言葉・文字・貨幣・インターネット。人類の生存戦略は「モノを情報(複製可能なもの)に変換するとともに、お互いの信用を前提として、それを遠隔・非同期的に共有すること」にあったと言っても過言ではありません*1。
水・空気・情報・・私たちが生き延びるために必要なものは、いずれも排他的な所有には馴染まない共有財産です。インターネットは産業革命以後長く続いた「発信者(生産者)と受信者(消費者)の乖離」を解消し、世界規模での「情報」の共有を可能にしました。SNSによる誹謗中傷などの新たな問題を生んでいることも確かですが、それ以上に、政治・経済の枠組みを超えた社会の変革を可能にする「希望の仕組み」でもあります。
インターネットの活用を前提とした情報共有のための意識改革を推奨します。
サーバーにあるものがマスター、手元のファイルはクローン
データはローカルデバイス(自分の手元)ではなく、サーバーに一元管理して、みんなで共有するのが理想です。
クラウドファーストで考えると、バックアップが自動的にできる(差分記録が残る)など、データを失うリスクが軽減されるとともに利便性も増します。「もし自分のパソコンが壊れたら・・」という不安からも解放されます。
情報伝達は、データの「実体渡し」ではなく、「アドレス渡し」を推奨します。例えば以下のように、データのある場所へと誘導するということです。アドレスは単なる文字列なので、通信負荷なく送受可能です。
・授業の資料一覧です。以下をご覧下さい。 https://www.example.com/data01.html ・ 荷物は北浜305倉庫、B列45番BOX。開錠の暗証番号は2112です。
Pushとは、送信者が情報を強制的に送る(受信者は情報を受動的に受け取る)もので、電話・FAX・メールなどがこれにあたります。一方 Pull は、受信者が必要なときに情報を能動的に受け取りにいくもので、Webサイト、共有フォルダ、掲示板を見に行くなどの行為がこれにあたります。送信者都合による Push配信は情報氾濫を招きます。可能な限り Push から Pull への移行が賢明です。
リアルタイム・双方向が最良・・というわけではありません。自律分散を前提とするインターネットでは、遠隔・非同期が前提です。
インターネットはアナログ回線と違ってパケット送信が前提です。利用者の通信速度にも依存するので、リアルタイム(同期式)双方向のセッションは本質的に得意ではありません。オンデマンド(非同期式)でも視聴できる動画配信とチャットの組み合わせがベストです。
アナログとデジタルの最大の違いは、 デジタル情報が「居場所」を選ばないということです*2。しかし例えば、WORD文書やPDFは「A4タテ」などという情報が含まれている点で紙媒体に拘束されたままだと言えます*3。「モノに拘束されないデータにする」ということを常に意識することが必要です。
ちなみに公的報告書は今だに「紙」が基本で、これがデジタル化の妨げとなっています。
画像処理、図形描画、音楽制作、そして AI関連のソフトウエア開発など、ほぼすべてのことがブラウザ(Chrome, Firefox等)の中だけで完結できるようになりました。ブラウザは、機種・OSに依存しない世界共通のプラットフォームです。
ローカルデバイス(パソコン)にデータを保存するのをやめて、クラウド一元管理を前提とすれば、必要なのはそのアカウント情報だけ・・ということになります。パソコンを管理する煩わしさからも解放されます。
この国では「技術」というものについて、開発者(生産者) と利用者(消費者)という産業革命以後の構図が根強くあって、システム開発を ICTベンダーに丸投げする組織・企業が多く存在します。しかし、業務の ICT 化の名の下に導入される「ガラパゴスシステム」は、その活用に無駄な学習コストがかかるだけでなく、開発がクローズドであるがゆえに、臨機応変な改変もできません。
参考:TheCathedralAndTheBazaar
デジタル技術の特徴は、物質的原材料いらず、オープンなソースコード、豊富な技術情報・・結果、すべての人に DIY の機会が与えられています。消費者意識でベンダーまかせにするのではなく、システムを自らの手で DIY すべく、組織のメンバー全員の意識改革を促すことが大切です。
自らのWebサイトを持つと、その「アドレス渡し」を1回行うだけで、以後の関係構築が完了します。ICTの活用に原材料(お金)は不要です。ITベンダー(専門の生産者)に依存するのではなく、自らその技術(サービス)を利用して Pull アクセスの基盤となる Webサイトを構築することを推奨します。無料のアカウントを持つだけでも、それは実現します。
正しく共有できない情報は、生産効率を著しく下げるだけでなく、場合によっては大きな事故につながります。
Mike Gancarz, 2001, UNIXという考え方
生命の情報(DNA・RNA)から SNS上の投稿まで、あらゆる「情報体」は複製(シェア・拡散)されることを望んでいます。「情報」を私的財産として排他的に所有する感覚は古くからあり、特に近現代は「複製するな!複製するなら金払え」という考え方が横行した時代でしたが、インターネット文化の背景には Small、Share、Open など、前時代とは真逆の思想があって、その基盤を支えるオープンソースの大半が従来の Copyright とは異 なる Copyleft という発想で共同開発され ています。それは「自由な複製と突然変異」 を推進する発想であり、情報共有を基盤とする人間社会の進化(多様化)を持続可能にするものだと考えます。
Wikipedia では「書きかけ項目」という表記をよく目にします。あらゆる情報はアップデートされることを前提に「書きかけ」であっても公開するのが賢明です(情報が無い時は「現在、情報はありません」という情報を出すべきです)。
特に危機的な状況下では、迅速な情報提供が求められます。
「最新の情報が随時更新されている」というのは「状況が常に見えている」ということと同じです。東日本大震災では、防潮堤の近くに住んでいて「海が見えていなかった」人たちが多く逃げ遅れています。
文書というものは、以下のような「要素」に分解・整理することができます。一定のルールで文書を構造化すると、情報の抽出や再利用の効率が良くなります。
文書の標準フォーマットのひとつである HTML は、そうした個々の要素を「タグ」で囲むかたちで記述します。この感覚に慣れるには、Wikiの記法として知られる Markdown を体験するのがよいでしょう。これは世界標準の文書の構造化手法です。プレーンテキストファイル(拡張子 .md)として保存されるもので、ブラウザその他の様々なソフトウエアで表示させることができます。