露出(EV:Exposure Value)とは簡単に言えば「光のあたる量」を意味します。「感度」自体も自由に設定できる自動露出のデジタルカメラでは、あまり意識することがないかもしれませんが、化学反応を用いるフィルムでは、フィルム感度に応じて露光量を適正に調整しなければ、きれいな像を得ることはできません。
ここでは「感度」が規定されるフィルム撮影を前提として、適正な露出を実現するための、絞りとシャッタースピードの調整について概説します。
ちなみに、機械式の(あるいは露出計が壊れた)フィルムカメラで撮影を行いたい場合は、スマホの露出計アプリを使うと、以下に述べる EV値の計測と、適正な絞りとシャッタースピードの組み合わせの情報を得ることができます。
EV(Exposure Value)値とは、明るさ(露出)を意味する数値で、撮影環境が明るいほど大きな値になります。具体的には、以下のような値になります。
絞り値 | 状況 | 設定例 |
EV=16 | 快晴時の海・山 | |
EV=15 | 快晴 | ISO400 1/500 f16 |
EV=14 | 晴れ | ISO400 1/250 f16 |
EV=13 | 明るい曇り・雪景色 | ISO400 1/250 f11 |
EV=12 | 曇りの日陰 | |
EV=11 | 雨天 | ISO400 1/250 f5.6 |
EV=10 | TVスタジオ | |
EV=9 | 窓辺・スポット照明 | ISO400 1/60 f5.6 |
EV=8 | 夕暮れ屋外 | ISO400 1/30 f5.6 |
EV=7 | 昼間のオフィス・夜間の室内(蛍光灯) | ISO400 1/30 f4 |
EV=6 | マジックアワー・夜間の室内(電球) | ISO400 1/30 f2.8 |
EV=5 | 夜景(照明あり) | ISO400 1/30 f2 |
適正な露出で撮影するには、この値に応じてフィルムのISO感度を前提に、絞り・シャッタースピードを決めればよい・・ということになります(自動露出のカメラ(AEカメラ)では、これは自動的に設定されます)。
絞りには AV(Aperture Value)値、 シャッタースピードにはTV(Time Value)値、そしてISO感度には ISO値が定義されています(後述)。これらを使って、以下の関係式を満たすように調整します。
EV値 = AV値 + TV値 - ISO値
例えば、ISO感度100のフィルムで、曇りの日陰(EV = 12)の場合・・
EV12 = AV6(=F8)+ TV6(=1/60秒)- 0(ISO 100)
ということで、F8 ・ 1/60 秒 という組み合わせで適正露出となります。
同様に、以下の設定でも可能です。
EV12 = AV7(=F11)+ TV7(=1/125秒)- 2(ISO 400)
以下、それぞれの値の対応表を掲載します。
絞り値 | AV値 |
F1.0 | AV0 |
F1.4 | AV1 |
F2.0 | AV2 |
F2.8 | AV3 |
F4.0 | AV4 |
F5.6 | AV5 |
F8 | AV6 |
F11 | AV7 |
F16 | AV8 |
シャッタースピード | TV値 |
1秒 | TV0 |
1/2秒 | TV1 |
1/4秒 | TV2 |
1/8秒 | TV3 |
1/15秒 | TV4 |
1/30秒 | TV5 |
1/60秒 | TV6 |
1/125秒 | TV7 |
1/250秒 | TV8 |
ISO感度 | ISO値 |
100 | 0 |
200 | 1 |
400 | 2 |
800 | 3 |
1600 | 4 |
3200 | 5 |
例えば、ISO感度 100の場合、「晴の屋外(EV14)」は f 8 、1 / 250 で適正です。適正露光量を保つには、絞りとシャッタースピードの関係を調整します。
光源である太陽と地球の距離を考えれば、「晴天の屋外」は、世界中どこにいても空間を満たす光の量は同じ。EV=14 の環境では、 f 8 、1 / 250で、設定を固定して撮影することができます。自動露出(AE)のフィルムカメラは、カメラをどこに向けるかで、露出設定を変えてしまうので、「逆光の場合は露出補正が必要」といった話になるのですが、基本的に、光の状態が同じであれば、カメラに入る光の量は、被写体の明るい部分は多く、暗い部分は少なく入る・・という単純な話なので、設定は固定で構わない・・ということになります。
Sunny 16 rule という言葉があります。
快晴の屋外で写真を撮るとき、絞りは f 16 、シャッタースピードの分母は ISO感度に一番近いものにすると適正露光が得られる
快晴(EV=15)の条件下では「 f 16 、シャッターは 1/ISO 」と覚えればいいという極めてシンプルなルールです。
ISO100のフィルムでは f 16、1/100(EV15 = AV8 + TV7 + 0) ISO400のフィルムでは f 16、1/400(EV15 = AV8 + TV9 - 2)
私の場合は(といっても趣味のレベルですが)以下のことだけ覚えていました。
晴天の屋外(EV=14)の撮影(ISO 100 のフィルム)では f 8 、1 / 250
カメラのAE(自動露出)に頼らなくでも、これを基準に調整するだけです。
昭和の(趣味レベルの)写真撮影はとてもシンプルでした。
ちなみに、レンズ付きフィルムカメラ(使い捨てカメラとも言う)は、さまざまな光の状態に対応できるよう「曇天(EV=12)を平均」とみなして、絞り・シャッタースピードは固定・・となっています。