分析・考察することを目的とする。
研究方法
本研究では、家庭料理において調理を市販の調理済み食品を使用して簡略化した料理と、していない料理をいくつかの調理手順に分けて考え、作り手と食べ手の料理を通した感情的なコミュニケーションに各段階でどのような変化があるの現状調査を行う。
次に前述の調査結果と比較する形で2021年9月〜11月に放送されている食品のCMの中で作り手と食べ手が登場しているものについて、分析・考察を行う。
現状調査
調査概要
相良(2009)は食において美味しさに関わるとされる、認知的要因は個人の記憶、態度、知識による部分が大きいので定量的に一般化されていないと述べており、料理の作り手における感情も同様に定量化が困難だと考えられる。
作り手と食べ手の感情の全体像を掴むために、本調査では回答者の料理の作り方を石毛(2009)のモデルを参考に「したごしらえ」「混合・加熱・変形」「味付け」「盛りつけ」の4つに分けて考え、調理手順の省略による感情の変化を図1の自由形式のアンケートで調査を実施した。
質問 | 回答形式 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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結果・考察調査の結果126人から回答が得られた。内訳は表2に示すとおりである。 図2 アンケート回答者の内訳
作り手側の感情については97名、食べ手側の感情については96名の意見を得ることができた。 分析から多くの作り手、食べ手それぞれには以下のような基本的な料理と相手に対する感情の姿勢があるという仮説が考えられる。 作り手側は 食べ手側は
また意見が大きく割れ始めているので、個人の状況により意見が変化しやすい。
今後の展望本調査の考察で立てた仮説は、各手順での感情の全体像マッピングから考えられたもので、個々人の料理スキル、作るまたは作ってもらう相手との関係性、手順間での個人ごとの感情の移り変わりなどを考慮できていないため、感情や個人間の関係性も含め、本調査で得られた感情の全体像を基に定量的な調査を行う予定。 また性別や年齢による感情の出方により詳細な考察を行うために、幅広いモデルにインタビュー調査などを行う予定。 まとめ本研究では調理済み・半調理済み食品によって省略される料理の手順ごとの、作り手と食べ手の感情の全体像を得ることができた。 考察を〜 今後の展望として〜 脚注
参考文献・参考サイト
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