アナログ(Analog)とは、オリジナルへの「類似」を意味する言葉で、アナログ情報メディアは、情報を「連続的な変化」として何らかの物質的基盤の上に再現します。一方、デジタル(Digital)は、オリジナルを「数値」に置き換えて扱うことを意味する言葉で、デジタル情報メディアは、情報を「離散的な数値」として、物質的基盤に依存しないかたちで扱います。
私たちの世界認識は、興奮と抑制の組合せネットワークによる脳内現象であり、世界認識のフィルターとして機能する言語も離散的な記号です。視覚情報と聴覚情報で再現された仮想現実がデジタルで実現され、脳を仕組みを模したAIがデジタルで実現されたのは、ある意味では当然のことかもしれません。今やデジタルテクノロジーは、この世界に欠かせないものとなり、私たち人類は、それを扱う知識と技術がなければ生活ができない状況になっています。
しかし、切り離された「物質性」や「身体性」ゆえに、私たちの心がデジタルへの違和感を積もらせていることも事実。デジタル全盛の時代にあってもアナログの魅力が絶えることはなく、むしろその意義を改めて問い直すことが、私たちが喪った何かを取り戻すために必須の哲学的課題であると言えます。