LogoMark.png

DesignThinking/Ideate の変更点


#author("2020-09-23T10:27:57+09:00;2020-09-12T14:58:09+09:00","default:inoue.ko","inoue.ko")
#author("2024-03-26T10:35:30+09:00;2020-09-12T14:58:09+09:00","default:inoue.ko","inoue.ko")
*アイデア創出について
[[DesignThinking]]
~
アイデア創出(Ideate)は、定義された目的や方向性を実現するためのアイデアを量産する段階です。この段階では、ブレインストーミングや、アイデア創出技法を活用して、''質よりも量を重視して''考え得るさまざまなアイデアを書き出してみて下さい。
~

'''以下、アイデア創出に関わる一般的な知見、手法について紹介します。'''

~


**アイデア創出の手法

***アイデアが生まれる環境

-''People'':一般にステークホルダー(利害関係者)と呼ばれる「関係者」に一緒に参加してもらい、様々な意見をもらいます。

-''Place'':アイデア創出は、複数の関係者が集まれるミーティングルームなどで行います。テーブルや椅子のセッティング、BGM、スナック・ソフトドリンクの提供など、参加者をリラックスさせる環境づくりが重要です。

-''Time'':アイデア創出には、人が集中できる時間(45分程度)を一区切りとして、適度な休憩や、アイスブレーキングが必要です。また、メンバー間の緊張をほぐす意味で、最初に簡単な自己紹介などをするのが一般的です。

-''Observation'':アイデアはユーザーの観察から生まれます。
[[IDEO(アイディオ)>https://jp.ideo.com/]]が行った地下鉄駅の自動販売機売り上げアップに関するプロジェクトでは、「地下鉄の駅においてユーザーを観察する」ことを重視しました。結果、時間を気にしている客が多いことがわかったため、自動販売機の上に時計を置くことで、その売上をアップさせました。
 その他、ドリンク自販機では、下段の左端に注目が集まる(>そこに主力商品を配置する)、利用者が冷たいドリンクをカバンに入れる(カバンの中が濡れてしまう)のに苦労している(>常温の商品を配置する)。など、利用者の観察から様々なアイデアが生まれています。
~

***ブレーンストーミング
ブレインストーミング(BS法: brainstorming)は、アレックス・F・オズボーンによって考案された会議方式のひとつで、みんなでアイデアを出し合う際に、相互の連鎖反応や発想を誘発する技法です。

みんなが自由な発言の機会を得られるよう、ブレストを行う人数は、5 - 7名程度が望ましく、人数が多い場合は小グループに分けて、それぞれの成果を持ち寄る・・といったケースもあります。


''ブレストには、一般に以下のような原則があります。''

-他者の発言を批判しない
批判はメンバーの発言意欲を減退させます。どんなアイデアも、批判せずに聞くことで、自由に思ったことを言える空気感をつくります。
-判断・結論を出さない
判断や結論は次の段階の話として、個々のアイデアに判断を下すことを慎む
-荒削りな考えを歓迎する
奇抜、斬新、ユニークなアイデアを重視。細かいことにツッコミは入れない
-質より量を重んじる
質を上げるのは次の段階として、とりあえず思いつくアイデアを量産する。
-アイディアを編集して発展させる
複数のアイデアを「編集」することで新たなアイデアを生み出す。
個人のオリジナリティーにこだわることなく、他人の意見をうまく利用することも推奨されます。
~

***KJ法
文化人類学者の川喜田二郎氏がデータをまとめるために考案した手法で、そのアルファベット頭文字をとって KJ法。

ポストイットとマーカー、そしてホワイトボードを使って、以下のように情報を整理していく手法で、おそらくみなさんも総合学習の時間等で経験したことがあるかと思います。
-ポストイット1枚に対して絵や字で1つのアイデアを書く
-たくさんのポストイット=アイデアをホワイトボードに貼る
-全体を眺めながら、それを貼り替えて、グルーピング
-アイデアのカテゴリーや方向性を絞り込んでいく・・

[[KJ法のイメージ>GoogleImage:KJ法]]

いきなりパソコンに向かって項目を箇条書きするよりも、直感的にアイデアの整理ができるので、自宅にある大きな机の上で、付箋紙を使ってやってみることをお勧めします。

参考事例:https://goodpatch.com/blog/ideation-workshop/#i-5
参考Tool:[[Google Jamboard>https://jamboard.google.com/d/1Sey-DsBkPgvLF4hxdqAOY29b_Xl3phaYswJ96CRY7-Y/edit?usp=sharing]]
~
~


**IDEA WORKSHOP
ここで紹介するアイデア創出法は、私たちの思考回路を意図的に破壊することによって起こるヒラメキを利用するものです。
 何が出てくるかはわからないけれど、何か面白いことがありそう・・
という直感に依存するもので、すでに具体的な課題が決まっているものについて応用することは難しいかもしれません。研究に例えると、実利を求める「応用研究」というより、「何かありそう・・」という直感と好奇心で探っていく「基礎研究」に相当します。

~

***アイデアは編集から生まれる

新しいアイデアの大半は、既存の物事の再・編集によって生まれます。

-言葉の順序を入れ替える
--地球の水 → 水の地球 ・・印象が大きく変わる

-異質な言葉の接続を考える
--[[ひらがな を 洗う>YouTube:バカリズム いろいろな順位]] バカリズムの発想法
//-名前を付け替えるだけで物事は生まれ変わる

-異質なもの同士を組み合わせる
--[[Ready Made>GoogleImage:Ready Made Duchamp]] マルセル・デュシャンの発想
--[[投稿サイト bokete>GoogleImage:ボケて 殿堂入り]] 写真と文字のコラボレーション

-異なる環境に置く、[[見立て>Google:見立て 茶の湯]]る
--[[井戸茶碗>GoogleImage:井戸茶碗]] 雑器が国宝になった例
~

***発想法
私たちの思考回路には「常識」のバイアスがかかっているので、例えば、
「ひらがな を ◯◯◯ 」という文における ◯◯◯ の部分には、
 ひらがな を 書く ひらがな を 覚える ひらがな を 漢字に変換する
のような、ふつうにつながる言葉しか思い浮かばないようになっています。

ということは、意識的にこれを排除して、''ありえない接続''を行えば、今までにない発想が生まれる・・ということになります。
 ひらがな が 歩く ひらがな で 滑る ひらがな を 焼く

~

***編集|タイプA 名詞と動詞
//#image(images/idea_worksheet.png,right,30%);
-単語をつなぐ
ひとつの名詞に対して '''ありえない動詞''' を接続してみる。
--ひらがな が 歩く
--ひらがな で 滑る
--ひらがな を 焼く
//-その他、空を持ち上げる、Webを緑化する

-発想を広げる
2つの単語の関係から思いつく 物語・構造物・商品・イベント等を発想。
--ひらがなを主人公にした物語・アニメーション作品をつくる。
--ひらがなの形をした遊具(滑り台、ブランコ・・)をデザインする。
--ひらがなの形をしたパンを商品化する(アルファベットチョコの発想)。
~

***編集|タイプB 名詞と名詞
-単語をつなぐ
2つの名詞を '''様々な「てにをは」''' で接続してみる。
--コップ が ペット
--コップ で ペット
--コップ を ペット

-発想を広げる
2つの単語の関係から思いつく、物語・構造物・商品・イベント等を発想。
--コップ ''が'' ペットのおもちゃになる・・コップ型のガム / かつてない食感?
--コップの中 ''で'' ペットを飼育する ・・蟻を飼う?
--コップ ''を'' ペットの頭に乗せる・・面白動画のヒント?
~
~
#hr
CENTER:'''''では、実際にやってみましょう。'''''
#hr

~


#image(images/idea_worksheet.png,right,30%);
***単語をつなぐ
-まずはシートの上方、左側の単語を決めます。単語は直感的に浮かんだものを。そして一旦決めたら変えないで下さい。
-次に、左側からは通常連想されないコトバを右側に埋めます。
-接続詞をいろいろ変えながら、何かあるかも・・と感じたところで、その接続詞を書き込んで下さい。。

&ref(images/idea_worksheet.pdf);
~

***発想を広げる
-つながったコトバを何度も頭の中で連呼します。
-左側の単語と代用可能な語を想起するなどして、イメージを拡大してみます。
&small(記号学では代用可能な語の体系を範列(Paradigms)といいます);
-こんな商品ができるかも? こんな小説が書けるかも? こんなゲームができるかも? と思いついたら、それをシートの下の枠に記入して下さい。
~

***参考:過去のWorkshopより
-いろはす で 奏でる
--&answer2(イベント企画, ペットボトル製のパーカッションで演奏会);
-画家 を 飼う
--&answer2(商品開発, 部屋に飾れる画家のミニチュアフィギア);
--&answer2(小説・漫画, ある日ひとりの画家が訪ねてきた。・・飼う事になった。);
-傘 が 予約する
--&answer2(商品開発, 雨が降る日に、持ち手が光って利用者に持参を促す);
-消しゴム が しゃべる
--&answer2(商品開発, 消しゴム型のミニチュアロボット);
-ふでばこ で 寝る
--&answer2(商品開発, 筆箱的な収納スペースを持つベッド);
--&answer2(商品開発, 筆箱、財布、スマホ・・日用品の絵柄がプリントされた寝袋);
-本 を 飲む
--&answer2(パッケージデザイン, ペットボトルのラベルに小説をプリント);
-警察官 を 食べる
--&answer2(商品開発, ペロペロチョコ「働く人」シリーズ);
-野菜 に 食べられる
--&answer2(商品開発, 野菜の形をモチーフとした掃除機、ゴミ箱、回収ボックス・・);

//***言語学的ヒント
//「コトバのつながり」は、文法(Syntax)や意味(Semantics)以前に、音韻のレベルでのつながりが契機となっていることが多くあります。ラップミュージックにおけるライミング(韻を踏む)という手法もそうです。ヒトの特徴であるコトバの生成(Genesis) には、「音」が重要な役割を担っています。
~
~

**言葉は存在を喚起する
はじめに事物があってそれに名前がつくのではなく、言葉をつくること、すなわち「名付け」によって切り取られた事物が私たちの世界に立ち現れる。言語学におけるこの知見は、「名」がいかに重要なものであるかを教えてくれます。名付けること、名を知ること、名を変えること、複数の名をもつこと、いずれも私たちの社会生活において、非常に大きな意味を持ちます。

-名付けること = この世にその存在を誕生させること
UFOが世界各所で次々に目撃されるようになったのは、Flying Saucer(空飛ぶ円盤)という言葉が新聞に登場した1947年以後です。Flying Saucer という言葉が、私たちの心の中にその存在を喚起したのです。

-名付けること = 見えないものの存在を喚起すること
「風」や「愛」といった言葉は、歌詞によく用いられるます。目に見えないものの存在が言葉によって喚起される。それらは、読むたびに、聴くたびに、その文脈において意味を変容させる魅力があります。
「机」や「椅子」は、実体として目に見えている点で、「風」や「愛」とは位相が異なりますが、例えば「机」というものも所与の実体ではありません。「箱の上に板をおいたもの」は、そのままでは「箱と板」ですが、誰かが「机です」と名付けてはじめて「机」として認知されるようになる。。「机」という言葉が、その存在を喚起するのです。

-存在を喚起するには「名付ける」という行為を行えばよい
その発想でできたのが、芸術学部の ArtSpace+50 です。ただのコンクリートの壁面に [[Art Space No.14>http://art.kyusan-u.ac.jp/artspace/index.php?ArtSpace%2F14]] という名前をつける。それだけで、新しいギャラリーが誕生するのです。

-名を変えること = 自分の存在を社会的に消滅・新規登録する
文明社会においては、原則名前を勝手に変えることはできませんが、アマゾンのジャングルで1万年変わらない暮らしをしているヤノマミの村では、「今日からオレは◯◯◯だ」というふうに名前を変えることができるそうです。

-別の名を持つこと= もうひとりの私
ハンドルネームを持つこと、別名のアカウントを追加すること、バーチャルなネットワークの世界では、リアル社会における実名とは異なる名前で人と関わることができます。仮面と同様、そこにはまったく別の人格が存在します。

-余談ですが、
Designの語源はラテン語の designare = 印を付ける、区分して描く
また、Designate = 示す、指示する、任命する、''名付ける''、呼ぶ
つまり、Design には、存在を喚起する・・という意味もあるのです。
~

以下、時間があればお読み下さい。
[[コーディング|Coding]] - 世界で最も小さなデザインの方法 -
芸術工学会誌74号 / エッセイ 平成29年5月 pp.32-33

~
~