Pandas は、データの読込、集計、組み替えなどを行うことができる Pythonプログラミングにおけるデータ解析の定番ライブラリです。.csv、.xlsx 他、多様な形式かつ、大量のデータの読み込みに対応しており、表計算ソフトよりも高速で処理を行うことができます。
Pandas が扱うデータ構造には、Series(1次元)と DataFrame(2次元)がありますが、重要なのは DataFrame で、表構造の組み替え・抽出、統計解析、グラフ化など、様々な手法を理解することで、実践的なデータ解析ができるようになります。
以下、公式のチートシートで全体像を把握できます。
https://pandas.pydata.org/Pandas_Cheat_Sheet.pdf
Python 言語のライブラリとしてのインストールになるので、一般の Python3 の環境であれば、Terminalから以下のコマンドでインストールできます。
$ pip3 install pandas
import する際は、以下のように pd という名称を与えるのが一般的です。
import pandas as pd
Google Colaboratory では Jupyter Notebook で利用できるライブラリーが「すべてインストール済み」という前提なので、ローカル環境での作業のように、必要なライブラリのインストールを行う必要はなく、コードセルに import 文を書くだけで使うことができます。
Pandasが扱うデータ構造には、以下の2つがあります。
Pandas では、以下の2つのラベルでデータを特定します。
Series は Pandas の1次元データ構造で、data と index の2つの要素から構成されます。
以下のように data と index を定義します。
ser = pd.Series( data = [ 60, 80, 70 ] , index=['Alice','Bob','Charlie'] ) ser ----------------- Alice 60 Bob 80 Charlie 70
データ部分のみを定義した場合、index は自動的に 0, 1, 2・・となります。
ser = pd.Series( [ 60, 80, 70 ] ) ser ----------------- 0 60 1 80 2 70
データは、ラベル(index)を使って抽出することができます。
ser['Bob'] ----------------- 80
その他様々な操作が可能ですが、実際には2次元の表構造である DataFrame の活用が中心になりますので、ここでは省略します(以下、公式文書)。
https://pandas.pydata.org/docs/reference/api/pandas.Series.html
The primary pandas data structure. Two-dimensional size-mutable, potentially heterogeneous tabular data structure with labeled axes (rows and columns). Arithmetic operations align on both row and column labels. Can be thought of as a dict-like container for Series objects.
DataFrame とは、Pandasライブラリ扱う「主要なデータ構造」で、以下のような特徴を持つオブジェクトです。
DataFrame は data、index、columns の3つの要素から構成されます。
以下、DataFrame を扱う変数として df を使って事例を紹介します。
df は DataFrame の略として一般によく用いられる変数名です。
一般に、データフレームは CSV や Excel 等のデータを読み込んで生成するものですが(後述)、ここではデータフレームの構造を理解する意味で、直接的なデータの定義方法について紹介します。
pd.DataFrame( data, index, columns, dtype, copy)
import pandas as pd df = pd.DataFrame( [ [ '佐藤', 170, 60 ] , ['田中', 160, 50 ] , [ '鈴木', 165, 58 ] ] ) df
0 1 2 0 佐藤 170 60 1 田中 160 50 2 鈴木 165 58
行ラベル、列ラベル(index と columns ) には、自動的に番号数字が入ります。
import pandas as pd df = pd.DataFrame( data =[ [ '佐藤', 170, 60 ] , ['田中', 160, 50 ] , [ '鈴木', 165, 58 ] ] , index = ['S01', 'S02', 'S03'], columns =[ 'name' , 'height', 'weight'] ) df
name height weight S01 佐藤 170 60 S02 田中 160 50 S03 鈴木 165 58
numpy の2次元配列を使って定義する事例
import pandas as pd import numpy as np df = pd.DataFrame( data = np.array( [ [10, 20, 30, 40], [11, 21, 31, 41], [12, 22, 32, 42] ] ), index = [ 'row_1', 'row_2', 'row_3' ] , columns = [ 'col_1', 'col_2', 'col_3', 'col_4' ] ) df
col_1 col_2 col_3 col_4 row_1 10 20 30 40 row_2 11 21 31 41 row_3 12 22 32 42
0から11までの数値を 3行・4列にあてはめて定義する事例
import pandas as pd import numpy as np df = pd.DataFrame( data = np.arange(12).reshape(3, 4), index = [ 'row_1', 'row_2', 'row_3' ], columns = [ 'col_1', 'col_2', 'col_3', 'col_4' ] ) df
col_1 col_2 col_3 col_4 row_1 0 1 2 3 row_2 4 5 6 7 row_3 8 9 10 11
# iris.csv の読み込み df = pd.read_csv("/path/to/iris.csv")
df = pd.read_excel('/content/drive/My Drive/path/to/sample.xlsx')
df
df.describe( )データ件数、平均、標準偏差、最大・最小等の統計量が一括表示されます。
df.corr(numeric_only=True)数値項目間の相関が、カラム数 x カラム数 のマトリックスで表示されます。
DataFrame.set_option( )
処理の実行後の表示では、行・列数が制限されていて、データ数が多い場合は、中途が・・・と省略表示になります。これを回避するためのメソッド。
pd.set_option( 'display.max_rows', 50 )
DataFrame[ ]、DataFrame.iloc[ ]、DataFrame.loc[ ]
以下、いずれも抽出後の DataFrame を返しますが、元のデータフレームそのものが更新されることはありません(非破壊操作)。
col_1 col_2 col_3 col_4 row_1 10 20 30 40 row_2 11 21 31 41 row_3 12 22 32 42 : : : : :
df[ 'col_1 ' ] または df.col_1
df[ [ 'col_2 ' , 'col_3 ' ] ]
df[ :3 ] # 0, 1, 2 行目が抽出されます
df[ 3:5 ] # 3, 4 行目が抽出されます
df.iloc[ 1 , 1 ]
df.iloc[ : , 5 ]
df.iloc[ : , 5:10]
df.iloc[ 5:10, : ]
df.loc[ 'row_1' , 'col_2' ]
df.loc[ : , 'col_2' ]
df.loc['row_1', [ 'col_1', 'col_2' ] ]
df.loc[ 'row_2' : 'row_10' , 'col_1'] df.loc[ 10 : 19 , 'col_1' ]
DataFrame.query( )
以下、いずれも抽出後の DataFrame を返しますが、元のデータフレームそのものが更新されることはありません(非破壊操作)。
df.query( 'height <= 170' )
df.query( 'A > B' )
df.query( ' name == "鈴木" ' )
df.query( ' 学部 == "芸術" and GPA >= 2.0 ' )
等 号:== 否 定:!= 不等号:< , > , <= , >= 論理積:and , & 論理和:or , |
pd.melt( )
pd.melt( df )
pd.pivot( )
pd.pivot( columns = 'XXX' , values = 'YYY' )
pd.concat( )
pd.concat( [ df1 , df2 ] )
pd.concat( [ df1 , df2 ] , axis = 1 )
DataFrame.sort_values( ) , DataFrame.sort_index( )
# col_2 の降順に並べ替え df.sort_values( 'col_2', ascending=False )
# インデックスの降順に並べ替え(デフォルトは ascending = True ) df.sort_index( ascending = False )
DataFrame.rename( )
rename メソッドの引数 index および columns に、{ 元の値 : 新しい値 } のかたちで(辞書型の定義)で元の値と新しい値を指定します。デフォルトでは変更後の状態を返すだけで、元の DataFrame そのものを破壊・更新するわけではありません。引数 inplace = True にすると、元の DataFrame が変更されます。
df2 = df.rename( index={ 'row_1': 'ONE' } ) # 元の df は破壊されません。 df.rename( index={ 'row_1': 'ONE'} , inplace=True ) # df自体が更新されます。
df2 = df.rename( columns = { 'col_1' : 'A' } )
df2 = df.rename( index = { 'row_1' : 'ONE' } , columns = { 'col_1' : 'A' } )
df2 = df.rename( index = { 1 : 'ONE' } , columns = { 'col_1' : 'A' } )
DataFrame.drop( )
dropメソッドは、デフォルトでは削除後の状態を返すだけで、元のデータフレームそのものを破壊・更新するわけではありません。引数 inplace = True にすると、元の DataFrame が変更されます。
df2 = df.drop( index='row_2' ) #元の df は破壊されません。 df.drop( index='row_2', inplace=True ) #df 自体が更新されます。
df2 = df.drop( index = [ 'row_1' , 'row_3' ] )
df2 = df.drop( columns = 'col_2' )
df2 = df.drop( columns=[ 'col_1' , 'col_3' ] )
df2 = df.drop( index='row_3' , columns='col_2' )
DataFrame.isnull( ) , DataFrame.dropna( ) , DataFrame.fillna( )
実際のデータには、無回答や入力ミスなどで欠損値が発生することがあります。pandas では NaN(Not a Number:非数) と表記され部分が欠損値ですが、これは後の演算等でエラーを発生させる原因となるので、それを含む部分は除去することが必要です(データクレンジング)。
df.isnull( ).sum( )
df = df.dropna( how='any' )※ how ='any' は欠損がひとつでもあれば、その行を削除
DataFrame.value_counts( ) , DataFrame.sum(numeric_only=True ) , DataFrame.mean(numeric_only=True), DataFrame.median(numeric_only=True) , DataFrame.var(numeric_only=True)
df[ '学部' ].value_counts( ) # 全データ中の各学部の人数をカウント
df[ 'col_1' ].sum( ) # col_1列の合計 df[ 'col_1' ].mean( ) # col_1列の平均 df[ 'col_1' ].median( ) # col_1列の中央値 df[ 'col_1' ].var( ) # col_1列の分散
DataFrame.groupby( )
特定の列データの値を基準にグルーピングした上で、グループごとの統計処理を行うことができます。例えば、全学生の成績一覧がある場合に、学部ごとの成績の平均を求める・・といったことが可能です。
df.groupby( '学部' ).sum( numeric_only=True ) df.groupby( '学部' ).mean( numeric_only=True ) df.groupby( '学部' ).var( numeric_only=True )
# 各学部 X 性別ごとの平均 df.groupby( [ '学部' ,'性別' ] ).mean( numeric_only=True )
pandas.crosstab( )
2項目のカテゴリの組み合わせでサンプル数の算出ができます。
第一引数が index(行見出し)、第二引数が columns(列見出し)となる DataFrame が返されます。
pd.crosstab( df[ 'col_1' ] , df[ 'col_2' ] )
pd.crosstab( df[ 'col_1' ] , df[ 'col_2' ] , normalize='index' )
pandas.pivot_table( index = , columns = , values = , aggfunc = )
2項目のカテゴリの組み合わせで、データの統計量(平均、合計、最大、最小、標準偏差など)を確認・分析できます。
pivot_table = pd.pivot_table( df, index='学部', columns='性別' , values='成績' , aggfunc='mean' )学部 x 性別 ごとの成績の平均値が表示されます。
pandas のメソッドを用いたのグラフ描画の方法を紹介します(pandas は matplotlib を用いてグラフを描画しています)。
最低限必要なのは、matplotlib と pandas です。以下典型的な記載例です。
import matplotlib.pyplot as plt import pandas as pd
ヒストグラム(柱状グラフ、度数分布図)は、横軸に階級、縦軸に度数をとった統計グラフで、データの分布状況を可視化するために用いられます。
df.hist( )
df.hist( figsize = ( 9, 6 ) )
df[:50].hist( figsize = ( 9, 6 ) )
ボックスプロット(箱ひげ図)は、データのばらつきを可視化する統計グラフで、箱(box)と、その両側に出たひげ(whisker)で表現されることからその名が付けられています。
一般に以下の五数が要約(five-number summary)されて表示されます。
以下のコードは、対象カラム(XXX)をグループ(AAA)別に表示します。
df.boxplot( column='XXX' , by='AAA' )
散布図(scatter plot)は、縦軸、横軸に2つの量的データ項目を対応させて、各レコードのデータを点でプロットしたものです。項目間の相関の有無が可視化されます。
以下のコードは、x軸とy軸にカラム項目を指定して表示します。
df.plot.scatter( x='XXX', y='YYY' )
これらのグラフは項目間の推移や比較を見るために使います。数万件もある全レコードを表示しても視覚的に読み取ることはできないので、グラフにしたい内容によって、事前に「データの平均値を出す」、「クロス集計する」といった処理を行った後、それを新たなデータフレームとしてグラフの表示に利用するのが一般的です(以下、棒グラフの事例です)。
# 性別ごとに国語・英語・数学の平均値を算出 df_mean = df.groupby( 'Gender' , as_index=False ).mean( ) df_mean
Gender | Japanese | English | Mathematics | |
0 | F | 62.350000 | 58.475000 | 39.800000 |
1 | M | 56.420455 | 41.142045 | 39.539773 |
生成された df_mean を使うと、簡単に積み重ね棒グラフができます。
df_mean.plot.bar( stacked=True )
stacked=True は、積み重ねを有効にする・・という意味です。
df.plot( kind='line' )
df.plot(kind='scatter', x='item01', y='item02', alpha=0.5, figsize=(9, 6) )
California Housing(カリフォルニアの住宅価格)のデータを読む事例です。
# サンプルデータセットを取得 from sklearn.datasets import fetch_california_housing data_housing = fetch_california_housing()
# 読み込んだデータを Pandas の DataFrame型に変換 train_x = pd.DataFrame(data_housing.data, columns=data_housing.feature_names) # 目的変数をDataFrameへ追加 train_y = pd.Series(data_housing.target, name="target") # 先頭の5件を表示 train_x.head()