インタラクティブ動画の現状調査
-日中比較を中心に -
- 陳嵐清 / 九州産業大学 大学院 芸術研究科
- Lanqing Chen / Kyushu Sangyo University
Keywords: Interactive Video, Interactive Design, Media Platform
- Abstract
- With the spread of mobile internet, mass consumption of entertainment and the development of digital internet technology, the short video industry has undergone a rapid transformation and has gradually come to occupy a mainstream position in social media. This is where a new mode of short video called 'interactive video' has emerged. Interactive video is a fusion of short video + interactive action (interactive button: touch on mobile, click on PC) + storyline (plot tree), and has emerged as a new potential in the video industry, reaching Internet It is becoming increasingly visible to Internet users as a new potential player in the video industry.There are many platforms with interactive video, both national and international. In order to design interactive videos, information was first collected on platforms that support interactive video as a function for various functions in the production and publication of videos. The information collected on the functionality and performance of platforms shows that the number of platforms in China far exceeds that in Japan.
背景と目的
本発表は筆者が博士研究で取り組んでいる「地域活性化に関わるインタラクティブ動画の可能性」の研究に関連して、その現状調査を行った結果を報告するものである。
モバイルインターネットの普及、娯楽の大量消費化及びデジタルインターネット技術の発展により、ショート動画産業は急激な変容を遂げ、徐々にソーシャルメディアの主流の位置を占めるようになってきた。そこに登場したのが「インタラクティブ動画」というショート動画の新しいモードである。インタラクティブ動画とは、ショート動画+インタラクティブアクション(インタラクティブボタン:モバイルではタッチ、PCではクリック)+ストーリーライン(プロットツリー) を融合したもののことで、動画産業における新たな可能性を秘めた存在として、インターネットユーザーの目に触れるようになってきた。中国では、インタラクティブ動画機能をサポ ートする主なプラットフォームは、Tencent、IQIYI、Mango TV、Youku、BILIBILI などが挙げられ、日本では、インタラクティブ動画機能をサポートする主なプラットフォームはミルなどが挙げられる。
博士研究では、「ユーザーの嗜好度」、「理解しやすさ」、「覚えやすさ」、「伝送意向(シェアしたいと感じるかどうか)」等に関して、インタラクティブ動画の従来動画に対する優位性を、実験的に検証するとともに、その結果をもとに、今後の地域活性化に寄与すべく、インタラクティブ動画を制作し、その効果を検証する。本発表では、インタラクティブ動画の実験を行うため、インタラクティブ動画が支えられる日中プラットフォームの機能を整理し、実験方法の可能性を探ることを目的とする。
調査
インタラクティブ動画を持つプラットフォームは、国内外に多数存在している。インタラクティブな映像をデザインするために、まず、インタラクティブ動画を機能としてサポートしているプラットフォームについて、動画の制作・公開に各種機能の情報収集を行なった(表1)。
インタラクティブな映像機能をサポートする様々なプラットフォームを集めると、以下のような代表的な機能のカテゴリーが見いたされた。それぞれの用語について説明する。
1)サブプロット:視聴者は自分の立場や好みに応じてキャラクターの行動を選択し、プロットの展開に影響を与え、異なるプロットの内容に入り込み、異なる選択を経験することができる。
2)画面上の情報探索:テキスト、ビデオ、その他の情報コンテンツがメインビデオに追加され、視聴者に自然な没入感で探索を促しガイドする。さらに、視聴者はパノラマモードで画面上の情報を探索することが可能である。
3)マルチビュースイッチング:視聴者は複数のビューを切り替えて、キャラクターや物理的な場所など、さまざまな視点からコンテンツを体験することができる。
4)ゲーミフィケーションの探求:機械解読、宝探し、QTE(クイックタイムイベント)、キャラクターの関係構築など、ゲーム的な要素を映像に加える。
5)Xファクターによるストーリー展開:コンテンツ制作者は、「Xファクター」を使って、長いスパンでの視聴者の一連のインタラクティブな行動を追跡し、視聴者の各インタラクティブな行動の傾向を継承し、最終的には「Xファクター」の累積値の違いで異なるコンテンツをトリガーすることができます。 X-Factorは、長いスパンでの一連のインタラクションを追跡し、それぞれのインタラクションにおけるオーディエンスの傾向を継承するために使用することができる。
結果
WEB検索を行なったところ、中国のプラットフォームが五つ、日本のプラットフォームが一つという結果であった。
サブプロットを持つプラットフォームが多く、一方で、画面上の情報探索とゲーミフィケーションの探求をプラットフォームが少ないことがわかった。
インタラクティブ動画の核心は「インタラクション」であり、技術の発展とともに、インタラクションの形態は、従来の分岐型プロット選択(=「ABドラマ」)から画面情報の探索、マルチビュー切り替え、ゲーミフィケーション探索など多様化し、映像制作にさらなる可能性を提供している。
まとめ
プラットフォームの機能・性能に関する情報を収集したところ、中国のプラットフォーム数は日本を大きく上回っていることがわかる。
日本と中国を比較すると、これはレンタルサーバーによるものであると推察される。日本では、レンタルサーバーが自由に利用でき、個人がウェブ上にインタラクティブなシステムを立ち上げ、そこに動画を埋め込むことができる。中国では、レンタルサーバーは国家によって管理されており、その結果、多くのプラットフォームがインタラクティブな動画機能やコンポーネントを導入している。
サブプロットを持つプラットフォームが多く、一方で、画面上の情報探索とゲーミフィケーションの探求をプラットフォームが少ないことがわかった。
中国と日本の主要なプラットフォームの機能を比較すると、組み込み開発のコストが主な原因であると推察される。画面上の情報の機能性やゲーミフィケーションの探求を追求するためには、インタラクティブシステムに組み込まれたキャラクターシステムを別途開発する必要があり、コストが大きく膨らんでしまう。
脚注
[1] Kaizen Platform 公式note. “SNS動画の長さはどれくらいが最適?各SNSに適した動画時間を解説!”.kaizenplatform. 2020-04-26. https://media.kaizenplatform.com/n/n2080725ac45b,(参照2020-08-06)
[2] 浜本階生. “具体例で学ぶ!情報可視化のテクニック”. 技術評論社. 2008-10-14. https://gihyo.jp/dev/feature/01/visualization,(参照2020-11-20)