学生のメンタルヘルスを目的とした日記アプリケーションの開発
- 名嘉はな / 九州産業大学 芸術学部
- Hana Naka / Kyushu Sangyo University
- 前納聖菜 / 九州産業大学 理工学部
- Seina Maeno / Kyushu Sangyo University
Keywords: application design, mental health
- Abstract
The spread of the new coronavirus infection has had a considerable impact on the life of university students. Due to the self-restraint period, the number of students who are sick has increased. At universities, the Student Counseling Office deals with these concerns, but it is reported that less than 5% of students actually use the Student Counseling Office. Support is an issue. For this reason, in this research, we designed a diary application that is easy for students to use, with the aim of disseminating the existence of the student counseling room and its accurate information, and lowering the threshold for consulting at the student counseling room. We are developing an application that is useful for self-reflection through a diary.
目次
背景と目的
新型コロナウィルス感染症の感染拡大は、大学生の学生生活にも少なくない影響を与えている。自粛期間が増えたことで気を病む学生は少なくない。 大学においては、こうした悩みに対して学生相談室が対応しているが、学生相談室を実際に利用する学生は全体の5%未満との報告もあり、悩みを抱えながら相談に来ない学生に対する支援が課題となっている。[1]こうしたことから、本研究では、学生相談室の存在とその正確な情報の周知を行うことや、学生相談室で相談することの敷居を下げることを目的に、学生が使いやすい日記アプリケーションのデザイン、日記を通して自己の振り返りに役立つアプリケーションの開発を行っている。
研究の方法
現状調査
設計と実装
本アプリケーションでは、生活習慣について把握しやすくするため、睡眠と食事の質問を最初に必ず行うことにした。(図1、図2)つぎに、学生が抱えている悩みと、その項目についての 感情をボタン操作で選択させる。(図3)
日記アプリケージョンでは、ユーザー継続できなくなってしまう場合が多いという問題点がある。 日記を継続して書いてもらいやすくするために、項目をタップしていくだけで選択した内容について、自動的に文章が書かれ、日記の原型が出来上がるようにした。(図4)日記を書いた後に、今の気分を5段階の天気のイラストから選び、その日の気分を記録し、日記を書いた日の気分を後から把握しやすいように記録する。(図5)
睡眠と食事の記録については、過去2週間分のデータを棒グラフで表示し、生活習慣を一目で把握しやすくした。日記を書いた日と書いていない日が一目で分かるよう、日記を書けた日はカレンダーにペンギンの足跡マークがつくようにした。足跡マークが続くとペンギンが歩いているように見えることで、ユーザーの継続意識を高めることを図った。(図6)日付を選択するとその日書いた日記が見れるようになっている。(図7)また、質問に答えた際の項目や感情が多いものを可視化して、カウンセリングの際の話しのきっかけに出来るように、選んだ回数が多い項目を8個表示する機能を実装した。日記を書く際に選んだ項目が多いものが大きく表示され、その人が抱えている悩みについて相談しやすくするようにしている。(図8)
アプリケーションのレイアウトについては、他のアプリケーションを参考にわかりやすく簡単に操作ができるレイアウトを検討した。ユーザーがすぐに見たい画面に飛べるよう、画面下部に四つのボタンを作り、簡単に操作ができるよう、質問ボタン等は全て画面下に配置し、すべての操作を画面下で行えるようにした。日記画面は上部にカレンダーを表示し、日記の継続度がすぐにわかるようにし、その下に睡眠と食事のグラフを表示しユーザーの2週間の状態を把握できるようになっている。睡眠と食事のグラフは、曇った表情のアイコンが1番高い位置にあり、笑顔のアイコンが低い位置にある。また、黄色〜深緑にアイコンの色を設定し色の印象で体調の変化がわかるようにした。
本アプリケーションでは、ユーザーにポジティブで明るい印象を与えることができるオレンジ色をメインカラーとして黄色やベージュ等の暖色を使ってデザインをした。また、メインキャラクターであるペンギンの色を目立たせるためにもペンギンの青色の補色であるオレンジを使った。自然には人を癒す効果があるため、背景は自然をイメージして作った。
アプリケーション全体の画面遷移を図Oに示す。
本アプリケーションの使用方法
本アプリケーションは、学生が何かしらの心身の不調を感じたとき日記を付けることを基本とし、日記の内容に応じて学生相談室の連絡先を提示して相談に行くように促す。 実際に学生相談室に相談に行った際には、カウンセラーは、まず学生の睡眠と食事の状態を把握し、画面を見ながら学生の相談に乗ることが出来る。学生自身も自身の直近2週間の生活習慣や、気になっている出来事や感情について振り返ることが可能である。
考察
本アプリケージョンと他メンタルヘルスを目的としたアプリケーションの相違点
本アプリケーションは学生のメンタルヘルスを目的としている。現在、学生向けのアプリケーションは少なく、学生が使いやすいアプリケーションを開発した。他のメンタルヘルスを目的としたアプリケーションでは、精神疾患の診断をするものが多い。また、日記によるメンタルヘルスを目的としたアプリケーションでは日記を自発的に書かなくてはならなかったり、細かく自身の状態を記録するものが多く、生活が不規則になりやすい学生には継続が難しい。本アプリケーションでは、学生が自身の状態を振り返るとともに気軽に日記が完成されるように設計を行った。メインキャラクターであるペンギンが話しかけてきてそれに答えると日記が出来上がるという仕組みである。ペンギンが話す言葉は難しい言葉を使用せず柔らかい言葉使いになるようにした。
今後追加する機能
設定画面から、答えたくない質問をブロックする機能を作ったり、学生相談室の予約を行えるような機能を追加したいと考えている。また、メインキャラクターをペンギンだけではなく他の動物に変更できるようにしたい。ユーザーの状態に応じてペンギンが声かけをしたり、学生相談室に行けるよう促すような言葉を話す機能を追加したい。
研究分担
本研究ではアプリケーションのプログラミングを九州産業大学 理工学部 前納聖菜、デザインを九州産業大学 芸術学部 名嘉はなが担当した。
まとめ
本研究では、学生のメンタルヘルスを目的とした日記アプリケーションの開発を行った。機能面の開発が終了し、今後は質問の内容やデザイン面の改善が課題である。 専門家の意見を取り入れた質問を作成し、実際に学生相談室で使用して相談の助けになるような機能を追加したい。
脚注
- ↑ コロナ禍における大学生の生活実態調査 学年間の比較検討 .(2022) 藤丸郁代 , 田中耕 , 植松勝子 , 藤川小夜子 , 宮田延子 中部学院大学・中部学院大学短期大学部研究紀要 , No. 23, pp. 113 120
参考文献・参考サイト
- [1] コロナ禍における大学生の生活実態調査 学年間の比較検討 .(2022) 藤丸郁代 , 田中耕 , 植松勝子 , 藤川小夜子 , 宮田延子 中部学院大学・中部学院大学短期大学部研究紀要 , No. 23, pp. 113 120