日本映像学会西部支部|2018.12.22 口頭発表
我々の世界認識は、連続的な視聴覚刺激を
言語化可能な離散的要素に分解・再構成ことで成立しています。
空間を枠で区切ること。時間を区切ってつなぐこと。
本発表では、映像学におけるこの「編集」の概念と
社会学としての「ソーシャルデザイン」の方法を関連づけ、
そこに共通する思考の枠組みについて考察します。
Fig. Draw.io
わかる瞬間(脳内の再編) = 報酬系の刺激(ドーパミン)
シナプス可塑性とは、神経回路が物理的・生理的に、 その性質を変化させる事のできる能力。 ・アポトーシスによるニューロンの減少 ・発芽によるシナプス接合部の増加という物理的な変化 ・長期増強(Long Term Potentiation)による導通の生理的な変化
自然界で音(弾性波)と光(電磁波)が連合することはあまりない。 両者が異質であったからからこそ、光と音に対する受容器、 すなわち目と耳は独立に発生し、進化した。・・中略・・ (視覚と聴覚の)連合がうまく成立するに至ったことが、 言語の成立とほとんど同義だと私は考えている。唯脳論, 養老孟司
本能がこわれてしまった人類は、それまで本能によって保証されていた 自然的現実との密接な関係を失い、幻想の世界に住むようになった。 現実を見失ったのだから、幻想しかもち得ないわけである。 人類の努力は、この幻想を、何とかして見失った現実に近づけることに 傾けられた。幻想の共同化としての擬似現実の創設がこれである。 この擬似現実は一般に文化と呼ばれる。史的唯物論批判|続・ものぐさ精神分析, 岸田 秀
言葉は「ものの名前」ではない一般言語学講義, F.ソシュール
我々は通常、我々を取り巻く世界を、 友好的なものと敵対的なものに分割する思考に馴れている。
文化と両義性 山口昌男
#image(): File not found: "中心と周縁.png" at page "CenterAndPeriphery"
今語っている主体は認めるはずである。 自分は映画館から出るのが好きだということを。・・中略・・ 要するに、彼は明らかに催眠術から覚めつつあるのだ。映画館から出て「第三の意味」, ロラン・バルト
男が振り返った > 何を見た?すなわち、映像は撮影時に切り捨てた「取り返しのつかない時間」によって、間接的に支配されている。
すべての欲望が満たされ続ける(いくらでもやり直しができる) のであれば「時間」の概念は必要ない。 われわれは、満たされなかった欲望を「過去」として引き離すために、 欲望を満たすチャンスを失った時点としての現在との間に 「時間」を構成したのである。時間と空間の起源 「ものぐさ精神分析」, 岸田秀
価値は探して見つかるものではない 価値は「編集」によって生み出される
ひとつ家に 遊女も寝たり 萩と月 / 朝顔に 釣瓶とられて もらい水松尾芭蕉|寛文〜元禄 / 加賀千代女|元禄〜安永
俳句は凝縮された印象派のスケッチである。・・ これらのものはモンタージュ成句である。ショットのリストである。 具象的な二、三の細部の簡単な組み合わせが、 別な ー 心理的な ー 種類のものの完成された描写を生み出すのである・・ 俳句の不完全を完全な芸術にするのは読者だ・・映画の原理と日本文化, S.M.エイゼンシュテイン
自我(Self Image)を安定させる人間関係のデザイン
私とは、他者との関係において成立する Self Image ≡ 幻想 である 自我(Self Image)の安定が、人の幸福感の根底にある 逆にあらゆる精神的な苦痛は、自我(Self Image)の危機に起因する
異質なものを歓待して、内部を更新するような仕組みをつくる
人間の作り出す社会システムはすべて、 同一状態にとどまらないように構造化されている
野生の思考, クロード・レヴィ=ストロース
生命とは動的状態にある流れである。 秩序は守られるために絶え間なく壊されなければならない ( Rudolph Schoenheimer )
生物と無生物のあいだ, 福岡伸一, 2007
総じてコミュニケーションとは「価値」を創出するための営みである街場のメディア論, 内田樹, 2010
情報はひとりではいられない知の編集工学, 松岡正剛
この本(「生きのびるためのデザイン」)は、 特許権と著作権のいまのシステムには基本的な誤りがある、 という見解で書かれている。・・・ 私の考えでは、アイデアはありあまるほどたくさんあり、そして安い。 他人の苦しみで金をもうけようとするのは間違いだろう。生きのびるためのデザイン, V.パパネック
「家」はもともと個人の所有物ではなく、神の住まいである縄文に学ぶ, 上田篤
世界でいちばん小さなデザインの方法は「区分けして名づける」ということ
言い換えれば「情報(に)デザインする」ということ
Designの語源はラテン語の designare = 印を付ける、区分して描く Designate = 示す、指示する、任命する、名付ける、呼ぶ
空間や時間を「枠」で区切って「名」を与える 枠の外へ排除されたものが、名付けられた世界の秩序を下支えしつつ それを動的に更新しつづける原動力になる 価値を生み出すのは、「分ける」ことによって発動する 言語的な「編集」である