#author("2025-04-03T11:15:42+09:00;2025-04-03T11:14:55+09:00","default:inoue.ko","inoue.ko") #author("2025-04-03T11:16:49+09:00;2025-04-03T11:15:42+09:00","default:inoue.ko","inoue.ko") *芸術学部 教育ガイダンス 2025 //平成30年4月3日|15201教室 ~ //#qrcode(,center,50%) ~ **はじめに 芸術学部新入生の皆様、ご入学おめでとうございます。 ~ ***芸術学部の5学科 Artist の感性によって問題を見出し、Designer の提案力で未来を創造する。 芸術学部の英語名は、''Faculty of Art & Design'' です。 ~ -[[芸術表現学科 AA>https://www.kyusan-u.ac.jp/kyugei/department/art.html]] &small(Fine Arts and Media Sciences); --美術専攻 &small(Painting and Sculpture Cource); --メディア芸術専攻 &small(Media Arts and Sciences Cource); -[[写真・映像メディア学科 AP>https://www.kyusan-u.ac.jp/kyugei/department/photo.html]] &small(Photography and Imaging Arts-); --写真専攻 &small(Photography Cource); --映像メディア専攻 &small(Imaging Arts Cource); -[[ビジュアルデザイン学科 AD>https://www.kyusan-u.ac.jp/kyugei/department/visual.html]] &small(Visual Design); --グラフィックデザイン専攻] &small(Graphic Design Cource); --イラストレーションデザイン専攻 &small(Illustration and Design Cource); -[[生活環境デザイン学科 AE>https://www.kyusan-u.ac.jp/kyugei/department/living.html]] &small(Living Environment Design); --生産造形専攻 &small(Product and Craft Design Course); --空間演出デザイン専攻 &small(Display,Interior and Fashion Design Cource); -[[ソーシャルデザイン学科 AS>https://www.kyusan-u.ac.jp/kyugei/department/social.html]] &small(Social Design 40名); --情報デザイン専攻 &small(Information Design Cource); --企画デザイン専攻 &small(Project Design Course); //~ //-施設一覧 https://www.kyusan-u.ac.jp/kyugei/equipment/ //-教職員一覧 https://www.kyusan-u.ac.jp/kyugei/teachers/ ~ ~ **大学での学び ***学問の場 大学とは学問の場であり、その究極の関心ごとは「人間とは何か」を問うことです。あらゆる分野の学問がその研究対象を通して迫ろうとしているのは、人間( Homo Sapiens)であると言っても過言ではありません。 ~ ***研究の場 大学は教育機関であると同時に研究機関です。学生と教員との関係は「教える人・教わる人」ではなく「共同研究者」であるという認識の方が健全です。「勉める・強いられる」ではなく、''Study'' をする場であると考えて下さい。 ~ ***Question & Answer から Problem & Solution へ Question と Problem。ともに日本語では「問題」です。問題を解くことに専念してきた多くの日本人は「問題は与えられるものである」という感覚に慣れてしまって「問題」そのものを疑うことをしないようですが、大学生が精力を注ぐべきは、検索で答えが出るような Question ではありません。人と社会が抱える Problem を見出し、これに対する Solution を提案することです。 ~ ***社会の常識(大人の話)を疑ってください // 奴隷の最大の特徴は自分自身が奴隷であることに気づいていないこと 20世紀は工業の時代でした。現代社会はその時代に適応した人間たちがマジョリティ(多数派)を形成しているといっても過言ではありません。大人たちの大半は、産業革命以後の社会の原理に洗脳されています。現代社会の「常識」は彼らの思考の産物と言えますが、それは現在の状況をふまえると、大きくズレていると言わざるを得ません。 '''人材 成長 目標 評価 消費者 ・・・''' これらは一見すると何の問題もない言葉のように見えます。しかし、人間は社会のための「材料」でしょうか。「成長」はどこに向かっているのでしょうか。「評価」はすべての人を幸せにしますか・・。 また、私たちは「消費者」ですか。この言葉の存在は、人間から「自分で作る楽しみ」を奪っています。現代人は何かを消費するために駆り立てられている・・そのことに気づいている人は少数です。 また、私たちは「消費者」ですか。人を生産者と消費者に分断して、日常生活を消費者として過ごす・・。この言葉の存在は、人間から「自分で作る楽しみ」を奪っています。現代人は何かを消費するために駆り立てられている・・そのことに気づいている人は少数です。 言葉というものは「存在を喚起する」と同時に我々を洗脳します((UFOが目撃されるようになったのは「空飛ぶ円盤(flying saucer)」という言葉が新聞に大きく掲載された1947年以後のこと。事物が先にあってそれに名前がついたのではなく、誰かが放った「言葉」が世界を切り分けて、存在を喚起するのです。風、時間、「0」、神・・ 目に見えないものの存在を喚起したのは言葉です。風はその言葉の存在によって、我々の住む世界に吹いているのです))。大人の話を鵜呑みにすることなく、普段何気なく使っている言葉を疑うことからはじめてみてください。 自分の視点を1段階上に引き上げて、自分が置かれた場所を俯瞰で見る(相対化する)。このとき人は1段階「成熟」します。成長は量的な変化でいつか衰える運命にありますが、成熟は質的な変化で、それは生涯有効なものとなります。 //-''「常識」に関する知的3段階'' //--常識を知らないレベル ← おこちゃま //--常識を受け入れ、常識どおりに振舞うレベル ← 大人の大多数 //--常識を疑い、それを相対化する視点で全体を俯瞰する ← これです! ~ ***付記 明治以降の学校教科書で「油断大敵」「勤勉」を教える教材として使われてきたイソップ童話の「ウサギとカメ」の話に疑問を呈します。 ある日ウサギとカメが山の麓までかけっこの勝負をすることになった。 予想通りウサギはどんどん先へ行き、とうとうカメが見えなくなった。 ウサギは少しカメを待とうと余裕綽々で居眠りを始めた。 その間にカメは着実に進み、ウサギが目を覚ましたとき見たものは、 山の麓のゴールで大喜びをするカメの姿であった。 -&answer2( "疑問1", "なぜ、かけっこ(競争)をする必要があるのか。"); -&answer2( "疑問2", "なぜ、ゴールが山の麓(陸上)なのか。"); -&answer2( "提 案", "ウサギは山の幸を、カメは海の幸を、ともにそれぞれの特性を活かして助け合いましょう。多様性を前提としたバンド(絆社会)とはそういうものです。"); ~ ~ **芸術学部の学び ***芸術は人類の起源とともに 文字、数式、そして科学技術・・そのいずれも、芸術に比べるとその歴史は浅く、現代社会の常識も大半は産業革命以後のもの。たかだか250年の歴史です。 一方、芸術は Homo Sapiens の誕生とともにあります。言葉、音楽、絵画、建築・・。芸術は、人類が文明に手を染める以前から我々と共にあって、社会の成熟に寄与してきました。その意味では「人間とは何か」を考える重要なヒントが「芸術」にあるといっても過言ではありません。 //九州産業大学では「学問の頂点は芸術である」((九州産業大学創設者、中村治四郎の言葉です。))と位置付けて、みなさんの未来に期待しています。 ~ ***AI+ロボットの時代だからこそ・・ 自動運転、翻訳、医療診断、記事の執筆、作曲、作画・・。知識や技術を学んで対応するだけであれば、人間よりもAI・ロボットの方が優秀・・というのが現在の状況です。人間とAIの違いはどこにあるのか、それを見極めて「棲み分ける」という発想が必要です。 //この国では現在「芸術」が学校教育の隅の方に追いやられています。でもこれからは違います。AIには感情や身体感覚にもとづく創造行為はできません。芸術学部を選択したみなさんは正解です。 ~ ***学士(芸術) 大学では「卒業式」とは言わず「学位授与式」と言います。皆さんは芸術学部に所属しますので、卒業時には「学士(芸術)」が与えられます。全国に 800校近くある大学の中で、芸術学部は希少な存在です。つまり「学士(芸術)」も貴重な存在となります。良い意味でのプライドを持ってがんばって下さい。 ~ ~ //**APPENDIX //***自ら学ぶ //大学には「[[学習指導要領>http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/youryou/main4_a2.htm]]」や「[[標準(検定)教科書>http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/tosho/003/gijiroku/08052214/001.htm]]」のようなものはありません。教科書片手に「教えてもらう」という発想で授業に臨むと失敗します。講義の中で紹介されるのは、みなさんが自ら考えるための「きっかけ」に過ぎません。講義系の試験問題では「◯◯について述べなさい」といった一行問題も多く存在します。自ら学ぶという姿勢を身につけないと対応できません。 //「教科書の内容を覚えてテストで良い点数を取る」というようなお勉強ではなく、自らの純粋な好奇心を学びのきっかけにして、疑問に思うこと、面白いと感じることを追求して下さい。 //「授業についていけないかも」という心配をする人がいますが、安心してください。ついていく必要はありません。大学の期末試験では、「あなたの考えを自由に書けばいい(ただし論理的に)」、「ノート・テキスト持ち込み可」、「試験しません」・・など様々です。 // 大人がつれていくところはろくなところではありません。あなたが先頭を切って歩けばいいんです。 //~ //***ことのついでに //-「教育」を単純にいいものだとは思わないでください。教育には負の側面もあります。 //-「大人の話」を鵜呑みにしないようにしてください。 //よって私の言うことも話半分程度、疑いの目をもって聞いて下さい。 //-私の言う「アホ」や「変人」は褒め言葉です。真剣におバカなことができる人が、新しいことを生み出すと思っています。 //~ //***芸術の語源は リベラル・アート //日本語の「藝術」という言葉はリベラル・アートの訳語(西周)です。リベラル・アーツという表現の原義は「人を自由にする学問」。その起源は「自由七科:文法学、修辞学、論理学、代数学、幾何学、天文学、音楽」にあります。 //~ //***多くの「概念モデル」を知ること //物事を考えるには「概念モデル」が役に立ちます。「中心と周縁」、「構造と機能」、「人、社会、自然」など、全体をいくつかに区分けるキーワードを図式的に理解することで、様々な現象を説明することが可能になります。概念モデルを知ると、世界はぐっとクリアに見えるようになります。 //-例えば、「科学的思考と芸術的思考」 //--科学的思考:俯瞰的視点に立ち、地図を眺めるように全体の構造を捉える //--芸術的思考:地に足をつけ、自らの視点で風景を捉える //~ //***人には理系も文系もありません //人を理系と文系に分ける教育は、産業革命が契機で、特に生産活動に従事する技術者(理系)教育が、各国の国策として採用されたことにその起源があります。しかし本来、人の個性は理系・文系といった枠で括れるものではありません。自分を枠で括らない・・芸術学部ではそんなスタンスが大切です。 //~ //***学問の頂点は芸術である //21世紀、世界はネットでつながり、すでに地球上のすべての人類が情報を共有できる状況にあります。国家は「国益」のために争っていますが、私たちは音楽や映像を通して国境を越え、自由につながっています。よくいわれるように「芸術」は国境を越えて、すべての人たちに「知的な豊かさ」をもたらすのです。リベラルアーツの言葉どおり「Arts」は本来「学問」の概念なのです。大学で学ぶことは「Arts」を学ぶこと。「学問の頂点は芸術である」((九州産業大学創設者、中村治四郎の言葉です。))という言葉は、それを語っているのだと思っています。 //~ //***存在は「言葉」によって喚起される //-事物が先にあってそれに名前がついたのではなく、誰かが放った「言葉」が世界を切り分けて、存在を喚起したのです。 //-風、時間、「0」、神・・ 目に見えないものの存在を喚起したのは言葉です。 //-風はその言葉の存在によって、我々の住む世界に吹いている //~ //***価値を生み出すのは「関係」である //-「紙幣」自体はただの紙。そこに価値を生み出すのは「社会」です。 //-「綺麗な赤」があるのではない。色の価値は他の色との関係で決まります。 //-「優れた人」がいるのではない。人の価値を決めるのは「人間関係」です。 //~ //***価値は所与のものではない //人の価値も、モノ・コトの価値も、既存のものとしてそこに備わっているものではありません。すべては、その諸関係を再・編集することによって、新たな価値が産みだされるのです。 //-「優れた人」がいるのではなく、他者との関係において人の価値は生じる((「いじめ」の問題も同じです。いじめる人、いじめられる人がいるのではなく、人間社会の基本原理として「いじめの構造(秩序を更新しつづけるためのしくみ)」があって、そこにいじめる人、いじめられる人が役付けされるのです。構造が先にあって後に役割が与えられると考えれば、昨日までいじめていた人が、明日はいじめられる人になる・・という現象も何ら不思議はありません。)) //~ ~ ~