Film vs Digital
Photography
2000年代、写真はフィルムからデジタルへと大きく移行しました。デジタルネイティブの皆さんにとっては、フィルムカメラは歴史上の遺物かもしれませんが、現在でもその魅力に取り憑かれる人は少なくありません。
はじめに
はじめに、フィルムカメラの現状を確認しておきましょう。
- 現行製品が少なく、大半は中古でしか入手できない
- デジタルと違って、撮影から鑑賞までのプロセスに時間とお金がかかる
- フィルムの製造・供給量が減り、フィルム価格が高騰
- 銀塩写真は、環境を汚染する物質に依存している
フィルムとデジタルの違い
フィルムカメラはホワイトボックス / デジタルカメラはブラックボックス
- フィルム蓋を開ければ、光がどのようにフィルムに露光するかが見える
- 空シャッターが切れる(動作確認ができる)というのも特徴のひとつ
- フィルムカメラの大半は、ボディを分解して中を見ることができる
- デジタルカメラは利用者が分解できるような構造になっていない。機能の大半は集積回路と組込みソフトウエアによって実現されているので、仕様書でもない限り、中身は完全にブラックボックス。
フィルムカメラは長寿 / デジカメは短命
- フィルムカメラはホワイトボックスなので、情報さえあれば分解・修理が可能です。YouTube動画や、ブログ記事のおかげで、素人でもある程度の修理が可能。シャッターが切れないトラブルも単なる「油切れ」の場合が多く、油をさせば治ります。丁寧に扱っていれば、人の一生より寿命が長い。
- デジタルカメラは、シャッター回数、バッテリーの劣化等、物理的な寿命が短く、プロ用機材でも 10年程度。特に内蔵時計用の電池(あるいはコンデンサ)の寿命がくるとメーカーに修理を依頼するしかない。メーカー対応も発売から5〜10年程度。進化(高性能化・低価格化)が速い(=すぐに陳腐化する)ので、長く使う気にもならない(実際、買い替え理由の大半が「上位品目の購入」)つまり、多くは数年で産業廃棄物になる。
フィルムには選択肢が少ない / デジタルは選択肢が多い
- フィルムは機能が限られることで撮影に専念できる
- デジタルカメラは、記録方式、記録サイズ、ホワイトバランスを含む記録時のフィルタリング、ISO感度、オートフォーカスの方法など、設定項目が多岐にわたるので、撮影に至るまでにいろいろ迷う。また撮影後にすぐ確認できるから「やっぱり違う設定の方がいいかも」などときりがない。
- フィルムとプリントの1:1の関係に対して、デジタルの場合は、出力に関する選択肢も多い。
フィルムは失敗から学ぶ / デジタルは失敗しないから無関心になる
- フィルムカメラには失敗が多い(その場で確認ができないから・・)。しかし、人は失敗から多くを学ぶもの。なぜ失敗したかを考えることで、さまざまな知識を身につけることになります。
- 一方、デジタルカメラは失敗しないので、仕組みに関心が向くことがないようです。関心が向いたとしても、相手がブラックボックスなのでどうしようもない・・というのも、学ぶ意欲が上がらない原因かと・・
フィルムカメラはシャッター音とともに、身体的な振動を感じる
デジタルでも、フォーカルプレーンのようなメカニカルシャッターを使っているものは物理的な音が発生しますが・・
光学ファインダーとLCD
光学ファインダーを使うフィルムカメラで撮られた写真の場合、鑑賞者は写真からの「逆投影」によって撮影者の視点に同一化する。写真を見るという行為は、撮影者と視点・視線を共有することだと言える。
一方、デジタルカメラの場合、撮影者が見ているのは対象そのものではなく、LCDモニターに写し出された像である。出来上がった写真を介して鑑賞者と撮影者とが視線を共有することはない。それは撮影者自身にとっても同様で、「私の視線」が戻ってこないデジタル写真では、自分が撮った写真か否かもあいまいになる。
APPENDIX
デジタルネイティブの人の勘違い
- 古いカメラをあちこち眺めて・・
電源どこですか・・電池どこですか・・
ありません。いりません。機械式のカメラは、フィルムに瞬間的に光をあてる機構さえあればいいので、バネの力(フィルムを手で巻き上げるときにチャージされるバネの力)だけで撮影可能です。電池が必要なのは、露出計を内蔵*1するようになって以後のカメラです。さらに、巻き上げやオートフォーカスにモーターを必要とするようになって以後のものは、さらに大きく高価な電池が必要ですが、巻き上げも、ピント合わせも手動で行う機械式のフィルムカメラには、電源は一切いりません。