存在と科学
私たちが認知する3つの「存在」レベル
CONTENTS
心理的な存在|個人の幻想
その人にのみ認知される「意味」のあるモノ・コト(当人以外の人には「無」)
社会的には共有されていない存在
個人的な記憶、個人的な「言葉」によって喚起される存在
- 個人の思考・妄想・幻覚・夢
- 錯覚による視覚像
- 幽霊・UFO ← 共有されれば、社会的な存在にもなります
社会的な存在|共同幻想
複数の人に共通に認知される「意味」のあるモノ・コト
その社会で共有された「言葉」が喚起する存在
言葉をもたない他の生物にとっては無意味な存在
- 精霊・神・仏
- 基本的に見えませんが、多くの社会でその存在が措定されています。
- お天道さまが見てますよ・・という言葉が人間社会の秩序を統制できるという点で、社会的には「意味」のある存在です。
- 法・ルール
- 多くの社会に「文書」として目に見えるかたちで存在しています。
- 人の行動に制約をかけるという点で、社会的には「意味」のある存在です。
- 社会が崩壊すればその効果は無に帰するという存在です
- 例えば土地の境界は、他の生物にとっては無意味な存在です。
- カネ
- 見た目には紙や金属といった物理的な存在に憑依していますが、電子的なデータとしても取引できてしまう抽象的な存在です。
- 経済が破綻すればその「意味」が失われる・・という点で、物理的な存在としての抽象概念とは異なります。
- 他の生物にとってカネは無意味な存在です。
物理的な存在
科学的な分析、操作の対象となるモノ・コト
社会や経済が破綻しても、その意味・効果が変わることのない存在
言葉によって喚起された概念も含んでいるが(例えば「引力」など)、
言葉を持たない他の生物にも、明らかに意味あるものとして存在している
- 物質・事物・・具体的な実体
誰にでも見えたり、聞こえたり、触れたりすることができる存在。
言葉を持たない他の生物にとっても、操作の対象となる存在 - 電圧・温度・・抽象的な概念
これらの概念は、実態として目に見えるものではありませんが、尺度を与えて数量的に分析・操作することが可能です。
言葉を持たない他の生物は、これらを操作することはできませんが、それに近づく、逃げるといった、反応をします。
APPENDIX
存在の認知に関わる「意味」
私たちの視覚や聴覚は、対象を捉えるために「意味」を利用します。「意味」があるものとしてそれを認知する方が情報処理効率が上がるからです。
ネッカーキューブは、紙の上の2次元の線の集合ですが、私たちは、それを立方体として認知します。バラバラな線の集合として分解すると、情報量があがってしまう。私たちの脳は、最も少ない情報量でそれを捉えるように、存在を対象化するのです*1。
立方体をジャスト斜め45度から見た形として2次元に描かれた場合は、立方体という認知と「正三角形が6つ集合した形」という認知、いずれも成立します。簡単に言語化できる状態のものであれば、認知はスムーズになるということです。