伝統工芸品に関する動画視聴と購入経験の関連性について
- 大淵和憲 / NPO法人博多織デベロップメントカレッジ
Keywords: Traditional Craft, Questionnaire Survey, Video Viewing, Purchase Experience
目次
調査の背景と概要
様々な動画メディアを通じての動画視聴の機会が増加しており、これは伝統工芸品の分野も無縁ではない。伝統工芸品消費者はどのような動画視聴をしているのだろうか。 発表者は九州産業大学伝統みらい研究センターにおいて、「過去に伝統工芸品を購入したことがあり、伝統工芸品の動画(広告・番組を含む)を視聴したことがある」と答えた全国の10代~80代の男女500名を対象に、「動画」に関するインターネット意識調査を2023年3月に企画・実施した。実査は株式会社クロス・マーケティングに委託した。
伝統工芸品購入に至った動画の長さ:「2分以上」が35.4%で最多
「あなたは、どのくらいの長さの動画を視聴して、伝統工芸品を購入しましたか」(n=127、複数回答)と尋ねたところ、「2分以上」が35.4%で最多、次いで「20秒以上30秒未満」が22.8%、「30秒以上1分未満」が21.3%という回答状況であった。
動画視聴から伝統工芸品購入に至った理由:「動画が印象に残ったから」が54.3%で最多
「あなたが、動画を視聴して、伝統工芸品を購入した理由を教えてください」(n=127、複数回答)と質問したところ、「動画が印象に残ったから」が54.3%、次いで「動画の商品情報が分かりやすかったから」が52.0%、「動画にオリジナリティがあったから」が39.4%という回答となった。
約3分の2が「文章や画像と比較し、動画の方が購買意欲が上がる」と回答
「あなたは、文章や画像と比較し、動画の方が伝統工芸品の購買意欲が上がると思いますか」(n=500)と質問したところ、「とてもそう思う」が20.4%、「ややそう思う」が46.4%となり、これらを合わせた「そう思う」が66.8%と全体の約3分の2を占める結果であった。
考察
本研究では、既存調査であるCandee(2022)の質問項目を用いたが、調査結果を照合すると、一般的な商品と伝統工芸品との間で傾向に差があった。
・動画の長さ:伝統工芸品は「2分以上」が最多であったが、一般的な商品では「10秒以上15秒未満」(37.6%)と短い尺が多くなる(Candee 2022)。伝統工芸品を動画の対象とした時はじっくりと見入ることができ、十分な説明を伴った動画が求められる可能性がある。
・動画視聴し購入した理由:一般的な商品では「動画の商品情報が分かりやすかったから」は19.3%と低い割合にとどまっている(Candee 2022)。伝統工芸品を動画の対象とした場合は、やはり十分な説明を伴う動画が求められる可能性がある。
・動画と購買意欲向上:一般的な商品では「購買意欲が上がると思う(「非常に」+「やや」の合計)」が78.8%に上っている(Candee 2022)。伝統工芸品の消費者においては、動画以外の媒体(文章等)に接することによって購買意欲を高めている層が存在している可能性がある。
以上のような着目点を提示するに至った。
今後、クロス表を用いた統計分析等を通じて、各質問項目同士の関連性や因果関係の分析に結び付けていきたいと考えている。
主な参考文献
- 株式会社 Candee(2022)「Z世代に『動画広告』はどう響く? 動画広告視聴後、約6割が『1日以内』に商品を購入!『印象に残る動画広告』が商品購入の鍵」https://candee.co.jp/news/2022040701 (2023年10月12日閲覧)
- Ferret編集部(2019)「動画と購買行動の関係性、74.6%が商品購入前に動画を視聴」https://ferret-plus.com/13097 (2023年10月12日閲覧)
- MarkeZine編集部(2014)「4人に1人がYouTubeプロモーション動画視聴後に商品購入の経験あり」https://markezine.jp/article/detail/20302 (2023年10月12日閲覧)
- MarkeZine編集部(2021)「動画広告をきっかけに商品購入した経験がある人は2割弱」https://markezine.jp/article/detail/35301 (2023年10月12日閲覧)
- 大淵和憲(2023)「九州の伝統的工芸品の認知・関心度や購入経験を軸とした消費者意識調査分析」『九州産業大学伝統みらい研究センター論集』6号、pp.15-36。