福岡市城内地区活性化プロジェクト|付記
舞鶴公園へのアクセスに関する現状の問題
Project/FC2023|「予備知識のない訪問者」の視点から
はじめに
学生の現地調査において見出された「外国人には評判が良い」、「近隣住民の散歩コースとして人気」という知見から、ひとつの疑問が生まれました。それは「Web等での事前調査や、近隣住民としての知識がなければ、目的地に辿り着けないのではないか」という疑問です。
そこで、舞鶴公園に関する予備知識がないという想定で、「舞鶴公園」を目指してみました。本報告は、その際に見出された問題をまとめたものです。
舞鶴公園の空間構造がわからない問題
予備知識のない人には、舞鶴公園の全体像が正しく把握できません。
公園が複数の要素から成ることがわからない
行政区画としての舞鶴公園は、三の丸広場、福岡城址、鴻臚館広場を含む広大な空間だが、視覚的に「舞鶴公園」と認知されるのは福岡城址のみ(第一駐車場入口にある「舞鶴公園」の表記は「福岡城址」のみをそれと思わせる)。
舞鶴公園線による視覚的な分断
車道(舞鶴公園線)によって東西が大きく分断されているため、三の丸広場は大濠公園の一部と認識されてしまう(現地訪問者聞き取り)。
明治通りから公園が正しく把握できない
- 明治通りの道路標識(舞鶴公園線への誘導)が「福岡城趾・舞鶴公園」となっているため、並列の関係に見える(包含関係がわからない)。
- 明治通りから舞鶴公園線へ入るタイミングで、交差点付近に城郭のようなものが見えるため、それが福岡城の本丸趾と誤認される一方、舞鶴公園第一駐車場に最も近い場所に福岡城址があり、認知的な混乱が生じる。
- 明治通りと公園広場が濠で隔てられているため、一旦左折し損なうと大濠公園の外を一周する必要があり、はじめての訪問者にはアプローチが難しい。
三の丸広場・三の丸スクエアが見えない問題
三の丸広場・三の丸スクエアは、周囲を木々で囲まれていることと、当該空間への間口が少なく、また狭い・・ということから、地図で俯瞰的に確認できたとしても、たどり着けない可能性が大きいと感じました。実際に今回独自で現地調査にあたった学生2チームとも、現地を一周したにも関わらず、三の丸スクエアの存在には気付くことができませんでした。
舞鶴公園線における視界の問題
- 車道の西側が木々で覆われているため、広場の存在が見えない
- 歩行者の重要な入口となる横断歩道上の信号機の表記が「平和台球場前」となっていて、視界が開けた平和台球場側へ視線が向くため、奥まったところにある三の丸への入口には気づかない
舞鶴公園線上の駐車場の問題
- 第一駐車場の存在が走行中に視認できない(気づいた時には通過済み)
- 第一駐車場が東側にあるため「舞鶴公園=福岡城趾のみ」というイメージ
- 第一・第二駐車場よりも第三駐車場の方が圧倒的に広く・近い(想像と逆)
- 北から南へ走行した場合、第三駐車場の存在に気づかない
- 南から北へ走行した場合も、第三駐車場の入口からは、中に広大な駐車場があることが見えない(手前の視界を広げてはいるようですが、気づいたときには通過しています)。
- 「Timesパーキング」の表記は小規模の民間駐車場をイメージさせるので、公的かつ広いというイメージが湧かない
- 南から北へ通過後に再度アプローチしようと思っても、左回りで大濠公園の外を一周して戻る必要があり、土地勘のない人はここで諦める可能性大
大濠公園からの視界の問題
- 公園内東側の歩道から、三の丸広場へアプローチする経路があるが、東側に木々が多いこと、道が直線的に昇っていること、西側の広大な濠の空間に視線が向くなどの理由で、東側奥に広い空間があることに想像が及ばない
- 大濠公園駐車場からすぐ、大濠公園の遊具広場から三の丸広場へ移動できる通路があるが、柵の存在、木々が生い茂る状況、三の丸広場が数メートル上に位置することから、東側奥に広い空間があることがわからない
三の丸広場から三の丸スクエアへのアプローチの問題
- 三の丸スクエアは、三の丸広場から樹木越しに見ると、廃校あるいは廃団地としか見えない。
- 三の丸スクエアの入り口看板自体が樹木に隠れて見えにくい
- 入り口に柵のようなものがあって、それが開いていたとしても「関係者以外立ち入り禁止」のような印象を与えている。また、入り口から奥のサインが見えにくいため、単に廃校のようなものがあるようにしか見えない。
その他
福岡城址について
- 残念ながら空間にメリハリがなく、公園としての魅力がない
- 立体的かつ視界が遮られている場所が多く、治安上の不安を感じる
- 石垣を登る階段の色 > 使われている茶色と石垣とのコントラストがない
> 現代美術(立体造形)を展示する「彫刻の森」のような演出は可能か?
木製パレットのような簡単に廃棄できる「土台」で、その都度作品プレートを貼り替えるだけのサスティナブルな場づくりで、若いアーティストの発表の場を提供することはできないか
>「スケートボード禁止」とあるが、需要があるのであれば、積極的に坂を活用して遊べる空間にする・・という逆転の発想もあるのでは?
三の丸広場について
- 上述のように、意識して探さない限り「発見されない」可能性が大きい
> 遠方からでもその存在が見えるように(そこに何かがあると感じられるように)、高い塔のようなものを設置するとよいのではないか
鴻臚館について
筆者の現地調査においては、結果的に当日辿り着くことができませんでした
- 道路標識に「鴻臚館」と記載されていても、読めない可能性大
- 日本人にとって、ローマ字表記を走行中に読み取るのは困難
- 音にして読めなければ、検索もできない
- 読めたとしても、漢字変換では「航路間」等が候補となって探しにくい
> 例えば「鴻臚博物館」などと表記されていれば、結果は異なったと思われる
以上、舞鶴公園、特に三の丸広場と三の丸スクエアについては、人が来ない最大の理由は「見えない」「気づかない」という点にあると思われます。また、名称と実体が合わないこと(大濠公園には文字通り大きな濠が存在)、公園の空間構造が直感的なイメージと異なるなど、認知的な不協和がある種の不快感を伴うことから、(特に自家用車を利用するケースでは)リピータの獲得も難しくしてしまうのではないかと推察されます。
道路標識、駐車場案内などの交通情報環境の再調整とともに、存在を「見える化」するための高さのある構造物の設置、動線上のサインによる誘導方法の再構築が最優先課題ではないかと思います(Googleマップ等は、電力消費、通信料の関係で、現地に着いた時点でOFFにすることが多く(学生談)、以後は、公園内のサインのみが頼りになるため、その設計は重要な課題であると思います)。
担当教員 井上(貢)