「地域におけるテーマ型コミュニティのあり方についての研究」の版間の差分
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2022年10月18日 (火) 17:01時点における版
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- 黒田隆之 / 九州大学大学院統合新領域学府 ユーザー感性学専攻
- The Graduate School of Integrated Frontier Sciences / Kyushu University
- 池田 美奈子 / 九州大学大学院統合新領域学府 ユーザー感性学専攻 准教授
- The Graduate School of Integrated Frontier Sciences / Kyushu University
Keywords: 地域、地域包括ケアシステム、コミュニティ、課題解決 ← キーワード(斜体)
- Abstract
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背景と目的
現在の日本は人口減少、少子高齢化など大きな課題を抱えている。また、国の財政難は政策への影響も大きく、高齢者を支える人材の不足、介護を受けたくても十分に受けられない介護難民の増加を招く懸念されている。 国はこうした状況に対し、地域包括ケアシステムの構築を進めている。このシステムは、地域が主体となり介護・医療や生活支援サービスを整備することで、高齢者が住み慣れた地域で「自分らしい生活」を最後まで送ることための支援を地域で一体的に提供できる仕組みを構築することを目指している。一方、地方自治体の自主性に依存している状況が強く、機能するためには地域コミュニティが重要であるとされているが、その地域コミュニティも様々な課題を抱え、存続の危機にある。 本研究では福岡市と対象地域として地域コミュニティが抱える課題を明らかにし、地域包括ケアシステムにおける地域コミュニティの望ましいあり方とその形成に向けた指針の提示を目的とする。
研究の方法
当研究は地域包括ケアシステムの現状と課題ついての先行研究調査と地域包括ケアシステムに携わる専門職の現状と課題に関する文献およびヒアリング調査を実施。その後、地域コミュニティについての現状と課題、事例調査を行います。その後、各調査を踏まえ、課題解決に向けて整理し、最終的に地域包括ケアシステムにおける地域コミュニティの望ましいあり方とその形成に向けた指針の提示を目指す。
結果
地域包括ケアシステムとは、団塊の世代が75歳以上となる2025年を目途に、重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供されるシステムの構築を実現していくもので、地域の自主性や主体性に基づき、地域の特性に応じて構築していくとされる。必要なサービスが提供されるよう、おおむね30分で移動できる範囲内を1つの圏域としており、中学校区単位を想定されている。特に今後、増加が見込まれる認知症高齢者を地域での生活を支えるためにも地域コミュニティの存在は重要であるとされている。地域包括ケアシステムにおいて、対象となる地域の現状からシステムの構築に向け、①都市型、②大都市型、③団地型、④中山間地域型、⑤島嶼・沿岸型があると言われている。(12)システム構築が必要となった背景には、先述の急速に進む少子高齢化がある。総務省統計局の2021年の推計で65歳以上の高齢者人口は3640万人となり、「団塊の世代」を含む70歳以上人口は2852万人、総人口の22.8%となった。(1)全国の要介護認定者数は厚生労働省の統計で686.6万人。居宅サービス受給者数は399万人。それに対して、介護職員数は全国で211万9000人。(2)(3)この数字から見ても要介護認定者を公的サービスのみで支えることは困難である。「地域包括ケアシステム」の構築は、公的サービスだけでは支えられなくなったことで、「地域」の力を活用しながら高齢者を支えていくために必要となっている。 しかし、この地域包括ケアシステムには「医療介護の連携」、「地域格差」、「後継者の不足」という課題が挙げられる。 高齢者が住み慣れた地域で安心して暮らすためには「医療介護の連携」が必須である。しかし、この両者には、専門性の違いが大きな壁となることがある。両者の間にある壁をなくすことが、「医療介護の連携」を機能させるうえで重要な課題である。専門職種へ半構造化インタビュー調査行った結果では、地域包括ケアシステムの内容や趣旨を理解している者が多く、職種の役割について認識に差異はなかった。しかし、免許取得から3年未満では内容をほとんど把握していない者もいた。地域に対する問題意識の持ち方は勤務先や経験年数などの影響を大きく受けていた。 次に「地域格差」は、高齢者支援の主体が国から地方自治体へ移行する点が、地域包括ケアシステムの特徴として挙げられる。しかし、財源や活用できる物的資源、人的資源には地方自治体毎によってかなり大きな差があることは明白である。結果、高齢者に対して提供されるサービスは実施内容やサービスの種類、回数など地域格差が量、質共に生まれやすい。「後継者の不足」について、現代の日本社会が抱える課題である人口減少により、核家族化が進行。高齢者の単独世代も多くなっている状況があり、親族間のつながりも希薄になっている。さらに町内会の活動など近隣住民の交流も以前ほど活発に行われていない。後継者の不足は人と人のコミュニケーションの頻度を確実に減らしており、地域コミュニティの力が失われる結果となっている。地域交流センターへ半構造化インタビューを実施した結果、地域コミュニティの課題としては、世代間交流の減少や地域コミュニティの必要性の認識低下が挙げられると言った内容を聴取した。 今回、対象とした福岡市の特徴として、「福岡市地域包括ケアアクションプラン2021-2026」より次のような特徴が挙げられている。まず人口増加である。福岡市の人口は2020年5月には160万人を超え、今後も人口増加が予測される。中でも高齢者人口の増加、高齢化率は今後も上昇すると見込まれており、団塊の世代が75歳以上となる2025年には24.8%、団塊ジュニア世代が高齢者となる2040年には31.1%、約3人に1人が高齢者になることが予測高齢者人口の増加に伴い介護が必要となる高齢者の増加も見込まれる。これに伴い、要介護認定者数は2025年には8万2千人、2040年には12万4千人になると推計。認知症高齢者数も2025年には4万4千人、2040年には6万9千人になると推計されている。単独世代の多さが挙げられる。後期高齢者の単独世帯は2025年に7万4千世帯、2040年には11万1千世帯へと急激に増加することが推計されている。福岡市のもう一つの特徴として進学や就職、転勤等の人口移動が大きく、単独世帯も多い街である。共同住宅や賃貸住宅の割合の高さが示唆するように、顔なじみの住民による長期的な地域コミュニティの形成の困難さにもつながっている。(4) 2019年度の福岡市高齢者実態調査では、 60歳以上の43.2%の人が「近所付き合いが少ない(ほとんど付き合いがない、道が合えば挨拶する程度)」と回答しており近所付き合いの程度が低くなっている。福岡市には仕事等で転入し、定住する人も多く、定住した地域と関わりが薄いまま高齢期を迎える人が増加しているのも要因の1つと考えられる。 福岡市におけるコミュニティ事例として、福岡市西区壱岐小学校・壱岐南小学校校区内にあるシニアソフトボールリーグの活動を取り上げる。このコミュニティは壱岐小学校・壱岐南小学校校区の定めらてたエリア内で居住する住民を対象として活動しており、ソフトボールというテーマに対して、経験・未経験に関わらず、高校生から80代の高齢者まで幅広く参加しているという特徴がある。このソフトボールリーグの活動は、「ソフトボールを楽しむ」という共通の活動目標を持った住民が定められた日時に活動しており、世代間交流が生まれる場となっている。これは地域包括ケアシステムの中で「生活支援・介護予防・健康増進」にあたり、この活動から生まれる世代間交流は、福岡市の地域課題となっている「後継者不足」の課題に対して解決する対策となり得る者であり、共助の関係性構築の一助となり得ると考えられる。
考察
日本が地縁型コミュニティ形成を中心に構築されていることが特徴として挙げられ、地域包括ケアシステムもこの思考過程から中学校校区単位を1エリアとした地縁型コミュニティの形成が検討されている。先に挙げた福岡市の地域特性として、人口移動が大きく、転入や転出の活発さにより、顔なじみの住民による長期的な地域コミュニティーの形成の困難さにもつながっていると指摘されている。「住み慣れた場所」=地域とする地域包括ケアシステムの構築には、福岡市の特徴を踏まえると、「住み慣れた地域に暮らしている」が、近所には顔見知りがいないという状況が生じやすくなる結果、地縁型コミュニティ形成の障害となる。 一方、今回、事例として挙げた福岡市西区壱岐小学校・壱岐南小学校校区内にあるシニアソフトボールリーグの活動のようなテーマ型コミュニティ形成であれば、地縁型のように長期定住によるコミュニティ形成に拘らず、 こうした対象となる地域の中で、多種多様なテーマから自身の興味あるテーマを共有することで、「人と人がつながる」きっかけ作りとなり、コミュニティ形成を進める上で、地縁型のみで検討するよりもコミュニティ形成を進める上で敷居が低いと考えられる。
まとめ
地域包括ケアシステムの構築に向けては、まだまだ様々な課題をかけており、その課題は地域特性に応じて多種多様である。地縁型とテーマ型双方のコミュニティ形成の手法を融合させた形を促進させることが出来れば、今後の後継者不足という課題に対しての解決策につながると考えられる。 今後、福岡市の地域包括ケアの参画する専門職へのアンケート調査や地域包括支援センターへのインタビュー、地域のコミュニティ調査をさらに進め、対象地域でのテーマ型コミュニティの活かし方と専門職の視点でできることをさらに模索していきたいと考える。
脚注
参考文献・参考サイト
- ◯◯◯◯◯(20XX) ◯◯◯◯ ◯◯学会誌 Vol.◯◯
- ◯◯◯◯◯(19xx) ◯◯◯◯ ◯◯図書
- ◯◯◯◯◯(1955) ◯◯◯◯ ◯◯書院
山口昇.2018.地域包括ケアの原点と未来. Jpn J Rehabil Med 2018;55:p90-p94 筑後 一郎.2016.地域包括ケアシステムの課題と展望.川崎医療福祉学会誌 Vol.26 No.1 pp79-83.
- ◯◯◯◯◯ https://www.example.com (◯年◯月◯日 閲覧)
参照1:総務省統計局https://www.stat.go.jp/data/topics/topi1291.html 参照2:厚生労働省、介護職員数の推移https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/000923173.pdf 参照3:第8期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000207323_00005.html 参照4:福岡市アクションプラン2021-2026 厚生労働省ホームページ https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/chiiki-houkatsu/