Wiki
自律分散協調系がもたらす創造の原理
Wikiとは、ウェブブラウザ上でHTMLドキュメントを編集することができるWebシステムです。コラボレーションツールやグループウェアであり、プロジェクトマネージャが知るべきツールの一つとして挙げられます。
最初のWikiは、ウォード・カニンガム(Howard G. "Ward" Cunningham)による WikiWikiWeb でホノルル国際空港内を走る Wiki Wiki Shuttle に触発されて 命名したといわれています。その名称は、ハワイ語で「速い」を意味する wikiwiki に由来するもので、ページの作成・更新が迅速なことから名付けられました。
Wikipedia は、このシステムを活用して成功したプロジェクトの代表例です。
代表的なWikiソフトウエア
- DocuWiki:https://www.dokuwiki.org/ GPL 2(FlatFileCMS)
- Grav:https://getgrav.org/ MIT license(FlatFileCMS / MD記法)
- MediaWiki:https://www.mediawiki.org/ GPL
- MoinMoin:https://moinmo.in/ GPL(FlatFileCMS / Python)
- Pico:https://picocms.org/ MIT license(FlatFileCMS)
- PmWiki:https://www.pmwiki.org/ GPL(FlatFileCMS)
- PukiWiki:https://pukiwiki.sourceforge.io/ GPL(FlatFileCMS)
- TiddlyWiki:https://tiddlywiki.com/ BSD License(FlatFileCMS / JS)
- TikiWiki:https://tiki.org/ LGPL 2.1.
- TWiki:https://twiki.org/ GPL
- Wiki.js:https://wiki.js.org/ AGPLv3.(JS)
- Yellow:https://datenstrom.se/yellow/ GPL(FlatFileCMS / MD記法)
Wikiの思想
Wiki Design Principles
WikiWikiWebの創始者、カニンガム(Ward Cunningham)による Wiki のデザイン原理。12項目+3項目+4項目。
- シンプル(Simple)
よりシンプルな記述で文書の構築が実現できること
- 開放(Open)
ページが不完全であったりまとまっていないようであれば、読者は誰でも自分が良いと思うかたちにそのページを編集できること
- 漸進的であること(Incremental)
あるページは他のページに(まだ何も書かれていないページに対しても)言及することができること
- 有機的であること(Organic)
サイトの構造や文章は、編集と変化(進化)に対して寛容であること
- 平易であること(Mundane)
少い平易な記法で、多くの便利なマークアップを可能にすること
- 普遍的であること(Universal)
執筆者は自然と編集者や管理者になれるように、編集や管理の仕組みは執筆のそれと同じようになっていること
- 明白であること(Overt)
HTMLに整形された出力から、それを再現するのに必要な入力が大体分かるようにすること
- 一元的であること(Unified)
ページ名だけで意味が分かるよう(ページ名の解釈に前後の文脈を必要としないよう)、ページ名は階層構造の無いフラットな空間でそれぞれ一意に付けられるべき
- 的確であること(Pricese)
ページ名が重複しないよう、(名詞句で)的確なタイトルをつける。
- 寛容であること(Tolerant)
エラーメッセージよりも、(人が見て間違いを)解釈できる挙動をする方が(例え望み通りの挙動でないとしても)好ましい
- 観察可能であること(Observable)
サイト内の活動を訪問者が観察・調査できること
- 収束すること(Convergent)
同様の記述、関連する記事を探して引用することで、コンテンツが重複しないようにすること。また、重複したものは削除されやすいようにすること
Wikiの作者や実装者が付け加えた原則をいくつかとりあげると・・
- 信用(Trust)
Wikiを活用する上で最も重量なこと・・それは「人を信用すること」、「プロセスを信用すること」、「信用の構築を可能にすること」。全ての人がコンテンツを管理しチェックできるようにすること。多くの読み手は良心を持つことを前提とする(ただし、誠意には限度があることも念頭におくこと)
- 楽しい(Fun)
誰もが貢献できる。そして、誰もそれを強制されないこと
- 共有(Sharing)
情報、知識、経験、アイデア、視点を共有せよ
さらに、コメントを加えると・・
- インタラクション(Interaction)
ゲストとの対話が可能になる
- コラボレーション(Collaboration)
同期的および非同期的に優れたコラボレーションツールが作成できる
- プラットフォーム(Platforms)
特にクロスプラットフォームの実現が重要
- ソーシャルネットワーク(Social Networks)
ソーシャルネットワークがそのコラボレーションをより強化する
http://wiki.c2.com/?WikiDesignPrinciples by Ward Cunningham
C.アレグザンダーの「6つの原理」
カニンガムによるWikiデザインの原理の背景には、C.アレグザンダーの「利用者参加による建築のための6つの原理」、またそのキーワードであるパターン・ランゲージがあると言われます*1。
- 有機的秩序の原理(The principle of organic order)
計画や施工は、全体を個別的な行為から徐々に生み出してゆくようなプロセスによって導かれること
- 参加の原理(The principle of participation)
建設内容や建設方法に関するすべての決定は利用者の手に委ねること
- 斬新的成長の原理(The principle of piecemeal growth)
各予算度に企画される建設は、小規模なプロジェクトに特に重点を置くこと
- パターンの原理(The principle of patterns)
すべての設計と建設は、正式に採択されたパターンと呼ばれる計画原理の集合によって指導されること
- 診断の原理(The principle of diagnosis)
コミュニティ全体の健康状態は、コミュニティの変遷のどの時点でも、どのスペースが生かされていないか、を詳しく説明する定期的な診断に基づいて保護されること
- 調整の原理(The principle of coordination)
最後に、全体における有機的秩序の緩やかな生成は、利用者の推進する個々のプロジェクトの流れに制御を施す財政的処置によって確実なものとされること
C.アレグサンダー, オレゴン大学の実験, 1977
関連リンク
- Howard G. Cunningham
- WikiWikiWeb:http://wiki.c2.com/
APPENDIX
関連ページ