ツリー構造とセミラティス構造
建築家クリストファー・アレグザンダーが指摘した創造の原則
都市計画 / 組織 / データベース / Web
ツリー構造とセミラティス構造。いずれも集合(Set)の構成の仕方に対する呼名ですが、このセミラティスは、都市計画から情報のデザインにいたるまで、人間の創造行為に関わる重要な概念です。
- 都市に例えると
- ツリー:人工的に計画された都市
- セミラティス:自然にできた都市
- 組織に例えると
- ツリー:官僚・警察組織・軍隊・従来型の教育機関
- セミラティス:BAND(結束・絆)、IT企業、マトリックス型経営システム
- 図書の管理に例えると
- ツリー:図書館の配架
- セミラティス:Amazon の検索
- データに例えると
- ツリー:エクセルの表など(全体を印刷して視覚的に整理できる)
- セミラティス:要素単位にタグ付けされたデータベース(全体を視覚的に図解するのは無理。視覚化可能な表はクエリーで生成する)
- インフラに例えると
- ツリー:水道網、送電網(従来型)
- セミラティス:インターネット、スマートグリッド
- Webサイトに例えると
- ツリー:サイトマップに整理可能な静的Webサイト
- セミラティス:Wiki, Blog(カテゴリやタグで検索するデータベース)
- G.ドゥルーズの言葉に対応させると
- ツリー:アルブル (木) > 永遠に同一的
- セミラティス:リゾーム (根茎) > 生成する異質性
- エリック・レイモンドの言葉に対応させると
- ツリー:伽藍(大聖堂) > プロプライエタリ
- セミラティス:バザール(市場)> オープンソース
都市はツリーではない
多くのデザイナーが都市をツリーとして考えるのはなぜだろうか (その理由は)思考法の習慣、おそらく人間の頭の働きそのものの 落し穴にかかっているのが原因だ。 ツリーは視覚的に頭に描きやすく扱いやすいが、 セミラティスは描きにくく扱いにくい。 人間が直感的(視覚的)に把握できる能力には限界がある。 (デザインの仕事の多くがツリー構造になってしまうのは) 複雑な問題をできるだけ簡単にしなければ理解できないという、 人間の思考能力に原因がある。 ツリーと比較してセミラティスは複雑な織物の構造である。 それは命あるもの、即ち偉大な絵画、交響曲の構造である。 セミラティス構造は重複性、不確定性、多様性などの性質をもち、 ツリー構造のように、アーティキュレイト、カテゴライズされていないが、 それは秩序を備えていて、ツリー構造と比較しても、 混乱していることは決してない・・・
出典:形の合成に関するノート / 都市はツリーではない Christopher Alexander
PDFで全文公開されています。
部所型組織からプロジェクト型組織へ
- 従来型の人事組織はツリー状の「組織図」で描くのが普通ですが、プロジェクト型組織は、セミラティスとなるため「組織図」には描けません(無理に描くとぐちゃぐちゃになります)。
- プロジェクト型組織には、データベースシステムが必須です。例えば、以下のようなデータベース(テーブル)があれば、「プロジェクトIDで抽出してプロジェクトメンバーを捉える」といった組織管理が簡単にできます。
社員ID 社員名 プロジェクトID 役職 プロジェクトID 役職 01001 鎌田敏夫 T023 P W501 S 01002 北川悦吏子 S101 S S203 P 02001 坂元裕二 T023 S V203 D 02002 野島伸司 S101 P T023 D 02003 山田太一 K302 S S101 D - 要するに、部所という器の中に人を入れるのではなく、人それぞれにプロジェクトIDをタグ付けするという、逆の発想が必要になります。
- セミラティス型の組織管理を実現するには、データベース活用の常態化が前提です(紙に視覚的に印刷して管理する方法では無理です)。
- IT系企業は全員がデータベースの利活用に慣れているので、プロジェクト型の組織管理方式を採用しています。従来型組織の企業に比べた場合、業務効率には大きな差が生じています。
関連キーワード
- 伽藍とバザール Eric Steven Raymond
- スケールフリーネットワーク Albert-László Barabási / Réka Alber
- 正規分布とべき分布
- ツリーとリゾーム Gilles Deleuze / Pierre-Félix Guattari