歴史文化街区における屋外看板の色彩規則に関する研究

提供: JSSD5th2022
2022年10月20日 (木) 09:31時点における顔蕾軒 (トーク | 投稿記録)による版 (今後の展望)
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ー中国・広州市永慶坊のお土産通りを例としてー


顔蕾軒 / 九州大学 統合新領域学府
YAN LEIXUAN / Graduate School of Integrated Frontier Sciences,Kyushu University

Keywords: Historical District, Souvenir Street,Outdoor Signboard, Color Regulations 


Abstract
Yongqing Block has been rebuilt since 2016 by government authorization to restore the appearance of the souvenir street. As it is in the early stage of revitalization of the historical district, the color regulations and management related to outdoor signboards in the street are still inadequate and many violations occur. This study will learn ways to improve the existing color regulations for outdoor signboards, using the good example of Japan as a model. Adjustment of outdoor signboards of stores that do not match the historical district.


背景と目的

 近年、中国では観光業の発展に伴い、一部で住宅用途が主であった歴史的市街地の歴史的建築物(旧住宅)をコンバージョンしたカフェ・飲食店・お土産店・雑貨店などの商業店舗が増え活況を示す。看板は店舗の情報を的確に、そしてスピーディーに伝達し、その地域のイメージアップや活 性化を計る一つの手法として着目された。

 しかし、広州市永慶坊のお土産店通りの看板設置者にとって、経済性あるいは個性化が優先されることも多く、商業転用に伴う建築物の改修や看板設置により外観の変容をとげることがある。商店主らはそれを経験的に知っており、商売に活かしているが、同時に遠方からも良く見えるよう色彩明るいすぎな看板を出すなど、景観上負の行為にも繋がっている。その上、ある看板の色は明るいすぎ、お土産店通りの雰囲気と一致しないため、規則を違反する問題がある。小柳ら[1]屋外広告物の色彩は都市景観の中で支配的であり、色彩調和度及びイメージに大きな影響を与えることが示す。つまり、看板の色彩もお土産店通りの景観に影響をもたらす。

 本研究は以上のことを踏まえて、歴史的文化街区景観保全のための統一されたカラーシステムの重要性を明らかにし、お店の看板の色はどういた表現を行うことが相応しいか検討する。永慶坊のお土産店通りの景観環境を保全し、看板色デザインの指標を導くことを目標としている。この指標により、将来広州市のお土産店通り看板の色改善やデザインにに活用できると考えられる。

研究の方法

①文献調査から、既存看板類型の定義を分析し、中日の歴史文化街区に関する文献の調査や屋外看板の色彩規則を調査する。

②永慶坊へフィールドワークを実施し、店舗の管理者へヒアリング調査する。調査結果を踏まえて、屋外看板における色彩規則に対して店舗の管理者の認知度に関する現状を把握し、色彩規則違反の原因を導く。日本の歴史文化街区へ現地調査を行う。現存看板の写真を撮る、看板において地域の特徴と周辺環境との調和性の状況を確認する。

③分析された結果を基に、歴史文化街区に於ける中国広州市永慶坊の屋外看板の色彩規則を提案する。永慶坊の景観を向上させるため現存色彩提案を調整し、参考事例として、看板事例を調整デザイン案とする。

④調整前後の看板色彩の効果を測定するために、オンラインで改修前後の効果について地域の方々と観光者へアンケートを実施する。更に、専門家へインタビューを行う。



文献調査

図1.規則を受ける屋外看板の種類

看板類型の定義

 屋外看板の種類をよりよく理解するために、中国と日本の屋外看板における規則を調べた。特に京の景観ガイドライン(広告物編)を参照した。 本研究では、主に店舗における「建物や工作に定着させて表示する屋外広告物」に着目している。
「建物等定着型屋外広告物」[2]
<類型>屋上屋外看板・突出型屋外看板(袖看板)・壁面平付け型屋外看板・さらし看板 等

中日屋外看板色彩規則の許可範囲分析

 中日色彩規則の許可範囲を分析すれば、両方異なるところが得られると考えれる。




現地調査

調査概要

図2.永慶坊平面図メインルート

 永慶坊の現状と、規則実施のある街並みの店舗看板実現の間にある違いを把握することを目的とする。2021年10月・12月に永慶坊のお土産通りへ二回目現地調査を実施した。

中国の広州市永慶坊へフィールドワーク

図3.永慶坊店舗種類の記録
サムネイルの作成エラー: 12.5メガピクセルよりも大きな寸法のファイル
図4.永慶坊袖看板の分布
  • 第1回目調査:

 フィールド調査の結果による平面図を作り、永慶坊の空間特性と店舗類型が明らかにした。第一回目の調査では、最も目立つ袖看板に焦点を当て、その分布の場所と素材特性を個別に記録した。
日時:2021年10月5日 晴れ 
時間帯:14:00〜20:00
方法:メジャーとレーザー距離計で看板のサイズを測る、写真と動画撮影

表1.永慶坊看板データ
  • 第2回目調査:

 第1回目の調査の結果、歴史文化街区の統一感を保つためには、袖看板だけに注目するのは不十分である。歩いている際にさまざまな視覚的角度からお店の壁面付け看板を見ることができることがわかった。補足として、壁面付け看板を研究対象に加え、カメラを使ってその素材や色を記録した。
日時:2021年12月1日 曇り
時間帯:16:30〜19:30
方法:カメラで写真を撮る

中国の広州市永慶坊の店舗管理者へヒアリング調査

対象:店舗管理者・スタッフ
日時:2022年7月2日 曇り・雨を降る
時間帯:13:00〜17:30
方法:対面でインタビューする
質問内容:

  • 新しくお店がされる前に広州市屋外看板の規則説明会があるかどうか。
  • 店舗管理者はこの屋外看板規則を理解しているのかどうか。
  • 特に色彩規則を理解したことがあるか。
  • 看板のデザインはどのような理由で決めているのか。

日本の京都三年坂へフィールドワーク

京都の三年坂を参考対象地として選定し、京都で現地調査を行う。
期間:10/3-10/5
時間帯:10:30〜12:30/13:30〜16:50
対象地:三年坂・清水坂・先斗町・花見小路通り
気候:晴れ・曇り
方法:レーザー距離計・カメラ・メジャー・カラーガイド




結果

表2.中日色彩規則に関する比較調査結果

 まず、二つの色彩規則を比較すると、基本的な要件としては、いずれも周辺の建物との色の統一を求めるものであることがわかる。異なるところは、京都は歴史遺産型第1と第2種類地域に対して地域の特別な要件を設定し、色彩の明度や彩度の使用ゾーンを設定しており、広州の色彩規則よりも詳細であることである。また、京都の地方都市計画局は地域観光の振興協会と連携して、良い景観には賞を与える制度を設けているため、他店は参考にすることが可能だ。また、店舗管理者の屋外看板の規則への意識を向上させることも可能だ。

表3.永慶坊の店舗管理者へヒアリング調査の結果

 次は、ヒアリング調査によると、新しいお店がされる前に屋外看板規則上の説明会を開催していない、37店舗の13%の店舗が規則を認識し、そのうちの8%が屋外看板色彩規則を理解している。このように、規則を知っている店舗管理者は少ないのである。さらに、看板製作の理由を探っていくと、多くの店舗がデザイン会社を起用して看板を製作していることがわかった。従って、このように人々が色彩規則を知らない原因も明らかになった。
 最後に、屋外看板色彩規則上の制限と現場の状況を合わせると、永慶坊のお土産通りの規則違反は10店舗で27%を占める。京都では違反する店はほぼなく、祇園町周辺のコンビニエンスストアでも、街並みの統一感を出すために店舗壁面平付け型屋外看板の色彩を調整しているところがある。



考察

 調査から、「色彩規則の周知」「歴史文化街区(歴史街並み)指定色彩規則の制定」「規則以外の最優店舗看板事例表彰式」などを通して、永慶坊の店舗管理者の屋外看板の色彩規則へ意識を向上させることができると考えられる。しかし、街並みの景観を管理し、店舗管理者に規則を守らせることができるのは行政だけであるため、看板色デザインの指標を導くことが困難だど考えた。永慶坊の景観を良くするために、京都の景観を参考に永慶坊の景観を守る大切さを人々に伝える必要があると考えた。

今後の展望

 以上のことを踏まえて、景観を守る大切さを伝えるために、文献調査のデータと現地調査から永慶坊の周辺に存在する歴史的な建築物の色彩を抽出し、このお土産通り似合うの色彩系統を導く違反した店舗看板に応用していくことにする。その後、ビフォー案と調整するのアフター案でアンケートを作成し、来場者や地域住民の方に配布する。歴史的な雰囲気をより味わえるのはどの選択肢か、などの質問が挙げられる。そして、その選択理由のデータを整理し、「アフター」提案が、歴史文化街区の魅力を反映できる効果を得られるかどうかを検証できると考えられる。あるいはアンケート回答者から修正意見があれば、再度「アフター」案を調整することも可能である。

脚注

  1. 小柳武和, 志摩邦雄, 山形耕一, 等. 屋外広告物が都市景観の色彩調和・イメージに与える影響[J]. 都市計画論文集, 1993, 28: 523-528.
  2. 京の景観ガイドライン広告物編 (2015) pp.1−2

参考文献・参考サイト

  • 京の景観ガイドライン広告物編 (2015) pp.2-4~2- 24
  • 庄怡, 山本早里 (2017) 歴史的街並みにおいて許容される屋外広告物の形と配色 日本色彩学会誌 41(3+): 64-67.
  • 市野達也 (2013) 重要伝統的建造物群保存地区のデザインコードに関する研究: 高岡市山町筋の歴史的風景と現代的風景 法政大学大学院紀要 デザイン工学研究科編 (2): 1-6.