3D画像を用いた広告表現の研究
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Keywords: Product Design, Visual Design ← キーワード(斜体)
- Abstract
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目次
背景と目的
1950年代アメリカでステレオ写真というものが流行した。右目と左目の視差を有する2枚の画像ペアを撮影し、ステレオスコープと呼ばれる装置で鑑賞することで立体の画像を得るものである。このような立体視が可能な画像(以下3D画像)は、立体感は勿論のこと、質感などの要素で2Dでは実現しえない表現が可能である。現在、広告分野でも写真は重要な表現要素となっているが3D画像を用いた例はなく、3D画像を用いることで新たな広告表現が可能なのではないかと考えた。
3D表示が可能なデバイスの一つであるヘッドマウントディスプレイ(HMD)の出荷量は年々増加しており、2025年には約6000万台になると予想されている[1]。HMDが普及すれば、今後広告分野においても現在の2Dに置き換わり3Dが主流となっていくことが想定される。しかし、現在は3Dの場合にどのように広告表現をしたら良いのか明らかになっていない。本制作においては広告のなかでも特に製品写真を用いたポスター広告に着目して、3D画像を用いた広告表現について有効な表現方法について明らかにすることを目的とする。
研究の方法
研究を進めるにあたり、まず、視差を用いた広告研究の事例を確認した。次に、3Dに応用できる現在の2D広告の特長を抽出するため、既存の製品ポスター広告について、写真の配置と要素の前後関係に着目してグルーピングを行った。また、3D画像の広告での有効性について検証するため、試作を用いて簡易検証を行い、有効性を検証した。【以上本発表範囲】最後に以上の結果を元に広告作品の制作を行い、展示会を開催、アンケートを通して有効性を検証する。
既往研究
3Dを用いた広告の可能性に触れた研究に「局所3D化を用いた広告表現と視覚特性」[2] がある。ここで言う局所3D化とは、“2D映像素材内の一部のみに交差性の視差を与えて変換した3D映像” [3]としている。この実験では視差によって視線を誘導する傾向があることや、視差による視線の誘導は局所的に付加した条件で、顕著となるなどの結果[4]を得ている。この研究は、本制作が目的としている3Dならでは表現を主眼としたものではないが、3D画像の特徴の一つである視差―特に画面から飛び出て見えるネガティブ視差の視線誘導の可能性を示しており、2Dにはない3Dならではの効果として応用が期待できると考える。
2D広告の調査
調査目的と調査対象
本制作の目的は「製品写真を用いたポスター広告に着目して、3D画像を用いた広告表現について有効な表現方法について明らかにすること」である。この調査では既存の2D広告表現の事例を整理し、3D広告表現においても応用できる手法、および課題となる点を抽出することを目的とする。広告はイラストを用いたものからコピーだけを配置したものなど様々あるため、本調査では、写真を使用したものに限定することを目的として、調査対象を日本広告写真家協会が主催するAPA Award過去3年の広告作品部門受賞作品とし、その中から製品広告のポスター・OOH作品151点を抽出した。尚、特定の商品を示さない製品ブランド広告は対象としていない。
調査方法と結果
ポスター全体に対する写真の配置、コピーと写真の前後関係と配置、製品ロゴの前後関係と配置、メインの画像以外で製品画像が配置されているものについてその前後関係と配置、についてそれぞれ類似するものをまとめた。 調査の結果、以下のようにまとめられた。
NAME | 全面 | フチあり | 3辺フチなし上付き | 2辺フチなし右上付き | 3辺フチなし右付き | 2辺フチなし右下付き | その他 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
数 | 79 | 44 | 20 | 2 | 1 | 3 | |
NAME | 最前面 | 画像上の単色・グラデーション上 | 背景色上 | 画面外の余白 | 画面外の余白と画像上 | 被写体による遮蔽 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
コピー | ● | ● | ● | ● | ● | ● | |
製品ロゴ | ● | ● | - | ● | - | - | |
追加製品画像 | ● | - | ● | ● | ● | - |
3D広告への応用が期待できる要素
ポスター上の画像の配置について、3Dへの応用にあたっては、フチがないものはより没入的な表現に、フチがあるものはフチに情報を置くことにより写真自体を強調する表現が可能になるのではないかと考える。また、フチに製品タイプ・ロゴを配置したものは27点見られたが、このような配置では3Dにおいてもフチと同じ平面に表示することが予想され、写真以外で3Dである必然性はない。一方で全面を写真とする広告では写真以外の要素にも視差を与えることでより3Dにしかできない表現になるのではないかと考える。 コピー・製品ロゴ・追加製品画像の前後関係について画像上に置くものについては3Dの場合背景と要素の前後関係に注意が必要となることが考えられる。隠れているのに手前にあるという状況は実空間と異なるために不自然な印象となることが考えられるからである。コピーにみられる被写体による遮蔽という前後関係は3Dにおいても奥行き感や臨場感を表現する上で有効になりうるが、同様に視差による前後関係と遮蔽の矛盾に注意する必要があると考える。
3D画像の簡易検証
検証方法
3D画像は2D画像に対してどのような効果があるのか明らかにするため調査を行った。 アンケートは20代男女9名に対して、車を写した3D画像について、片側の画像のみ鑑賞する2D条件と立体視で鑑賞する3D条件で、情報に関する質問(質感、色彩、形状、サイズ、特徴、使用状況)、好感度魅力度に関する質問(美しさを感じる、好感を感じる、魅力的に感じる、興味深い)の計10問について、それぞれ7段階尺度を用いたアンケートを行い、2D条件と3D条件をウィルコクソンの順位符号検定で片側検定(有意水準5%)を行った。なお、立体視の方法は平行法・交差法での鑑賞ができる被検者が少なかったため、ビューワー方式を加えた3条件とした。
簡易検証の結果と考察
簡易検証の結果、形状のみに有意差が認められた。これは視差によって、車のボディという2Dでは伝わりづらいと考えられる形状が認識できたことが要因として考えられる。質感については、9名の被検者のうち7名が3Dの方がより伝わると回答しているものの、有意差には至らなかった。2Dよりも3Dが質感が分かりづらいと回答した被検者は1名で平行法による鑑賞だったが立体視では像がぼやけるとのことだったため、この点が結果に影響している可能性もあり、明瞭に見える条件に限定した上でさらなる調査が必要であると考える。
質感 | 色彩 | 形状 | サイズ | 特徴 | 使用状況 | 美しさを感じる | 好感が持てる | 魅力的に感じる | 興味深い | |||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
有意差 | - | - | * | - | - | - | - | - | - | - | - |
考察
以上の調査から、3D広告でも有効と考えられる2D広告での写真と文字の配置・前後関係、および3D画像は2D画像に比べて形状を伝えるのに優れる可能性が示唆された。簡易検証は画像のみの実験であったが、実際の広告ではそこにコピーなどの言語手掛かりも配置されることとなる。今後はさらに、調査1・2の結果を踏まえて広告作品を制作しその有効性について再度検証が必要であると考える。
今後の展望
ここまでの調査検証をもとに、3D画像を用いた製品広告作品を作成し、2022/10/21-24九州大学大橋キャンパス1号館2階にて展示会を行い、来場者を対象としたアンケートを行う。その後、アンケート結果をまとめ3D画像を用いた広告について有効性を検証する。
脚注
- ↑ IDC Corporate USA , 2022 “AR & VR Headsets Market Share” ,https://www.idc.com/promo/arvr ,(2022.07.10閲覧)
- ↑ 山本ほか, 2014, 画像電子学会 第42回年次大会予稿集 , 画像電子学会
- ↑ 山本ほか, 2014, 画像電子学会 第42回年次大会予稿集 , 画像電子学会
- ↑ 山本ほか, 2014, 画像電子学会 第42回年次大会予稿集 , 画像電子学会
参考文献・参考サイト
- ◯◯◯◯◯(20XX) ◯◯◯◯ ◯◯学会誌 Vol.◯◯
- ◯◯◯◯◯(19xx) ◯◯◯◯ ◯◯図書
- ◯◯◯◯◯(1955) ◯◯◯◯ ◯◯書院
- ◯◯◯◯◯ https://www.example.com (◯年◯月◯日 閲覧)