#author("2023-05-02T20:42:23+09:00;2023-04-27T19:34:58+09:00","default:inoue.ko","inoue.ko") *デザインの領域 #author("2023-05-02T21:10:31+09:00;2023-04-27T19:34:58+09:00","default:inoue.ko","inoue.ko") *デザインのフィールド [[SocialDesign]]|Field of Design ~ この国では「デザイン」が美術の教科書の一部に掲載されいるせいか、デザインというものを「商業美術」「図案」「外観を美しくすること」と考えている方が多いようです。しかし、大学でデザインを専門的に学びはじめると、それらは「デザイン」の表層部分に過ぎないことに気づきます。 -Designという語を辞書でひくと、以下のように書かれています。 ''設計''、''計画''、立案、企て、予定、図案・・・ -日本デザイン学会における会員アンケート(1959)の回答では・・ 「Designを日本語にすると?」 > 「計画・設計」が多数 つまり、学問的な意味での「デザイン」は、半世紀以上前から「計画・設計」という意味で捉えられていた・・ということです。 //&small(計画(上流)+設計(中流)+製造(下流)); ~ ~ **デザインの三角構造 #image("images/triangle.png") ED: <人間と技術文明>-より良い生活の設計を PD: <人間と自然>-より豊かな自然の利用を CD: <人間と人間>-より深い相互の理解を 私たちの身の回りにあるモノ・コトの大半は、誰かが計画・設計したものです。つまり、私たちを取り巻くすべてのものがデザインの対象領域であると言えます。[[川添登>Google:川添登 デザインの三角構造]] は、それらを「人間・社会・自然」といったキーワードとともに図解しました。「◯◯デザイン」と名のつくデザインの領域は多岐にわたるもので、その分類方法も「これが正解」と言えるものがあるわけではありませんが、自分の立ち位置を考える意味でも、自分なりの「デザインの領域図」を描いてみることをおすすめします。 ''参考書籍'':[[川添登, デザインとは何か, 1971, 角川選書>Google:川添登 デザインとは何か]] ~ ***Environment Design 「環境・空間」のデザイン 環境、景観、造園、都市計画、建築、インテリア、照明、ディスプレイ &size(16){[[Landscape>GoogleImage: Landscape Design]] [[Architecture>GoogleImage:Mies van der Rohe Architektur]] [[Interior>GoogleImage: Interior Design]] [[DisplayDesign>GoogleImage: Display Design]]}; ~ ***Product Design 「もの」のデザイン 家電、家具、楽器、食器、クラフト、工芸、雑貨、ファッション、車、バイク &size(16){[[Products>GoogleImage: braun]] [[Instruments>GoogleImage:Fender Stratocaster]] [[Craft>GoogleImage:白山陶器]] [[Package>GoogleImage: Package Design]] [[Fashion>GoogleImage: Fashion]]}; ~ ***Communication Design 「視聴覚情報」のデザイン サイン、グラフィックス、Web、映像、ゲーム、音楽、音声、テキスト &size(16){[[Infographics>GoogleImage:infographics]] [[Map>GoogleImage:beck london map]] [[GraphicDesign>GoogleImage: joseph muller brockmann]] [[WebDesign>GoogleImage: Website Design]] [[GameDesign>GoogleImage: Game Design]]}; ~ ~ **デザインの「半径」 ***半径10m以内の「自分ゴト」 ソーシャルデザインに関する文章の中によく登場するフレーズとして「自分ゴトからはじめましょう」というものがあります。半径10mとは、ほぼ住居の敷地の範囲です。 社会を変えよう、世界を変えよう・・と本腰を入れる前に、自分自身にとって「面白いこと」「楽しいこと」「シアワセなこと」とは何なのか・・。デザインを、もっと身近な行為として考えてみましょう。 自分の部屋を模様替えする・・といった誰もが日常的に行っている行為にも、そこには「必要なものに手が届きやすいか?」、「机の上に入る光の方向は適正か?」など、快適な暮らしのための様々な配慮がなされるものです。それはまさに「デザイン行為の原点」といえるものです。 ~ ***半径100m の「集落(ご近所)」 モノの貸し借り・共有、何かあればすぐに集まることができる距離感。それが「集落(ご近所)」です。[[GoogleImage:集落]] 都会の暮らしでは、それが実体として見えにくくなっていますが、歴史を遡れば明らかなように、人は、このサイズに住居を集合させ、またその中心・焦点・要にあたる場所に「聖域(神社)」を置きました。 意識したことがない方が多いかもしれませんが、神社の数はコンビニの数と同等か、それ以上です。神社は「非日常」の空間であり、かつ「非日常」の時間(祝祭)に関わります。それは、日常と非日常を対峙させることによって、私たちの暮らしを「活性化」させる、社会的な「装置」のひとつだと言えます。 異質なものが存在しないフラットな秩序からは、社会の動的な活性化は生じません。「動き」は緊張感・不安定から生まれるのです。 神域を失った現代の都市空間においても、私たちの身の回りには、それに代わる「神秘的なもの」・「異質なもの」が、様々なかたちで「装置」として組み込まれています。 ~ ***半径10km の「地域」 半径10km、時速4kmの徒歩だと2時間半です。つまり、人間が1日のうちに行って戻ることができる距離が、ほぼ半径10kmです。私たちはこのくらいのエリアを「地域」と呼んでいます。 車や公共交通機関で移動する私たち現代人には、この距離感が失われていますが、ヒトが大型哺乳類の一種に過ぎない以上、適正な行動半径というものは自ずと定まります。自宅から半径10kmの円を地図上に描いて、その範囲を確認してみて下さい。 -付記:日本語における「ら(ま)」は、場(空間)を意味する言葉? むら(村)、のら(野良)、はら(原)、やま(山)、そら(空) [[Google:ムラとノラとハラ]] ~ ~ **賢者の言葉 以下、デザインについて考えるヒントとなるいくつかの言葉を紹介します。あくまでも私の好きな言葉(個人の感想)です。みなさん自身も学生時代に多くの本や記事を読んで、自分の好きなフレーズを見つけて下さい。 -人は誰でもデザイナーである。ほとんどどんなときでも、われわれのすることはすべてデザインだ。デザインは人間の活動の基礎だからである。ある行為を、望ましい予知できる目標へ向けて計画し、整えるということが、デザインのプロセスの本質である。 -- V. パパネック|1971「生き延びるためのデザイン」 -橋をデザインするのではなく、川をどう渡るかをデザインするのだ -- PHILIPSのデザイン部門に掲げられた言葉 -最も巧みな蜜蜂と最も無能な建築家の違いは、建築家が設計図にもとづいて仕事をすることである。 -- P.J.ウイルソン|1983 「人間−約束するサル」 -Design is not just what it looks like and feels like. Design is how it works. デザインとは、単にどのように見えるか、どのように感じるかということではない。どう機能するかだ。 -- Steven Paul "Steve" Jobs -Think Globally, Act Locally. 地球規模で考え、地域で活動する・・・ -Less is more, more is less 少ないことは、より豊かなこと。多すぎることは、実質が少なくなること Mies van der Rohe|1886~1969 -Small is Beautiful 科学・技術の方法や道具は、安くてほとんどだれでも手に入れられ、小さな規模で応用でき、人間の創造力を発揮させるようなものでなくてはならない。 -- E.F.Schumacher|1973「Small is beautiful」 ~ ~ ~