漫画の要素デザインに関する研究

提供: JSSD5th2022
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—「大牟田線の乗子」の漫画を例にとる


謝敏/ 九州大学 芸術工学府


Abstract
Through questionnaire survey and behavior analysis of black and white comics after coloring, this study hopes to establish an evaluation method that can be applied to comics and graphic books in the future. It aims to create future comics through new evaluation methods and establish a system for the coexistence and development of various forms of comics.


背景と目的

 2021年、日本の漫画市場規模(紙と電子の合計)は6759億円と、2年連続で過去最高を更新。漫画全体の6割を電子が占めた。特に中国市場では、電子漫画の急成長により電子漫画が市場の 8 割を占めている。一方、紙の漫画誌は廃刊にも追い込まれている。紙のページをめくって読むことを前提で発展してきた漫画市場は変わりつつある。かつての漫画市場は巨大かつ閉鎖的。今後の業界には、培ってきたノウハウを縦スクロール漫画に生かしたり、横読み漫画をよりウェブに最適化させたりするなど、グローバルスタンダードを意識した努力が必要である。

 本研究では、白黒漫画を色つけした後のアンケート調査と行為分析を行い、未来の漫画やグラフィック書籍にも応用できる評価方法を確立する予想である。新しい評価方法を通じ、未来の漫画を作り、様々な形式の漫画が共存して発展できるシステムを狙っている。

研究の方法

 1.日本と中国の漫画における資料、市場調査を行い、漫画の要素を調査し、その特徴の分類と分析をする。

 2.白黒漫画をカラー化する。白黒版とカラー版を読者に読んでもらい、アンケートをとる。要素カラー化により、読者に与えた内容、印象の変化を検証する。

 3.行動分析を通じ、漫画の読み方において研究をとる。

 4.アンケート調査と行動分析から読者の評価を得、色をつける対象を細分化し、色付け効果に影響を与える要素を列挙する。

 5.これらの要素の重要性を検討し、評価方法を確立する。

 6.評価方法を漫画に応用する。そして、漫画創作による評価方法の妥当性を検証します。

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経過

 今年4月、私はmeコンテンツ構想プロジェクトに参加する機会に恵まれました。このプロジェクトでは、西日本新聞meで連載中の漫画「大牟田線の乗子」を使って、私のカラー化の研究に取り組んでくれました。

 漫画に色を塗っていく中で、「自分の色付け効果をどう評価しようか」と思います。この問題を解決するために、漫画の色塗り、アンケート調査、行為分析というステップから、私の色付けの評価をしていきます。また、漫画によって要素は異なるかもしれません。例えば『大牟田線の乗子』は、新しい地域特性の認知をもたらすマンガとして、都市、ファッション、観光などがマンガの要素かもしれません。これらの要素に色をつけることによって、その漫画に異なる影響を与える可能性があります。そこで私はマンガの要素の可能性を探究する評価方法を確立し、マンガの要素に関するデザイン研究を行い、未来のマンガに建設的な意見を提供することを目指します。私は漫画の要素の可能性を探究する評価方法を確立し、漫画の要素に関するデザイン研究を行い、未来の漫画に建設的な意見を提供することを目指します。

 いま漫画は2話が完成し、西日本新聞meソフトに掲載されています。

 未来の研究のために、紙の漫画も作りました。

 その後、漫画に対する読者のイメージや色の好みを分析するために、アンケート調査を行いました。ネットユーザーは忙しくて、多くの質問に答えることが難しいため、できるだけ短い質問で効果を評価することも重要です。図1は、読者を性別・年齢・読書頻度などでグループ分けしたもので、グループ別の漫画に対する明度、彩度、色相などのイメージ関係を示しています。明度に関してはこの性差があるように見られました。ただ頻度に関しては、とてもバラバラなので、これから研究が必要です。

 その後、行為分析の方法を行いました。openposeで得た漫画を読んだときの行為データと、好きな漫画、ちょっと好きな漫画を読んだときの行為データを比較することで、その漫画に対する読者の好みを判断することができます。モノクロ漫画とカラー漫画の読書行為データを比較することで、色付け効果を評価することができます。読み方が実験データに影響を与える可能性があるので、横読みと縦スクロールに分けて2つの実験を行いました。従来の技術では、被験者が読んだときの指の動的(速度、加速度)と静的(移動した相対距離、相対角)といった行為データが得られます。

 データをそれぞれ時系列の折れ線グラフにして、それぞれのページを読む時間を比較し、時間の差の原因を分析します。  まずは動的ヒストグラムを比較します。図2は縦スクロール漫画のデータです。カラー漫画とモノクロ漫画では速度などの違いを視覚的に比較することができます。同じように、図3は横読み漫画のデータです。  次は静的ヒストグラムを比較します。実験では、指の位置を簡単に比較するために、指の位置をx方向とy方向に分割し、ヒストグラムを作成しました。  図4は縦スクロール漫画のデータです。カラー漫画とモノクロ漫画では指の位置などの違いを視覚的に比較することができます。同じように、図5は横読み漫画のデータです。

考察

まとめ

現在、色付けはアーティストが、行為分析はエンジニアがそれぞれ研究しています。それらを重ね合わせる研究には価値がありますが今はありません。将来的には、コツコツと色を塗ります。アンケート調査の結果と行為分析データを組み合わせ、二つの関係を見て、有効なデータを選別して評価基準を出します。そして、それらを重ね合わせて、未来の漫画やグラフィック書籍に応用できる評価方法を確立します。未来の漫画を作り、様々な漫画が共存して発展するシステムを作ります。

脚注


参考文献・参考サイト