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Project/FC2023/Appendix の変更点


#author("2023-07-04T11:23:50+09:00;2023-06-28T12:30:10+09:00","default:inoue.ko","inoue.ko")
#author("2023-07-04T17:54:14+09:00;2023-06-28T12:30:10+09:00","default:inoue.ko","inoue.ko")
***福岡市城内地区活性化プロジェクト|付記
*舞鶴公園へのアクセスに関する現状の問題
[[Project/FC2023]]|「予備知識のない訪問者」の視点から
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**はじめに
学生の現地調査において見出された「外国人には評判が良い」、「近隣住民の散歩コースとして人気」という知見から、ひとつの疑問が生まれました。それは「Web等での事前調査や、近隣住民としての''予備知識がなければ、目的地に辿り着けないのではないか''」という疑問です。

そこで「舞鶴公園に関する予備知識を持たない」前提で、車で「舞鶴公園」を目指してみました。本報告はその際に見出された問題をまとめたものです。
&small(車での来訪者は少数かもしれませんが、車窓からどう見えるかが次の行動につながるとすれば、その問題の解消も必要であると考えます。);

なお、ナビには GoogleMap を利用し、目的地を「舞鶴公園」としましたが、現地付近に到着後は、運転席から視認される標識・案内板等(ナビを見るより安全)を頼りに移動する結果となりました。
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**舞鶴公園の全体像がわからない問題
#image(俯瞰図.png,right,30%);
舞鶴公園は、園内にアプローチできる入口が少ないだけでなく、敷地が広すぎて全体像が正しく把握できません。また「中心」をイメージさせるシンボルも無いため、記憶も整理されにくいと感じました。
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***行政上の区画とイメージとのズレ
-舞鶴公園は、三の丸広場、平和台陸上競技場、福岡城址、鴻臚館広場などを含む広大な空間であるが、視覚的に「舞鶴公園」と認知されるのは福岡城址のみ
#clear

#image(舞鶴公園.jpg,right,30%);
-第一駐車場入口の「舞鶴公園」の表記は「福岡城址」のみをそれと思わせる(平和台陸上競技場にいる人に「舞鶴公園はどこですか」と尋ねると、城址を指差す人が多数。「ここ自体が舞鶴公園の一部です」と正しく回答する人は少数)

-今ココがどこであるかが正しく認識できていなければ、サイン誘導が正しく機能しないばかりか、むしろ混乱を招く可能性がある
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***舞鶴公園線による物理的な分断
-舞鶴公園線(車道)によって東西が大きく分断されているため、ここが大濠公園と舞鶴公園の境界であるとの印象を与える

-三の丸広場は大濠公園の一部と認識されている(現地訪問者聞き取り)
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***明治通りから公園が正しく把握できない
#image(明治通り.jpg,right,30%);
-明治通りの道路標識(舞鶴公園線への誘導)が「福岡城趾・舞鶴公園」となっているため、並列の関係に見える(包含関係がわからない)
-明治通りから舞鶴公園線へ入るタイミングで、交差点付近に城郭のようなものが見えるため、それが福岡城の本丸趾と誤認される一方、舞鶴公園第一駐車場に最も近い場所に福岡城址があり、認知的な混乱が生じる
-明治通りと公園広場が濠で隔てられているため、一旦左折し損なうと大濠公園の外を一周する必要があり、車での来訪者にはアプローチが難しい

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**三の丸広場・三の丸スクエアが見えない問題
三の丸広場・三の丸スクエアは、周囲を木々で囲まれていることと、当該空間への間口が少なく、また狭い・・ということから、地図で俯瞰的に確認できたとしても、たどり着けない可能性が大きいと感じました。''実際に今回独自で現地調査にあたった学生2チームとも、現地を一周したにも関わらず、三の丸スクエアの存在には気付くことができませんでした。''
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***舞鶴公園線における視界の問題
-車道の西側が木々で覆われているため、広場の存在が見えない
#image(平和台競技場前.jpg,right,30%);
-歩行者の重要な入口となる横断歩道上の信号機の表記が「平和台競技場前」となっていて、視界が開けた平和台球場側へ視線が向くため、奥まったところにある三の丸への入口には気づかない
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***舞鶴公園線上の駐車場の問題
-第1・第2駐車場よりも第3駐車場の方が圧倒的に広く・近い(想像と逆)

#image(第1駐車場.jpg,right,30%);
-第1駐車場は、北から、南から、いずれの場合も、その存在が走行中に視認できない(気づいた時には通過済み)
//-第1駐車場が東側にあるため「舞鶴公園=福岡城趾のみ」というイメージ
#clear

#image(第3駐車場2.jpg,right,30%);
-第3駐車場は、北から南へ走行した場合には存在に気づかない。また、南から北へ走行した場合も、第3駐車場に広大なスペースがあることが見えず、気づいたときには通過。再度アプローチしようと思っても、左回りで大濠公園の外を一周して戻る必要があり、土地勘のない人はここで諦める可能性大
#clear

#image(第3駐車場1.jpg,right,30%);
-第3駐車場の「Timesパーキング」は小規模民間駐車場をイメージさせるので、公的かつ広いというイメージが湧かない
-掲示板の情報量が多く、走行中の確認は無理
-「24th」と「営業時間 7:00 - 21:00」に矛盾

> こちらを「第1駐車場」に改名するとともに、「◯◯◯台駐車可能」といった表記があるとよいのでは
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***大濠公園からの視界の問題
#image(大濠公園1.jpg,right,30%);
-大濠公園駐車場からすぐ、大濠公園の遊具広場から三の丸広場へ移動できる通路があるが、柵の存在、木々が生い茂る状況、三の丸広場が数メートル上に位置することから、東側奥に広い空間があることがわからない
#clear

#image(大濠公園2.jpg,right,30%);
-公園内東側の歩道から、三の丸広場へアプローチする経路があるが、東側に木々が多いこと、道が直線的に昇っていること、西側の広大な濠の空間に視線が向くなどの理由で、東側奥に広い空間があることに想像が及ばない
#clear

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***三の丸広場から三の丸スクエアへのアプローチの問題
#image(三の丸スクエア2.jpg,right,30%);
-三の丸広場から樹木越しに見ると、三の丸スクエアは、廃校あるいは古い集合住宅にようにしか見えない。現在は BBQ広場に隠れる形で、以前よりもその存在が隠れてしまっている。
#clear

#image(三の丸スクエア1.jpg,right,30%);
-三の丸スクエアの入り口看板自体が樹木に隠れて見えにくい
-入り口に柵のようなものがあって、それが開いていたとしても奥の様子が見えにくいため「関係者以外立ち入り禁止」のような印象を与えている。
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**その他
***福岡城址について

#image(手すりの色.jpg,right,30%);
-残念ながら空間にメリハリがなく、公園としての魅力がない
-石垣とそれに敷設された茶色の階段とのコントラストが低く視覚的に映えない
-立体的かつ視界が遮られている場所が多く、治安上の不安を感じる
#clear

#image(スケボー禁止.jpg,right,30%);
-「スケボー禁止」とありますが、「遊べる場」の存在は賑わいを生む契機となります。積極的に坂を活用して遊べるエリアをつくる・・という逆転の発想もあるのでは?
#clear

> 人が集まる場所には、一般に神域・洞穴・異質な建造物など「異界(非日常空間)への入口」のようなものがあります。非日常という意味では、現代美術(立体造形)を展示する「彫刻の森」のような演出も可能かもしれません。 
//&small(木製パレットのような廃棄が簡単な土台で、その都度作品プレートを貼り替えるだけのサスティナブルな展示空間とし、若いアーティストの発表の場を提供することはできないか);
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***三の丸広場について
-上述のように、意識して探さない限り「発見されない」可能性が大きい

> 遠方からでもその存在が見えるように(そこに何かがあると感じられるように)、高い塔のようなものを設置するとよいのではないかと思います。
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***鴻臚館について
筆者の現地調査(車で移動)においては、辿り着くことができませんでした。

#image(鴻臚館入口.jpg,right,30%);
-入口信号の地名表記が「平和台」となっている
--「鴻臚館」と記載されていたとしても、読めない可能性大
//--日本人にとって、ローマ字表記を走行中に読み取るのは困難
//--音にして読めなければ、検索もできない
--読めたとしても、漢字変換では「航路間」等が候補となって探しにくい
--例えば「広場」や「展示館」の表記がセットであれば発見しやすいかも

-明治通りからは最奥にあるので視認できず、福岡城址からの展望においても、球場や木々に阻まれて、存在が見えない
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***福岡城・舞鶴という名称について
「福岡城」「舞鶴」という字面に対して来訪者が持つイメージ(天守閣がある・鶴の飛来地)と、実態(城跡・天守閣の姿に由来)との間にズレがあります。
&small(一方、大濠公園の場合は文字通り大きな濠が存在して、イメージ通りです。);

公園の「名称」は「対象の存在を喚起する」という重要な役割を担っています。SNSを含む様々な媒体上で誤認にもとづく名称が飛び交った場合、多くの来訪者に不快感を伴う混乱をもたらすでしょう。エリア全域のリニューアル計画の際は、まず、来訪者が公園の全体像と各エリアの名称を違和感なく認識できるように、その名称を見直すことも必要かもしれません。

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以上、道路標識、駐車場案内などの交通情報環境の再調整とともに、特に三の丸エリアについては、存在を「見える化」するための高さのある構造物の設置、動線上のサインによる誘導方法の再構築も重要な課題ではないかと思います。

最近はスマホで場所が確認できるので、案内等は不要のようにも思えますが、学生の話では、Googleマップ等のナビシステムは、電力消費、通信料の関係で、現地に着いた時点でOFFにすることが多く、以後は、公園内のサインと「それが視界に入ること」が重要な手がかりになるとのことです。
最近はスマホで場所が確認できるので、案内板等は不要のようにも思えますが、学生の話では、Googleマップ等のナビシステムは、電力消費、通信料の関係で、現地に着いた時点でOFFにすることが多く、以後は、公園内のサインと「それが視界に入ること」が重要な手がかりになるとのことです。

半日をかけて、車と徒歩で現地を視察しましたが、遠方からの来訪者にとってはアクセスが不便であるという印象は否めません。ターゲットをより広いエリアに設定するのであれば、公共交通機関・車道の利便性向上、公園内の自由度の向上(マイノリティを排除しない配慮)、また、サイン環境やフリーWiFi等の情報環境など、インフラの整備が重要な課題であると感じました。
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RIGHT:担当教員 井上(貢)
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