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路上観察 の変更点


#author("2025-10-23T10:39:24+09:00;2025-09-11T16:21:19+09:00","default:inoue.ko","inoue.ko")
#author("2025-10-23T10:40:59+09:00;2025-10-23T10:39:24+09:00","default:inoue.ko","inoue.ko")
*路上観察
超芸術トマソンを探そう
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***はじめに
-路上観察とは、路上に隠れる建物(もしくはその一部)・看板・張り紙など、通常は景観とは見做されないものを観察・鑑賞すること。その中には、今日でも多くの愛好者を惹きつける「超芸術トマソン」も存在します。

-トマソンとは赤瀬川原平らによる芸術上の概念で、破壊と創造を繰り返す都市空間に「純粋な造形物」として存在する「無用の長物」((読売ジャイアンツに在籍したゲーリー・トマソンにちなんで・・というちょっと失礼なネーミング))を意味します。1972年、赤瀬川原平、南伸坊、松田哲夫が、東京・四谷の旅館(祥平館)で「発見」した「四谷階段」がその第1号物件。作家よって意識的に作られたものではなく、それを「発見しカメラに収める人」たちによって鑑賞・共有されている「超芸術」です。

-単なる遺構として放置されているのではなく、やがて消滅する運命にあるにもかかわらず、そこに手が加えられている。「設計」とは反対の「発生」的な造形は__[[ブリコラージュ>Bricolage]]__に通じるものでもあり、路上観察には、ヒトの自然な営みに想いを馳せる楽しみがあります。

-「作る造形」に対して「発見する造形」という思考は、マルセル・デュシャンの __[[Ready Made>GoogleImage: Ready Made Duchamp]]__ の概念にも見られます。
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**路上観察と写真
 カメラによって、見ているつもりで見えていなかったものが
 あらわれてくるのは、じつに気持ちのいいことなのである。
&small(赤瀬川原平,『新・正体不明』,2004, 東京書籍);
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***発見する
-言語というフィルタに汚染された我々の視覚は、物理的な世界を見ていない
-言葉を覚えた大人は、世界を「名付けられたものの集合」として、半自動的に認識している(だから足元に注意しなくても歩くことができる)。
-カメラを持ち歩くようになると(写真に撮ることを意識しはじめると)、視覚はトップダウンからボトムアップへとスタンスを変え、普段気づかなかった現象や違和感を察知するようになる
-その最たるものは「影」「痕跡」「映り込み」などで、ファインダーを覗くと、そうしたものが作り出す造形に目が行くようになる
-絵画に影や映り込みが描かれるようになるのは、写真術の発明以後、印象派の時代からである
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***記録する
-写真の存在意義・・その筆頭にあがるのは昔も今も「記録」である
-変化しつづける世界では、同じ風景に二度と出会うことができない
-都市の記憶も、災害の記憶も、戦争の記憶も・・カメラによって記録されなければ、我々の記憶から徐々に消失してしまう。
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***共有する
-ホモサピエンスは「情報を共有する」という戦略によって生き延びた
-現代人にとっては「排他的所有」が常識であるが、狩猟採集民は獲物をシェアする。「囲い込み」にはじまる近代の物質・エネルギーの排他的所有に端を発した欲望は止まることがない。「共有地」の復興が必要である
-20世紀に書かれた写真論には「共有」の文字がほとんど見当たらないが、現代人は、写真の存在意義の重要な側面として「共有」を意識している。
-狩猟採集民が獲物を独占しないのと同様、現代人は写真をとおして貴重な情報を世界中にシェアしている
-被写体は、写真に撮られ、共有されることによって、その価値が喚起される
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**フィルムカメラの可能性
-路上観察の発案者である赤瀬川原平氏は、大の「中古カメラ好き」でも有名で([[Wikipedia:ライカ同盟]])。デジタルが主流になった後もフィルムカメラを使い続けていた
 答えさえ出ればいいんでしょ、というあの感じがどうもいけない
 選択肢が多く、その都度決断を迫られる。いい気持ちはしない
 後で整えることが可能・・は、自分の考えの範囲内に完璧に閉じる
&small(赤瀬川原平,前掲書);
-失敗と無縁のデジタルカメラには、偶然もなく神も宿らない。発見の多くは偶然の介入によるもので、しかもその発見は「その場で」ではなく「事後に」なされることが多い
-ボトムアップな視覚を活性化するには、写真機自体の重さ・存在感と、光学ファインダー越しに見える投影像が重要である
//-デジタルカメラやスマートフォンのイメージセンサーは、ビデオカメラのそれと同じもので、瞬間を切り取っているというより、動画の一部を切り出しているという方が近い。
参考:__[[Photography/FilmVsDigital]]__
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**参考情報
//-[[写真に関する意識調査(量的データ解析)>https://colab.research.google.com/drive/1NifqRRKrERzKllSzN4vbWZDACSZZVqpt?usp=sharing]]
//-[[写真に関する意識調査(質的データ解析)>https://colab.research.google.com/drive/1Hy4HFNVApQ1n3TRh58uDXyF6JfO1du9T?usp=sharing]]

-[[トマソン物件>https://design.kyusan-u.ac.jp/socialdesign/?%E7%A8%B2%E5%90%89%E3%81%86%E3%81%9F/IdeaNote]]
-[[謎の蛇口(トマソン物件)>https://design.kyusan-u.ac.jp/socialdesign/?%E5%8E%9F%E5%87%9B%E3%80%85%E5%AD%90/IdeaNote]]
-[[自販機の守り神>https://design.kyusan-u.ac.jp/socialdesign/?%E5%A4%A7%E7%80%AC%E6%A2%A8%E4%B9%83%E4%BA%9C/IdeaNote]]
-[[たぶん役割があったポール>https://design.kyusan-u.ac.jp/socialdesign/?%E7%94%B0%E4%BB%A3%E5%A4%95%E5%8A%A0%E9%87%8C/IdeaNote]]
-[[行き先のない梯子>https://design.kyusan-u.ac.jp/socialdesign/?%E7%B4%8D%E5%AF%8C%E6%97%A9%E5%B8%8C/IdeaNote]]

//-[[道端ミュージアム>https://design.kyusan-u.ac.jp/socialdesign/?%E5%8F%A4%E8%B3%80%E6%97%AD/%E5%8D%92%E6%A5%AD%E7%A0%94%E7%A9%B6II]]

-[[演習/デュシャンのテーブル]]
--[[ウサギのかくれんぼ>https://design.kyusan-u.ac.jp/socialdesign/?%E5%B1%B1%E6%9C%AC%E6%A1%9C%E9%9B%85/SD%E6%BC%94%E7%BF%92]]
--[[くりかえし>https://design.kyusan-u.ac.jp/socialdesign/?%E6%B5%85%E5%B7%9D%E3%81%B2%E3%82%88%E3%82%8A/IdeaNote]]

-[[WORKSHOP|石 × ◯>https://design.kyusan-u.ac.jp/socialdesign/?%E3%82%BD%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%83%AB%E3%83%87%E3%82%B6%E3%82%A4%E3%83%B3%E6%BC%94%E7%BF%92/WS20230629]]
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**APPENDIX
***参考文献等
-[[GoogleImage:路上観察 トマソン]]

-[[トマソン>Wikipedia:トマソン]] 1972 ~
-[[路上観察学会>Wikipedia:路上観察学会]] 1986 ~
-[[路上観察学入門>Amazon:路上観察学入門]] 1986
赤瀬川原平、松田哲夫、南伸坊、飯村昭彦、鈴木剛、田中ちひろ、森伸之
藤森照信、林丈二、 一木努、荒俣宏、四方田犬彦、とり・みき、杉浦日向子
 われらが路上観察は、芸術と博物学を懐かしい故郷とし、
 考現学を母として生まれ、長ずるにおよび専門分化学問を離れ、
 消費帝国と闘い、また血を分けた兄弟の空間派とも別れ、
 気がつくと、見知らぬ場所で一人寂しく震えていた。
 ここは時代の先っちょなのか崖っぷちなのか、一体どこなんだ。
1986年 藤森照信 

-[[考現学>Wikipedia:考現学]](今和次郎)

-[[ライカ同盟>Wikipedia:ライカ同盟]]
--赤瀬川原平
--高梨豊
--秋山祐徳太子

-偽ライカ同盟
--片岡義男(会長) [[撮って、と被写体が囁く>https://www.amazon.co.jp/%E6%92%AE%E3%81%A3%E3%81%A6%E3%80%81%E3%81%A8%E8%A2%AB%E5%86%99%E4%BD%93%E3%81%8C%E5%9B%81%E3%81%8F-%E5%B0%8F%E5%AD%A6%E9%A4%A8%E6%96%87%E5%BA%AB-%E7%89%87%E5%B2%A1-%E7%BE%A9%E7%94%B7/dp/4094161414/ref=sr_1_1?dib=eyJ2IjoiMSJ9.x3LwTxSChWvIm_YBz1ASFA.Scek-KSQed-6EdYwvqddo1_97h2lvE8H08j1oxgumCY&dib_tag=se&keywords=%E6%92%AE%E3%81%A3%E3%81%A6%E3%80%81%E3%81%A8%E8%A2%AB%E5%86%99%E4%BD%93%E3%81%8C%E5%9B%81%E3%81%8F&qid=1756096178&sr=8-1]]
--田中長徳(特攻隊長)
--坂崎幸之助(広報宣伝部代表代行)
--東儀秀樹(偽ライカ同盟青年部代表)
--なぎら健壱
--福田和也
--黒田慶樹

-写真は「狩猟・採集」に通じる。
写真にも Shooting という言葉を使います。
 写真を収集するということは世界を収集することである
 カメラは銃を理想化したものである(そこには負の側面もある)
&small(スーザン・ソンタグ『写真論』 );
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***参考作品等
//-[[写真に関する意識調査(量的データ解析)>https://colab.research.google.com/drive/1NifqRRKrERzKllSzN4vbWZDACSZZVqpt?usp=sharing]]
//-[[写真に関する意識調査(質的データ解析)>https://colab.research.google.com/drive/1Hy4HFNVApQ1n3TRh58uDXyF6JfO1du9T?usp=sharing]]

-[[トマソン物件>https://design.kyusan-u.ac.jp/socialdesign/?%E7%A8%B2%E5%90%89%E3%81%86%E3%81%9F/IdeaNote]]
-[[謎の蛇口(トマソン物件)>https://design.kyusan-u.ac.jp/socialdesign/?%E5%8E%9F%E5%87%9B%E3%80%85%E5%AD%90/IdeaNote]]
-[[自販機の守り神>https://design.kyusan-u.ac.jp/socialdesign/?%E5%A4%A7%E7%80%AC%E6%A2%A8%E4%B9%83%E4%BA%9C/IdeaNote]]
-[[たぶん役割があったポール>https://design.kyusan-u.ac.jp/socialdesign/?%E7%94%B0%E4%BB%A3%E5%A4%95%E5%8A%A0%E9%87%8C/IdeaNote]]
-[[行き先のない梯子>https://design.kyusan-u.ac.jp/socialdesign/?%E7%B4%8D%E5%AF%8C%E6%97%A9%E5%B8%8C/IdeaNote]]

//-[[道端ミュージアム>https://design.kyusan-u.ac.jp/socialdesign/?%E5%8F%A4%E8%B3%80%E6%97%AD/%E5%8D%92%E6%A5%AD%E7%A0%94%E7%A9%B6II]]

-[[演習/デュシャンのテーブル]]
--[[ウサギのかくれんぼ>https://design.kyusan-u.ac.jp/socialdesign/?%E5%B1%B1%E6%9C%AC%E6%A1%9C%E9%9B%85/SD%E6%BC%94%E7%BF%92]]
--[[くりかえし>https://design.kyusan-u.ac.jp/socialdesign/?%E6%B5%85%E5%B7%9D%E3%81%B2%E3%82%88%E3%82%8A/IdeaNote]]

-[[WORKSHOP|石 × ◯>https://design.kyusan-u.ac.jp/socialdesign/?%E3%82%BD%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%83%AB%E3%83%87%E3%82%B6%E3%82%A4%E3%83%B3%E6%BC%94%E7%BF%92/WS20230629]]
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