中高年層におけるTikTok利用要因の研究

提供: JSSD5th2022
2022年10月27日 (木) 00:13時点における李若華 (トーク | 投稿記録)による版 (背景と目的)
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李若華/ 九州大学 統合新領域学府 
Ruohua Li / Kyushu University 


Keywords: Tiktok, users acceptance, elderly users  


Abstract
Since the launch of Tiktok,the number of Tiktok users has rapidly increased and reached a wide range of users. Recently, Tiktok became popular among users over 50 years old. There is a lot of research on the factors of Tiktok acceptance by young users such as teenagers, but there are not many research focus on users over 50. The objective of this research is to investigate the factors of Tiktok acceptance by users over 50. The method of this research is literature study. Through the previous study, this research clarifies current usage situation and existing problems of Tiktok elderly users. The result shows that cognitive needs, self-presentation, social communication,entertainment,emotional needs and economic values are the main factors of Tiktok acceptance by users over 50.



背景と目的

 高速インターネットの普及に伴って、モバイル動画が主流となっている。ショート動画アプリは、ユーザーの隙間時間を活用して情報を得たいというニーズに応えたことから、短期間で急速に成長した。 2016年、北京のBytedanceから、 Tiktok がリリースされて以来、Tiktokは新興のモバイル動画アプリとして、世界中の多くのユーザーを引き寄せている。 2021年12月に中国のKAWOによって発表された「2022中国ソーシャルメディアマーケティングのガイドブック」によると、TikTokの2021年9月のユーザー数は7億9000万人に上っている。ユーザー構成を見ると、男女ユーザーの割合はそれぞれ53%と47%である。リリースされた当初は、若年層がユーザーの中心を占めているというイメージがあったが、実際は46歳以上のユーザーが25%を占めていると報告されている。QuestMobileの調査データによると、2022年には2021年に比べて、50歳以上のユーザー数が、20.6% 増加している。本研究では、Tiktokのユーザー数が増加し、中高年層のユーザーのニーズが高まっている状況を踏まえ、中高年層に焦点を当て、その利用要因について明らかにする。

研究の方法

文献レビュー

中高年層ユーザーの利用に具体的に影響する要因を分析するため、Tiktokなどのショート動画アプリのユーザーの利用要因研究と、中高年層とTiktokなどのショート動画アプリに関する研究は両方で文献による調査を行った。

ショート動画アプリのユーザー利用要因の研究について、 Yu-Liang Feng(2019)らは専門家にインタビューを通して、ユーザーのショート動画アプリの使用要因として、ユーザーの個人的な体験、感情、インターアクション、可用性のいくつかの側面があると判断した。 Bahiyah Omarら(2020)は、利用と満足理論の視点からアンケート調査を行い、 Tiktok ユーザーのアーカイブ、自己表現、ソーシャル・インタラクションがTiktokユーザーの主な利用動機であることが明らかになった。Bossen, C. B., & Kottasz, R. (2020)はアンケート形式で、青少年のtiktok利用に影響を与える要因として、名声の追求、自己表現、アイデンティティの構築があることが分かった。Frăţilă, C. O. (2021)のアンケートによると、ユーザーが tiktok を利用する主な理由は、エンターテインメントのため、新しいインスピレーションを見つけるため、暇つぶしや自己表現などであることが分かった。趙航(2019)は、TAMを活用して、Tiktokユーザーにアンケート調査を実施し、ユーザーの利用意欲に影響する要因として、知覚された有用性、知覚された易用性、娯楽性、社会環境があることを証明した。

中高年層とショート動画アプリに関する研究について、 Ng, R., & Indran, N. (2022)Tiktokの中高年層ユーザーを中心とした質的に分析した結果、中高年層のユーザーがTiktokを積極的に利用し、老衰に関する話題に意識的に参加していることが分かった。Cui zhenqi ら(2021)は、Tiktokの中高年層ユーザーの利用状況や傾向、利用リスクを分析した。Wang Lu (2021)は、利用と満足理論や自己呈示理論を踏まえて、中高年層のTiktok利用ニーズは、主に個人価値の実現、人間関係、経済的価値などがあることが分かった。Tan Xiaoyun(2021) はUTAUTモデルを使って、Tiktokの中高年層ユーザーの利用意欲の影響要因として、努力期待、社会的影響、楽しむ動機、社会的交流の動機があることが分かった。




結果

 まず、中高年層の利用状況を見ると、利用者は増えている傾向がある。50代以上のユーザーが増えているのは偶然ではなく、Tiktokは50代以上のユーザーを対象にした運営モデルを調整しているからだ。Tiktokの操作が簡単で撮影コストが安価なため、自己表現を望む高齢者が動画投稿者になり、一部のユーザーは、ユニークな動画コンテンツを通じて、多くのファンを集め、インフルエンサーになった。


中国では、 50歳あるいは55歳の女性と60歳の男性は退職できるので、中国では50歳以上のTiktokユーザーが退職している状態が多い。また、中高年層の20%が独居または老人ホームで暮らしており、子どもと同居している中高年層は30% 未満という状況がある。

こうした現状を踏まえ、個人価値の実現、情報取得、自己表現、ソーシャルニーズ、娯楽性などの側面から、中高年層の利用要因を分析・整理する。

個人価値の実現

一部の中高年層では退職後、長年働いて培った知識やスキルをショート動画アプリを通して、共有している。ファンからも認められ、支持され、自己価値も実現できる。

情報の取得

ショート動画は文字や絵の形よりも直感的で、短時間で知識やスキルを習得できる。中高年層は退職後、社会から離れることへの不安が生まれやすい。ショート動画アプリを通じて効率的に情報を更新することで、中高年層が最新のトレンドをリアルタイムに把握し、不安を解消することができる。

自己表現

多くの中高年層は、動画を撮って生活を記録し、自分をアピールすることで、共感だけでなく満足感や幸福感を得ることができる。他のソーシャルメディアと比較すると、Tiktokは、中高年層の投稿を支援し、プロモートし、中高年層特有の文化形成を促進する。

ソーシャルニーズ

一人暮らしの中高年層の多くは孤独感を抱きやすく、社交的になったり、グループ環境に溶け込んで満足感を得る必要がある。 多くの中高年層は、ショート動画を家族に共有し、家族とのコミュニケーションを促進できる。 Tiktokのレコメンドを通じて、同じ趣味の友達を見つけることができる。Tiktok はオフラインの友達をつなぎ、新しい友達を作るツールになっています。特にコロナの時代には、不安や孤独感を解消効果がある。

娯楽性

一人暮らしや老人ホームで暮らす中高年層の利用者にとっては、生活が単調で、Tiktokを通じて時間を潰すことが多い。退職後の中高年層でも生活リズムが変わり、短い動画の閲覧や投稿が生活を豊かになることができる。


また、Tiktokは中高年層の交流感や集団感を高めるだけでなく、社会に対する認知を絶えず更新することによって不安を減らすだけでなく、生活の質や幸福を向上させる。Tiktokの動画コンテンツが豊富で、おすすめシステムがあるため、中高年層がティクトックに夢中になるケースが多い。コンテンツの審査が不十分だったり、デマや不実のプロモーションがあったりといった問題点がある。

考察と今後の展望

 今までの文献によって、モバイル動画プラットフォームの全年齢層のユーザーや青少年を主な研究対象にして、中高年層のユーザーを対象にした研究はほとんど行われていない。高齢化社会やショート動画アプリ時代といった社会環境では、中高年層の健全なショートビデオ使用環境の構築を支援するために、より多くのショート動画アプリに関する研究必要がある。Tiktokの中高年層のユーザーが増加していることから、Tiktokに対して、よりパーソナライズされたサービスを提供し、ユーザーのニーズに応える必要がある。

今后の方向性については、現在、ショート動画アプリにおけるユーザー研究は主にアンケートを使った研究方法であり、今後はインデプスインタビューなどの質的研究法を組み合わせて、ユーザーニーズをより深く理解していきたいと考えている。 Tiktokに関する多くの研究において、ユーザーはTiktokを使用する過程で依存する状況があると指摘された。しかし、多くの研究はユーザーの使用動機や使用意欲を注目して、ユーザーがTiktokを過度に使用する現象と使用依存についての研究は少ないので、ユーザーの利用依存についても、引き続き検討する価値がある。

まとめ

 中高年層のTiktok利用要因については、ユーザーがショート動画アプリを利用する主な要因に社会的影響などの外部要因だけでなく、個人的の内部要因もある。中高年層の利用要因は主に、個人価値の実現、情報取得、自己表現、ソーシャルニーズ、娯楽性であることが明らかにした。Tiktok はユーザーの多様なニーズに応えると同時に、ユーザーにある程度の負担を与えており、 Tiktok は継続的な開発プロセスの中で改善すべき余地が多いと思う。今後の研究として、ユーザーのニーズをさらに掘り下げ、Tiktok の発展に向けた提案を行う。



参考文献・参考サイト

Feng, Y. L., Chen, C. C., & Wu, S. M. (2019, November). Evaluation of charm factors of short video user experience using FAHP–A case study of Tik Tok App. In IOP conference series: Materials science and engineering (Vol. 688, No. 5, p. 055068). IOP Publishing.

Bossen, C. B., & Kottasz, R. (2020). Uses and gratifications sought by pre-adolescent and adolescent TikTok consumers. Young consumers.

Frăţilă, C. O. (2021). Motivation of TikTok users. International Journal of Current Science Research and Review, 4(12), 1640-1644.

Ng, R., & Indran, N. (2022). Not Too Old for TikTok: How Older Adults are Reframing Aging. The Gerontologist.

Omar, B., & Dequan, W. (2020). Watch, share or create: The influence of personality traits and user motivation on TikTok mobile video usage.

Zhao Hang. (2019). Study on the influencing factors of short video users' use intention based on TAM model. (Doctoral dissertation, Jilin University).

Wang Lu. (2021) Research of short video APP in the elderly users based on the theory of use and satisfaction.

Tan Xiaoyun(2021)Research on the influencing factors of older users' using behavior of Douyin short video platform.

Gao Lanying & Yi Mengyuan. (2021) . An empirical study on media use and satisfaction of urban elderly users. Media forums, 4(21) , 3.