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Physics の変更点


#author("2024-08-22T09:46:55+09:00;2023-04-06T11:17:46+09:00","default:inoue.ko","inoue.ko")
*情報学と物理学
情報とは何かではなく、情報とは「何ではないか」を考える
#author("2024-08-22T09:53:16+09:00;2023-04-06T11:17:46+09:00","default:inoue.ko","inoue.ko")
*物理学
Physics
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物理学は文字どおり「物」を扱う学問で、我々の身の回りにある大半のものは、物理の原理・法則に従うものですが、「情報」は「物とは異なる」という点で、それを扱うには別の思考が必要になります。
(書きかけ・未整理ページです)
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**情報学|Informatics
情報という概念は、物質・エネルギーと比較すれば「最近」登場した概念です。
情報デザインについて考えるときは、まずその言葉の使い方を整理する必要があります。
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***情報科学的定義と社会科学的定義
情報とは何か?を語る際は、それが工学的な文脈なのか、社会学的な文脈なのかによって、話は大きく変わります。

-情報科学における情報
物質・エネルギー・情報といった文脈で、情報量を数学的に定義したもので、コンピュータやネットワーク技術の基盤概念となっています。
> ページを独立させました __[[InformationTheory]]__

-社会科学における情報
私たちが社会的な意味で「情報」という言葉を使うときは、数学的な情報量というより、その意味内容が問題になります。以下、詳しく考えてみます。
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***情報の4つのレベル
社会学者の吉田民人氏は、「情報・情報処理・情報化社会」の中で、情報というものに4つのレベルを設定しています。

-パターン(最広義):物質・エネルギーがつくりだすパターン(風紋)
-生命情報(広義) :生命現象に関わるパターン(DNA、動物の足跡)
-人間情報(狭義) :人間社会における恣意的記号(言語)がもたらす意味
 このレベルの情報は、認知・指令・評価などの機能を持ちます。
-機械情報(最狭義):伝達・記憶される記号の形式・内容(データ)

社会科学的な意味での「情報」は、3.の「人間情報」に該当します。
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***生命における情報
生命・生物現象において、情報は以下の3つに分類できます。

-1. 遺伝情報:生物をかたちづくる設計図
-2. 代謝情報:生物の体内にあって生体維持に関わるホルモン
-3. ''神経情報'':神経回路を伝わる電気的パルス

私たちの心的なシステムは、代謝情報(身体的な気分)の影響を受けつつ、神経情報によって動的に秩序化されたもの・・と言えるでしょう。
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(書きかけです)
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**物理学|Physics
物理学とは、物質の性質やふる舞い、物質間に働く作用について、普遍的な原理・法則を実験・観察といった経験的事実にもとづいて探求する学問分野です。

物質をできるだけ単純な要素に分割し、要素間に働く作用を数式モデル化することで、素粒子から宇宙まで、自然現象を統一的に説明しようと、その研究が続けられています。一般に、唯物論的、要素還元主義的な思考を採用します。

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***物理学の原理・法則・定理
-原理|Principle
物理学の理論の基礎となる単純で普遍的なもの。経験や実験を元に明らかな事実として認められた性質のことで、なぜそうなるかは証明のしようがない。その意味では、仮説・仮定・前提とも言える。例えば「力が働いていない物体は静止、又は等速直線運動する」はそうとしか言いようのない原理。
--アルキメデスの原理、テコの原理、パスカルの原理・・・
--フェルマーの原理(光は常に最短距離を選ぶ)
--光速不変の原理(光はいかなる系から見ても光速で運動する。光速は自然界で実現しうる最高速度。特殊相対性理論が要請する原理)
//--等価原理(重力質量と慣性質量は同じ)
//--不確定性原理(完全に静止した物体はない)

-法則|Law
原理から導かれるもので、一般に数式モデルとして表現されます。直接的に証明できない点で原理と同様ですが、実験・観察によって検証することができます。ただ、必ずしも「原理が先で法則が後」ということではなく、実験によって検証された法則によって、新たな原理が見出されたり、既知の原理が修正される場合もあります。

-定理|Theorem
法則から導かれるもの。法則の正しさを前提として「証明」されます。

-参考:数学(形式科学)の用語
--定義:概念・意味が他と区別できるように恣意的に定めたもの。
--公理:証明はできないけれど、正しいと仮定して論理の出発点におくもの
--定理:定義や公理から証明することができるもの
//--参考:なぜ 1+1 = 2 になるのか?
//---2という数字をそのように定義したから(定義的説明)
//---そのように仮定した数字を2と置いたから(公理的説明)
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***理論物理学と実験物理学
-理論物理学は、文字通り理論的な模型や理論的な仮定(主に数学的な仮定)を基に理論を構築し、既知の自然現象や実験的事実などを説明したり、未知の現象の予想したりする分野です。基本的に「紙と鉛筆」があれば楽しめる研究ですが、現在ではコンピュータによるシミュレーション(計算物理学)も重要な研究手段の一つとなっています。

-一方、実験物理学は、特定の物理現象に関して物質の振る舞いを観測、測定して、現象に特有な物理量を抽出して、法則を発見しようとする研究分野です。素粒子物理学や宇宙物理学など、未探索領域に関する研究と、すでに観測されている事柄の再現性を検証したり、さらに詳細な観測を行う既知領域の研究とに大別されます。
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***古典物理学と量子物理学
量子物理学の登場後、現象を扱う「文化の違い」から、量子物理学を除く従来のジャンルは、総括して「古典物理」と呼ばれています((古典物理と現代物理学という日常会話的な文脈では、現代物理でホットな相対論と量子論を除くものを古典に位置づけますが、物理の世界では「古典」は「量子ではない」という意味で使われるようです。))。

-古典物理学は、量子力学が出現する以前のニュートン力学、電磁気学、特殊相対性理論、一般相対性理論、熱力学、統計力学、カオス理論などを含む領域です。例えば、ニュートン力学は、機械の動作や天体の運動など、巨視的な物質の運動を記述できるもので、私たちの日常目に見える現象の説明や工学的な応用に利用されています。ただし、運動が光速に近くなる場合には特殊相対性理論を用いた数式に修正することによって、より一般な形式が与えられます(例えば、人工衛星に積み込む時計は、(地上の時計から見て)進みが若干遅くなることを考慮して設計されています)。

-量子物理学は、主に分子や原子あるいはそれを構成する電子などを対象として、その微視的な物理現象を記述する分野です。素粒子物理学、核物理学などを含みます。

-古典物理学と量子物理学の特徴まとめ
--古典物理学
---連続的、因果・決定論的運動記述(神はサイコロを振らない)
---基礎方程式:1) 運動方程式、 2) 光速度不変の原理
--量子物理学
---粒子性と波動性の相補性
---離散的・確率論的な運動記述
---基礎方程式:シュレディンガー方程式

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***相対論と量子論
現代物理学では、相対論と量子論が2大巨塔となっています。

-''相対論''
--A.アインシュタインが提唱した理論。
--''特殊相対性理論''
---光速度不変の原理:光速は(観測者から見て)常に一定
---相対性原理:全ての慣性系座標系は等価である。慣性系(等速直線運動をしている全ての物体)で物理法則は保たれる
---時間と空間は別々のものではなく「時刻」は観測者ごとに異なる(観測者から見ると移動する系に置かれた時計は遅れる)
--''一般相対性理論''
---一般相対性原理:全ての座標系での物理法則は不変(慣性系以外、つまり加速度運動している物体にも適用できる。重力の影響も考慮する)
---等価原理:慣性質量と重力質量は等価
// 慣性質量とは 𝐹=𝑚𝑎 という運動方程式の𝑚のこと
// 物体の動かしにくさの質量
// 重力質量とは 𝐹 = 𝐺* (𝑚1・𝑚2) /𝑟^2  という万有引力の式の𝑚1,𝑚2のこと
// 重力質量が大きいと大きな引力が生じる
// これらの質量は概念は異なるが同一のものとしているのが等価原理
---質量をもつ物体の重力により周りの時空にひずみが生じる。宇宙の膨張、ブラックホールの存在、重力波の存在を予言

-''量子論''
--''量子力学''
---原子・電子・陽子・中性子など、微小領域の物理現象を扱う力学
---量子は「粒子」と「波動」の二重性をもっている
--''量子場理論''
---空間の各点での場や粒子数を演算子として、その変化を説明する理論
---素粒子の性質(生成・消滅含め)、相互作用が統一的に記述される。
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***ホログラフィック原理
相対論と量子論とを統一する理論
[[Wikipedia:ホログラフィック原理]]

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***要素と全体
ニュートンの力学、マクスウエル電磁気学、アインシュタインの相対性理論、ハイゼンベルク・シュレジンガー・ディラックの量子力学・・、成功した理論はいずれも、物事を基本的な「要素」に分解して、その性質、構造、運動を説明したもので、物理学は基本的には「要素還元主義的」な思考を好むといえます。

一方で「総合的」な思考を必要とする分野では、現在でも現象の記述や予測が難しいとされます。例えば、気象・気候・生態系・地震、また生体で生じている身体的・精神的な現象などは、要素に分解しても全体のふるまいはわからない・・という難しさがあります。いわゆる「[[複雑系>ComplexSystem]]」・・
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***自然界における4つの力(相互作用)
-相対論が扱う力
--重力:重力子(未発見)
-量子論が扱う力
--電磁気力:光子
--弱い力:Wボソン と Zボソン
--強い力:グルーオン
&small(複数の陽子が反発しようとする電磁気力よりも強く働き、原子核がバラバラになってしまうのを防いでいます。);
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***強い力について
-強い力は電磁気の約137倍、弱い相互作用の100万倍、重力の10^38倍
-原子核の文脈では、同じ強い相互作用(核子内のクォークを結合する力)が陽子と中性子を結合させて原子核を形成している。この能力を核力(または「強い残留力」)と呼ぶ。

-核エネルギーの膨大な破壊力は、地球の論理とはなじまない
--地球上で起こっている生命現象や人間の活動は、電気力で原子がついたりはなれたりする化学反応。化学反応は、3000度以下で進むもので、私たちはこれを利用して様々なものを作っている。
--原子力の利用とは、3000度以下の技術で、その10000倍も高温の3000万度相当の核反応を制御しようというもの・・根本的に無理がある。
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***統一理論
-大統一理論(GUT:Grand Unified Theory)
重力を除く3つの力を統一する理論。いくつかのモデルが提案されているが、現状では未完成
-超大統一理論(万物の理論:Theory of Everything)
重力を含めた4つの力を統一する理論((4つの力は、宇宙が生まれたばかりの頃は、同じひとつの力だったと考えられています))。言い換えれば、相対論と量子論を統一する理論。現在、その可能性を秘めている理論として[[超弦理論>https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%B6%85%E5%BC%A6%E7%90%86%E8%AB%96]]があります。
// 素粒子を振動する弦と考える
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***複雑系の物理学
古典物理学、量子物理学とは位相の異なる分野として「複雑系の物理学」があります。複雑系(Complex System)は、決定論的な方程式で記述できるにもかかわらず、そのふるまいの予測が極めて困難な系で、例えば気象・地震といった現象がそれにあたります。複雑系の数理は、コンピュータによるシミュレーションと相まって 1970年台から、物理、生命、心理、社会、経済等、多様な分野における研究手法として用いられるようになりました。
> __[[ComplexSystem]]__
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(書きかけです)
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**APPENDIX

***宇宙・物質・反物質
-宇宙とは時空間のこと
--「宇」:どこまでも続く空間
--「宙」:どこまでも続く時間

-何もないはずの真空から、物質と反物質が生成される
--これは、カード(電場)を使えば、何もないところに「現金」(物質)と「借用書」(反物質)が出てくるのと同じ。借金を返せば、「現金」と「借用書」は対消滅する
--1932年、アメリカの物理学者のアンダーソンは、宇宙から降りそそぐ宇宙線の中に、プラスの電荷を持った粒子を発見し「陽電子」 (positron) と命名(陽電子は、現在では「ポジトロン断層法」を用いたがんの発見などに利用)。
--陽電子の発見によって、真空に対する考え方は大きく変わった。真空は、何も存在しない「無」の空間ではなくて、そこでは粒子と反粒子が対生成と対消滅を繰り返している。この状態を「真空のゆらぎ」と呼ぶ。

-宇宙の創生前後で真空の「相転移」が起こったというシナリオ
氷・水・水蒸気のような相転移は物理現象としてはよくあること。エネルギーのゼロ点が高かったはじめの真空状態から、ゼロ点が下がって物質と反物質が姿を表す・・・
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***フラクタル
-我々には実数の世界しか見えていないが、虚数の存在を仮定しなければ記述できないもの(2次方程式の解の公式は虚数の存在を仮定する必要がある)あるし、実際に虚数を用いることで立ち現れる形(マンデルブロ集合)がある。我々は、虚数で表される時間や空間を感知することはできず、それはあったとしても我々には「無」なのである。

-ある物理量が F(X)〜X^n というベキ関数で表されるとき、その現象には特徴的なサイズがなく、自己相似性がある。以下のように、ある現象が自己相似的でベキ関数で表現できる場合を「フラクタル」と呼ぶ。ベキの値 n が非整数となる場合も含む「いびつな」という意味の造語である。
--例えば、岩と砂。岩石のサイズを X として、そのサイズの岩石の数を N(X)とした場合、N(X)〜X^n(この場合 n はマイナスの値)と表すことができる。山のような巨大なものの数、一般的な岩石の数、砂の数・・これらはサイズをXとしたベキ関数で表すことができる。砂は拡大すると岩と同じような形をしていて、これらはいずれも、特徴的なサイズをもたない自己相似形といえる。
--木の幹と枝、葉にも同様の関係がある
--ガラスを割ったときの破片のサイズと数にも同様の関係がある
--地震の規模と発生回数にも同様の関係がある

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***対称性の破れ
-宇宙に諸々の構造が作られてきた過程は、一様な分布状態から対称性が破れて、物質の非一様な塊が生じてきた過程、つまり対称性の高い(区別がつかない)状態から、対称性が破れた(区別がついた)状態へと遷移した過程といえる。対称性の破れこそが、世界を造り出したといえる。世界の創造主は、ひたすら対称性を壊す作業に従事したのだ。

 対称な原理的世界から、非対称な現実世界へ
-自然科学の研究、ひいては学問とは、すべて「対称性の破れ」を追求していると言えなくもない。我々のものづくりは、対称性の高い単純で基本的な要素から、対称性の低い複雑で多様な意味を生み出す過程といえる。

池内了「物理学」2019 より抽出

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***相対性理論における時空
超弦理論の登場によって、相対論の時空概念は前世代の話になりましたが・・

ニュートンは、時間と時空は絶対的なもの(絶対時間と絶対空間)と定義して、物理現象を記述しました。私たちの世界観としては違和感のないものです。
 時間とは、その本質において外界とは何ら関係することなく一様に流れ、
 これを持続とよぶことのできるもの。
 空間とは、その本質において外界とは何ら関係することなく
 常に均質であり揺らがないもの。
&small(プリンキピア(自然哲学の数学的原理,1687 )におけるニュートンの定義 );

しかし、アインシュタインの特殊相対性理論(1905)の登場によって、この世界観は一変しました。切り離されていた空間と時間の概念は、どちらも観測者の運動状態に依存するとして「時空」の概念が導入されました。
-2人の観測者が有限の速度差をもって互いに運動(相対運動)するとき、一方の観測者から観測したもう一方の観測者の時計の時刻には遅れが生じる。この観測のずれは相対的であり、もう後者から前者の時計にも遅れを認めることができる。2人の観測者は等価であり、双方が双方の時計に遅れが生じていると観測できる。
-相対運動する物体同士は互いに相手からは縮んで見える(ローレンツ収縮)
-エネルギーと質量は可換であり、観測者・観測対象の運動状態によって(座標変換によって)双方は相互に変換される
-速度の合成則は非線形接続となる。例えば、観測者に対して光速の 60%で動く宇宙船から、(宇宙船からみて)光速の 60%で物体を進行方向に射出しても、観測者から見た宇宙船からの射出速度は光速の 120%にはならない
-運動する物体は高速になるほど加速しづらくなり、光速に達することはない。

これらは、私たちの日常の感覚では理解しにくい現象ですが、ニュートン力学が矛盾をきたす光速に近い速度で運動する物体の力学的挙動の実験事実によく整合するもので、現代物理学ではこの考え方は標準的なものとして受け入れられています。 
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***参考文献
-吉田民人, 自己組織性の情報科学, 1990, 新曜社
-西垣通, こころの情報学, 1999, ちくま新書
-川野洋, 芸術・記号・情報, 1982, 勁草書房

-竹内均, 物理学の歴史, 1987, 講談社学術文庫
-池内了, 物理学と神, 2019, 講談社学術文庫
-池内了, 物理学の原理と法則, 2021, 講談社学術文庫

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